なぜサンリオ株は売られるのか 低迷する2つの理由

サンリオ<8136.T>の株価が足もとで低調です。今年8月に発表された26年3月期1Q決算では、好調な業績が好感され、上場来高値8685.0円を付けるまで買われましたが、11月下旬時点では高値からおよそ4割安となる5200円台まで調整しています。2025年1月の年初来安値4937.0円まで、もう少しというところにまで迫っており、株主にとっては気が気でない状況が続いていることでしょう。


株価が軟調に推移している理由は複数あると考えますが、1つは11月に発表した26年3月期2Q決算が市場の期待に届かなかったことでしょう。2Q業績も好調ではあったものの、1Qと比べると減速感のある数値だったこと。加えて、国内事業は大阪万博による押し上げ効果を含んだうえでの内容だったため、特需があっても市場の期待に届かなかったとの見方が強くなり、一層売り材料視される面があったように思います。


サンリオ日足チャート


2つ目には高市首相発言に端を発する台湾問題の影響です。中国当局は日本への渡航を自粛するよう呼びかけるなど、インバウンド需要への影響が懸念されており、関連銘柄として同社も売られる場面がみられます。ただし同社の業績を見る限り、単純にインバウンドの影響だけでなく中国で展開しているライセンス事業への影響が懸念されているという見方もできると考えています。


同社の売上高構成比をみると、26年3月期上期累計時点の売上高は877億円でした。このうち国内が676億円に対し、アジアは223億円にすぎません。圧倒的に国内のほうが大きく、一見すると影響はそこまで大きくないように見えます。しかし、同社の独自指標である貢献利益(海外個社の営業損益に本社へのロイヤリティ支払い額を加算して算出)で見た場合、国内の66億円に対し、アジアは68億円と、この数値が逆転します。


わかりやすさを重視して言い換えると、海外でのライセンス料が国内の売り上げ分として計上されているイメージです。こうして見ると、稼ぎ頭である中国での懸念材料は、同社にとって大きなネガティブ材料であることが、より理解できます。


会社側は足もとの株価を適正な水準とは考えていないとして、11月20日に従来の予定になかった自社株買いを実施すると発表しました。会社側の強いメッセージでもあり、翌21日は株価も上昇する場面がありましたが、持続的な上昇にはつながっているとは言い切れません。サンリオといえば今年の人気銘柄の代表格でもあっただけに、ここまで調整するとは思っていなかったのが正直な感想です。


一方で、11月27日には、インターネット上に仮想現実(VR)のテーマパーク「Virtual Sanrio Puroland(バーチャル・サンリオ・ピューロランド)」を新設すると発表。同日の株価が大幅に上昇する場面も見られました。


サンリオではこれまでもVRイベント「Sanrio Virtual Festival(サンリオ・バーチャル・フェスティバル)」を期間限定で過去4回開催してきました。その際には海外からも多くのアクセスがあったとのことで、同社の強みや魅力そのものが消えてしまったわけではありません。先行きに対する不透明感があるのは否めませんが、IP銘柄の雄としてまだまだ見せ場を作ってくれることを期待したいです。


日本株情報部 アナリスト

斎藤 裕昭

経済誌、株式情報誌の記者を経て2019年に入社。 幅広い企業への取材経験をもとに、個別株を中心としたニュース配信を担当。

斎藤 裕昭の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております