井村ファンド 8月の月次レポートから組み入れ銘柄を予想

運用会社のfundnote(東京都港区)は著名個人投資家の井村俊哉氏が投資助言を行う公募投資信託「匠(たくみ)のファンド kaihou(かいほう)」が、8月分月次レポートを公開しました。


「匠のファンド kaihou」は、市場では正式な名称とは別に「井村ファンド」とも呼ばれており、非常に注目度の高い投資信託の一つです。


8月は日経平均株価が1654円(4.0%)高となるなど、非常に地合いが堅調でした。AI関連に注目が集まり、指数の上昇を牽引したのが目立ちました。


堅調な地合いのなかで、井村ファンドのパフォーマンスは基準価額が12877円。前月比で890円(7.4%)高となりました。設定来では28.8%の上昇です。


日経平均株価の上昇率以上に大幅に基準価額が上昇したことになりますので、さすがのパフォーマンスだったといえるでしょう。



組み入れ上位10銘柄


組み入れ上位10銘柄については、7月末から変更がありました。月次レポートに掲載されている井村氏のメッセージでは「アルファスコアが高く、より大きなIRRが期待できる銘柄に入れ替える方針のもと、株価が上昇した卸売業株を売却し、地銀株と決算で下落した金属製品株の買い増しに加え、複数の新規銘柄を組入れました」としています。


そこで気になるのが、どんな銘柄を組み入れたかです。ここから先は筆者の完全なる個人的意見であることを前提に、新規組み入れ銘柄の予想をしてみたいと思います。


大量保有報告により、保有が明らかになっているものは川田テクノロジーズ<3443.T>、大末建設<1814.T>、豊和工業<6203.T>です。それ以外から推測できるものを考えてみましょう。


まず第4位。こちらは業種が情報通信で、組み入れ比率は12.5%。投資概要のコメントは「IRをマーケティングと捉える。株式市場を味方に付け、あたりまえではない飛躍的成長を」となっています。


筆者が予想するのはジャストシステム<4686.T>です。同社の時価総額は3000億円以上ありますから、12.5%の組み入れでも大量保有報告などは出ません。8月中旬に発表した決算も好調だったことから出来高を伴って上昇しており、このタイミングで組み入れたとしても違和感はありません。


そしてなにより、ジャストシステムは企業理念に『次の「あたりまえ」をつくる』を掲げています。投資概要のコメントにある「あたりまえではない飛躍的成長を」と重なる感じがしませんか。ある意味では言葉遊びでもありますが、8月の上昇と合わせて、いかにも組み入れていそうな銘柄だなと注目しています。


もう一つ、第9位についても予想してみたいと思います。こちらサービス業で組み入れ比率は3.7%。投資概要のコメントは「巨額かつ低利のCMSは特定株主への利益供与の疑義。親子上場は利益相反の温床に」ということで大きなヒントとして親子上場関連であることがわかります。


正直に言うと、これだけでは筆者自身はわからなかったのですが、月次レポートが公開された翌営業日の9月9日に市場で大幅に上昇していた銘柄がありました。それがKNT-CTホールディングス<9726.T>です。こちらの企業は近鉄グループの一角を占める旅行会社で、親子上場銘柄という条件に当てはまります。


なおかつ時価総額は400億円程度。3.7%の組み入れは十分に可能ですし、8月に大幅に上昇していることから一定の資金が入っていたことも間違いありません。ということで、有力な候補であると多くの投資家が反応したことで9月9日の急騰につながったのでしょう。


KNT-CTホールディングスのように大量保有報告が出なくとも、組み入れ銘柄を予想して売買する人だけで大きな値動きが観測されるほど、井村ファンドの影響力が増しているとも言えますね。好調なパフォーマンスもあり、ますます人気化しそうです。



日本株情報部 アナリスト

斎藤 裕昭

経済誌、株式情報誌の記者を経て2019年に入社。 幅広い企業への取材経験をもとに、個別株を中心としたニュース配信を担当。

斎藤 裕昭の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております