2025年の南アフリカランド円(ZAR/JPY)の為替相場について、今回はチャートとファンダメンタルズの両面から詳しく解説します。今後の相場動向に影響する要因や注目イベントを整理。2024年末から2025年にかけての動きや、今後の上昇・下落のシナリオについても紹介します。
2025年現在のランド円の相場 4月の急落後は買い戻し、上昇基調を維持
2025年4月には一時7.26円まで急落したランド円ですが、そこを底に買い戻しが強まり、7月には8.40円台まで回復。それまでの明確な下落トレンドは、いったん終了したとみられ、現在は上昇基調へ転換した可能性が出てきています。
2024年11月の高値を起点とした下落トレンドは、2025年初頭まで続いていましたが、4月を境に流れが変わりつつあります。
【ランド円 見通し】今後の注目材料は?関税問題と金利政策がカギ
最大の懸念材料:米国による対南ア関税(8月1日発動予定)
南アフリカにとって、米国は世界第3位の輸出相手国。その米国が8月1日から南アからの輸入品に30%の追加関税を課す予定となっており、南ア経済への悪影響が警戒されています。交渉による回避は難しいとの見方が多く、ランド円にとってはリスク要因となりそうです。
SARB(南ア中銀)の政策も注目ポイント
南アフリカのインフレ率はSARBの目標レンジ(3-6%)の下限を下回る状況が継続。2024年からの利下げ(8.25%→7.25%)後も追加金融緩和観測が根強い中、7月31日のSARB金融政策決定会合は大きな焦点となります。
一方で、南アの実質金利は依然高水準にあり、高金利通貨としての魅力は残っており、円との金利差を背景にランド円買いの動きも見られています。
【チャート分析】ランド円の上昇トレンドは本物か?週足・月足で検証
週足チャート分析:8.97円の突破が次のカギ
週足では、2020年4月の安値を起点とする上昇トレンドライン(チャート上の黄色実線)が4月に割り込まれたものの、その後は緩やかな新たな上昇トレンド(チャート上の黄色点線)に切り替わっています。
・DMIでは+DI>-DI → 上昇トレンド継続を示唆。
・ただし、ADXが低下中 → 上昇の勢いにはやや不安あり。
ここで重要なのが、昨年7月の高値8.97円(チャート上の赤丸部分)の突破可否。2024年11月の上昇時もこの水準を上抜けられずに失速しており、今回も同様に跳ね返されれば再び調整局面入りのリスクがあります。
月足チャート分析:一目均衡表で「三役好転」、長期では上昇地合いか
月足では、2023年以降の下落時と同様に、今年の下押し局面でも「雲」の下限がサポートとして機能。現時点では以下の3つの条件がそろい、
・転換線>基準線
・遅行スパン>価格線
・価格線>雲
つまり、「三役好転」が成立しており、月足ベースでは上昇トレンド継続のサインと捉えられます。
今後の取引材料・変動要因をチェック 次回SARBの動きは市場でも意見割れる
最後に今後1カ月間の重要イベントも確認しておきます。注目は日本・南アフリカ両国の金融政策。日銀の早期利上げ観測は後退していますが、南アフリカ準備銀行(SARB、中央銀行)の金融緩和観測は前述したように根強く残っています。もっとも、今月の金融政策決定委員会(MPC)については市場でも追加利下げか据え置きかで意見が割れており、本日発表される6月南ア消費者物価指数(CPI)などで新たなヒントが得られるか注意しておく必要があるでしょう。
また、米相互関税の猶予期限が近づくなか、南ア・日本と米国の交渉の行方にも注目です。日本に関しては先日の参院選で与党が過半数割れとなり、今後は政局の不透明感が高まる可能性もあります。前週は与党の弱体化によって今後は拡張的な財政政策へ傾くとの思惑から円売りが進んだ場面もあり、円相場の行方にも注意しておきたいところです。
今後1カ月の重要イベント
7月23日 南ア 6月消費者物価指数(CPI)
7月31日 南ア 南アフリカ準備銀行(SARB)、金融政策決定委員会
7月30-31日 日本 日銀、金融政策決定会合
8月1日 米国 相互関税の上乗せ部分の猶予期限
8月20日 南ア 7月CPI
8月22日 日本 7月全国CPI
まとめ:ランド円は「楽観と警戒の分かれ目」
2025年夏時点において、「ランド円」は上昇トレンドの継続に期待を持てる状況ですが、8.97円の高値更新が成否の分かれ目となりそうです。関税問題や金利政策といった外部要因の動向次第で大きく流れが変わる可能性もあるため、リスク管理をしっかりと行うことが重要です。
引き続き、ランド円のチャートと経済指標に注目しながら、柔軟に対応していく姿勢が求められます。