株式市場で「フィジカルAI」が非常に注目されるテーマとなってきています。フィジカルAIとは簡単に言うと、ロボットにAIを搭載し、物理的にさまざまな事象をAIで自動化させようとする取り組みを表すものです。
これまでもFA(ファクトリーオートメーション)と呼ばれるように、工場のラインなどをはじめ、さまざまな工程で作業を支援してくれるロボットはたくさんありました。ですが、それは基本的にプログラムされた範囲のなかでのこと。繰り返し同じ作業を行う場合には効果を発揮しましたが、ケースごとに異なるような作業を行うことは難しかったのです。
しかし、ここ最近でこの課題の解決につながりそうな一つのブレークスルーがありました。そう生成AIの誕生です。OpenAIがChatGPTを生み出してから約2年。その間に、生成AIの性能は飛躍的に向上しています。進化したAIにより、新しい環境や未知のタスクにも適切に対応できるよう学習させることで、AIの利活用をデジタル空間から現実世界へと広げていく取り組みがフィジカルAIというわけです。
株式市場では、あまりにも早すぎる生成AIの進化と、それを可能にしている企業の大規模な設備投資に対し、懸念を示す声も上がっています。関連銘柄についても目先ピーク感が強まっている一方で、このフィジカルAIが代わりに存在感を増しています
今年10月にはソフトバンクグループ<9984.T>がオートメーションのグローバルテクノロジーリーダーであるABB社のロボティクス事業を約8187億円で買収すると発表。
また、ファナック<6954.T>は12月に、米エヌビディアと協業し、産業用ロボットのフィジカルAI実装を推進すると発表しており、ほかにも多くの日系企業がフィジカルAIに注力する姿勢を示しています。
市場では、前述したファナックや安川電機<6506.T>など、すでにロボット事業を手がけている企業の株価が上昇する局面が足もとで目立っていますが、個人的に注目しているのはセンサー類に関する技術を持っている企業です。
ファナック日足チャート

安川電機日足チャート

フィジカルAIには3つの要素が必要だといわれています。1つ目は身体性で、現実世界で動き回るための物理的な実体が必要ということです。つまりロボットのことですね。2つ目の制御とは、「〇〇をする」という指示に対して、どんな行動が必要か計画を立て、実際に実行する能力です。これがAIにあたります。
では3つ目はなんでしょうか。もうおわかりかと思いますがそれはセンサー類が役割を担うことになる知覚です。カメラやLIDARなどにより現実世界のデータを取得し、それをAIが理解できる情報に変換する必要があります。
デジタルだけでなく現実で物理的にAIを活用して、さまざまな課題を解決しようという取り組みですから、AIと、そしてそれを組み込むロボットに加え、視覚、聴覚、触覚などのかわりとなるセンサー類は非常に重要な役割を担うわけです。
また、フィジカルAIでよくイメージされるのは、ヒト型のロボットにAIを組み込んだかたちだと思われますが、広義には完全な自動運転に対応した自動車もフィジカルAIの範疇だと思いますし、インフラ点検などで活用されているドローンなどもそうででしょう。
私たちの身近なところにも、そして普段は意識していないけれど重要な場面でも、今後フィジカルAIが活躍するケースはどんどん増えていくでしょう。センサーはそのためにも必須の要素だと考えています。FAセンサー大手のキーエンス<6861.T>や、イメージセンサー大手のソニーグループ<6758.T>、そのほかにもオムロン<6645.T>など、日本にはたくさんのセンサー関連企業が存在します。これらの企業が脚光を浴びる局面が来ると期待しています。


