半導体製造装置大手である東京エレクトロン<8035.T>の株価が堅調です。9月25日の終値では27720円となり、取引時間中は一時28000円を上回る場面も見られました。
9月4日からなんと14連騰。日経平均株価への寄与度も大きい銘柄ですから、足もとの指数上昇を牽引する銘柄としても存在感が際立っています。
とはいえ、同社株はその少し前までは低迷していました。きっかけは7月31日に発表した26.3期通期業績の下方修正と、26.3期1Qでの減収減益決算です。半導体メーカーの設備投資計画の調整による影響を受けるとして、今期見通しを引き下げたことで翌営業日の8月1日は一時ストップ安となる場面もありました。その後も株価は低迷し、9月初旬には心理的節目となる2万円を割り込んで19870円まで下落するなど、厳しい株価推移となっていました。
それがなぜ、前述したように短期間の間に28000円台を回復するまでになったのでしょうか。要因は中国の方針転換にあると考えています。
半導体関連では、特に生成AIが追い風となると言われるソフトバンクグループ<9984.T>やアドバンテスト<6857.T>が同社より先行して上昇していました。8月後半からの日経平均の上昇を牽引したのはこれらの銘柄だったと言えます。
2銘柄ともここ1カ月ほどでの上昇率は20%を上回るほどで、特に米オラクルの大型受注ややスターゲート計画の進捗など生成AI関連の材料が連日市場をにぎわせたことが上げを加速させました。
東京エレクトロン日足チャート
その間、東京エレクトロンは鳴かず飛ばずといった状況でしたが、米ウォール・ストリート・ジャーナルが、中国のアリババ集団は高性能の生成AIを開発したと報じたことや、中国当局が自国のテック企業に対し、エヌビディアのAIチップの購入を停止するよう求めたと伝わったこところから、同社株の動きが変わってきました。
この動きについては、一部生成AI関連の銘柄の上昇が急ピッチで高値警戒感が出てきたことで、それ以外の出遅れていた半導体関連にも買いが向かうようになったと指摘する声もあります。それも要因の一つでしょうが、それだけで東京エレクトロンほどの大型株がわずか3週間で40%も値上がりするかと言われると個人的には違和感を覚えました。
ですが、中国が自国での製造に本腰を入れるということになれば、これまで以上に半導体製造装置が必要になります。生成AIに関連した部分だけでなく幅広い部分で需要が増加してくることになるでしょう。
東京エレクトロンは中国向けにも装置を多く輸出していますから、こうした流れが現実になれば恩恵を受けることになります。中国は米国による規制が強化される前から、駆け込みでさまざまな装置を輸入しており、それが一種の特需になっていた面があります。その反動が出るというのがこれまでの見通しでしたが、一転下方修正した業績も上振れる余地が出てくることになるでしょう。
もちろん、これはあくまで仮説であり、現実として中国向けに同社製品が多く提供されるようになるかは不透明です。しかし、ここまで売り込まれた要因が一転解消される可能性が出てきたからこそ、株価は決算でストップ安となる前の水準を取り返すことができたのではないかと思えます。ここからさらに上値を伸ばすことができるのか注目です。