日本経済新聞は、日本取引所グループ(JPX)<8697.T>が、2025年中にも生成AI(人工知能)を使った投資家向けの検索サービスを始めるもようだと報じました。
グループのJPX総研では、生成AIプロバイダであるBridgewise社の技術を活用し、東証上場会社に関する情報を多言語で発信する無料のサービスサイト「JPX Market Explorer」のPoCを実施しています。これらの取り組みの発展型として、より投資家に利便性の高いサービスを提供しようとするもののようです。
具体的なサービスの活用としては、AIに「生成AIで恩恵を受ける半導体企業を教えてほしい」などと質問すると、該当する企業の資料を一覧で示すなどの利用を想定しているようです。
東京証券取引所の適時開示情報閲覧サービス「TDnet」に掲載される上場企業約4000社の決算短信をはじめ、中期経営計画などの開示資料を生成AIで解析することでこうしたサービスが可能になるということで、技術の進歩には驚かされるばかりです。
「TDnet」には1日に少なくとも100件以上、決算シーズンなどの多い時には1000件以上の開示があることも珍しくはありません。企業が発信する情報をしっかり確認するのは投資家として必要なこととはいえ、それだけ多いと手間がかかりますし、時間的な制約もあります。
上述した生成AIによる検索サービスでは、すべてを生成AIが回答してくれるわけではなく、あくまで該当する資料を提示するのがメインということで、資料そのものを読み込むのは投資家が自ら行う必要があるようですが、あらかじめ資料を精査して自分の欲しいものだけを抜き出してくれるならずいぶんと助かることでしょう。
報道によれば、将来的には有料化し、収益源の一つに育てたい考えであるとのことです。JPX総研では、これまでも取引所のグループ会社としての強みを生かし、売買情報などを仕分けし、投資家の役に立つかたちで分析したデータとして提供することで収益を上げてきました。
前述したJPX総研の「JPX Market Explorer」も、今年7月にリニューアルされ、現時点でも売上や利益、ROEなどの主要財務指標を、過去の推移とともに確認できたり、時価総額やROEなど、任意の指標で上場会社を絞り込むことができるスクリーニング機能を新たに搭載するなど、使い勝手が向上する取り組みを進めています。
適時開示もそこにあるだけでは大量データに過ぎませんが、生成AIにより活用しやすいかたちで提供することで投資家の利便性も向上することになります。投資家目線では、これまではたくさんの情報に埋もれていたアイデアの種が発見されやすくなることで投資機会の創出につながるでしょう。半面、独自のノウハウで情報を分析していた投資家にとっては、競争相手が増えることでそれまでの手法が使いにくくなる可能性もあるかもしれません。
これから市場で生き残っていくためには、いかに生成AIをうまく活用するかが重要となってくるのでしょう。そのタイミングはもうすぐそこまで来ているように感じます。