第154回「日米関税交渉決着」織り込み難しく市場不安定

日米関税交渉決着」で日経平均株価は年初来高値を更新する動きとなりました。しかし内容に不安視される部分も散見され、株・為替ほか金融マーケットの織り込みも難しい状態。為替が上下に振れるなど不安定な推移が予想されます

 

日米関税交渉決着」日経平均は年初来高値

 

米現地7月22日(日本時間23日午前)、「日米関税交渉決着」の報が伝えられました。相互関税については当初35%との数字もふっかけられていた水準や、交渉テーブルで示された25%より低い15%に落ち着いています。

 

交渉にあたった赤沢経済再生相が示していた10%までには引き下げられなかったものの、日本製自動車の輸入関税も15%に落ち着く格好となり、分野別関税の一角として重要な位置づけにある自動車関税が相互関税と同じ水準に揃えられたことも大きなポイントといえます。

 

トランプ米大統領は相互関税に関する交渉と、自動車ほか鉄鋼、医薬品、半導体など分野別の関税についての交渉は別物として捉える姿勢でした。しかし交渉の途上で米国側が示していた水準より低めに相互関税を抑え込めたことと合わせ、状況を配慮して個別に交渉・設定しようとしていた自動車関税も水準を揃えるように同じタイミングでまとめた日本を評価する声もあったようです。

 

相互関税・自動車関税の交渉がまとまり不透明感が1つ晴れたことや、「日米関税交渉決着」を花道にするような格好で石破首相が退陣へ動くとして新政権誕生以降の期待感が高まったことから、日経平均株価は3営業日ぶりの大幅反発。23日昼過ぎ時点で41000円台と4桁の上昇で年初来高値を更新しています(図表1)。 

 

 

円相場は上下動、楽観を織り込みにくい面も

 

一方で円相場の反応は複雑でした。「日米関税交渉決着」が伝わった当初は前日安値146.31円を割り込む146.20円へ下振れました。交渉決着による不透明感の払しょくで日銀が利上げへ動きやすくなったことが意識されたようです。


 

しかし石破首相の退陣関連報道が流れて株高が強まると、ドル円も相まって147円台へ反発。石破政権後の首相有力候補の高市氏によるリフレ的な政策が日銀の利上げを滞らせるとの見方も一因となったようです。

 

ただ、「日米関税交渉決着」内容に関しても、関税率が自動車関税も含めて15%に落ち着いたとの評価もある一方で、赤沢経済再生相が4000億ドル程度にとどめる交渉も行っていた対米投資枠が5500億ドルとなり、利益の90%を米国が受け取るとの条件が付けられたことや、自動車・トラックほか、米や特定農産物の貿易開放の条件も飲み込ませられたことへの懸念も強い状況です。

 

石破首相が一部報道の通り退陣へすんなりと向かうのかもまだ不透明であり、視界がすっきり晴れたとは言いにくい部分が散見されます。株・為替ほか金融マーケットが安易に楽観を織り込みにくい面があり、強弱の材料を反映しつつ荒っぽく振れる相場展開が続きやすいとみます。

為替情報部 アナリスト

関口 宗己

1987年商品取引会社に入社、市場業務を担当。1996年、シカゴにて商品投資顧問(CTA)のライセンスを取得。 市況サービス担当を経て、1999年より外国為替証拠金取引に携わり、為替ブローキングやIMM(国際通貨先物)市場での取引を経験した。 その後、外国為替証拠金取引会社で市況サービスを担当した後、2006年2月にマネーアンドマネー(現・DZHフィナンシャルリサーチ)記者となる。日本テクニカルアナリスト協会検定会員(CTMA2)。日本ファイナンシャルプランナー協会AFP。 その他、社会科教員免許、特許管理士、ボイラー技師、宅地建物取引主任試験合格証などを所持。趣味では2級小型船舶免許、オープンウォーター・スキューバダイビング免許を取得している。

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