解説!つみたてNISAとiDeCo

【焦らず豊かになる】新NISAは急いで満額投資しなくて良い4つの理由

2024年から始まった新しいNISA制度。生涯で1,800万円もの投資が非課税になるという、魅力的な制度ですよね。


インターネットやSNSでは「5年で満額達成するのが最適解!」「一日でも早く一円でも多く投資すべき!」といった情報が溢れており、自分も「早く始めないといけない」と焦ってしまう方も多いのではないでしょうか。


確かに、株式市場が長期的に右肩上がりで成長することを前提とすれば、なるべく早く大きな金額を投資する方が、複利の効果を最大限に活かせる可能性が高いです。

しかし、「誰もが焦って満額投資を目指す必要はない」ということも、ぜひ知っておいていただきたい大切なポイントです。場合によっては無理な満額投資が、あなたの生活や人生設計にとってマイナスに働いてしまうかもしれません。


この記事では、なぜ新NISAは焦って満額投資をしなくても良いのか、その理由を4つの視点から解説していきます。周りの声に惑わされず、ご自身に合ったペースで賢くNISAと付き合っていくためのヒントを見つけてみてください。


【理由①】満額投資できる人は少数派

まず知っておきたいのは、新NISAの非課税枠1,800万円を最速の5年(年間360万円)で埋められる人は、日本全体で見ればごく一部の少数派であるという現実です。

日本証券業協会が出している「新 NISA 開始1年後の利用動向に関する調査結果(速報版)」の公表について」を参考にします。

2024 年に新 NISA で金融商品を購入した人のうち、つみたて投資枠と成長投資枠を満額購入している人は、全体の15~16%ほどの割合です。また、平均購入額を調べると、以下の結果が出ています。


・つみたて投資枠の平均購入金額: 47.3 万円

・成長投資枠の平均購入金額:103.3 万円


こちらのアンケートでは収入が高いほど投資額が大きい傾向にありましたが、無理に満額まで投資している人は少数派だとわかりました。

SNSなどを見ていると、高額な投資をしている人の投稿が目立つため「入金額を多くしないといけない」と感じてしまうかもしれません。しかし、発信力のある人に比較的裕福な方が多いという「発信者バイアス」がかかっている可能性が高いのです。


実際のところ、毎月のNISA積立額の平均は5~6万円程度という調査結果もあり、多くの人は自身の収入や資産の範囲内で無理なく投資を行っています。

周りの声に焦りを感じる必要はありません。大多数の人にとっての1,800万円という枠は生涯をかけてゆっくり活用していくための制度なのです。



【理由②】今を犠牲にしすぎるリスク

毎月の生活費を過度に切り詰めて投資額を増やすのは、現在の豊かさを犠牲にする行為とも言えます。

もちろん無駄な支出を減らすことは大切ですが、友人との食事や旅行、新しい趣味への挑戦といった、お金を使うことで得られる経験や人間関係は、人生を彩る上で欠かせない要素です。一度過ぎた時間は、後からお金で買い戻すことはできません。

老後の安心はもちろん大切ですが、それと同じくらい今を楽しみ、充実させることも重要です。未来と現在のバランスを考え、今しかできない経験にお金を使うことも、立派な幸せへの投資と言えるでしょう。


【理由③】自己投資の機会を逃してしまう

特に20代や30代といった若い世代にとって、金融商品への投資以上にリターンが高い可能性があるのが、自分自身への投資です。

例えば、資格取得のためのスクールに通ったり、専門知識を深めるために書籍を購入したり、あるいはキャリアアップのために転職活動をしたり…。今挙げた自己投資は目先の支出とはなりますが、将来的に稼ぐ力を大きく向上させ、生涯にわたって得られる収入を増やす可能性があります。


収入が増えれば、将来のNISAへの入金額を増やすこともできますし、より豊かな生活を送ることも可能になります。金融投資に資金を振り分けすぎるあまり、こうした自分自身の成長機会を逃してしまうのは、非常にもったいないことです。

企業の成長に期待する金融投資だけでなく、自分自身の価値を高めることにも、しっかりとお金を振り分けていく視点が大切です。


【理由④】リスクを取りすぎてしまう危険性

限られた収入や資産の中から焦って多くの資金を投資に回すと、資産全体に占める株式などのリスク資産の割合が高まります。

それは、リターンが期待できる反面、市場が下落した際の資産の目減りも大きくなるということを意味します。とくに、近年の米国株市場は歴史的に見て割高な水準にあるとの指摘もあり、今後の市場環境がこれまでと同じように右肩上がりで続くとは限りません。


もし大きな下落相場が来たときに生活費まで切り詰めて投資していたら、一番売ってはいけないタイミングで売却してしまう狼狽売りにつながりかねません。

資産運用を成功させるためには、自分がどの程度のリスクなら心穏やかに受け入れられるのかを把握し、その範囲内で投資を行うことが不可欠です。焦って満額を目指すことは、リスク許容度を超えた投資につながりやすいという危険性をはらんでいます。



まとめ:自分のペースでの投資が豊かさへの近道

新NISAの非課税枠1,800万円は、非常に魅力的で豊かな老後を築くための有効な制度になります。

しかし、5年で満額投資といった最速パターンは、あくまで資金に十分な余裕がある人向けの戦略の一つに過ぎません。

1,800万円という数字は達成すべきノルマではなく、私たちが生涯をかけて活用できる権利です。NISAは焦って使う制度ではなく、時間を味方につける制度です。自分のペースで、今と未来の豊かさのバランスをとっていきましょう


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独立系ファイナンシャルプランナー

藤崎 竜也

「独立系ファイナンシャルプランナーとして執筆業を中心に活動中。2019年から教育資金や老後資金を蓄えるために投資を始める。実体験をもとに、専門用語をわかりやすく解説するのが得意。2級ファイナンシャル・プランニング技能士資格を取得し、現在は金融ジャンル(資産運用・投資・不動産・保険)をメインに執筆している。

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