特定の銘柄の値動きを追いかけてみる「あの銘柄を買ってみた!」
今回はIHIを取り上げます。証券コードは7013で、プライム市場に上場しています。
1:7の株式分割を実施
IHIは2024年10月に、三菱重工業(7011)、川崎重工業(7012)と併せて取り上げました。
この時は防衛関連としてこれらの銘柄が人気になっており、IHIは値動きを見た1カ月間で2割近い大幅上昇となりました。
2025年3月にも値動きを追跡していますが、一段と水準を切り上げています。
今回3社の中でIHIにフォーカスした理由としては、同社が1:7の株式分割を実施したことが背景にあります。最低売買単位が引き下げられたことで、分割後の値動きがかなり大きくなっています。
以下の表は、分割近辺(2025年9月26日~10月1日)のIHI、三菱重工、川崎重工の株価および騰落率となります。
最低売買単位が切り下がった9月29日に強く買われており、翌9月30日は、三菱重工と川崎重工が下落する中で大幅上昇となりました。
一方、10月1日は多くの銘柄が売られる中、直近で急伸した反動で派手に売られています。
分割後に実質的な上場来高値を更新
こちらがIHIの日足チャートとなります。
分割直前と直後に大きく上昇しており、9月30日には分割を考慮した実質的な上場来高値を更新しています。注目度の高い銘柄では、このように分割前に駆け込みで買いが入り、その強い動きが分割後の買い需要を刺激することがあります。
IHIは株式市場では防衛関連との見方が強いですが、航空エンジンに強みを持っています。9月30日の日本経済新聞では、同社の民間向け航空エンジン補修部品の販売が好調であることを報じており、この日の大幅高にもつながりました。
自民党総裁選の結果にも要注目
IHIの10月1日の終値は2565円でした。100株単位で最低購入代金は25万6500円となります。分割前は170万円近い資金が必要であっただけに、購入のハードルは大きく下がりました。今回はこのタイミングで購入したと仮定して、1カ月後の株価と見比べます。11月1日は土曜日のため、三連休明け11月4日(火)の株価と見比べることとします。手数料・税金等は考慮しません。
10月4日には自民党総裁選の投開票が実施されます。防衛関連は政局絡みのニュースで大きく動くことも多いです。誰が勝利するのか、勝利者がどのような施策を強く打ち出すのかが、株価の刺激材料となるかもしれません。
分割直後というのは、様々な投資家の思惑が交錯します。まだ株式に多くの資金を振り向けるのが難しい投資家からすれば、買いたい銘柄の水準が切り下がることはチャンスとなります。一方、その銘柄を前から保有していて十分含み益のある投資家からすれば、分割すれば一部を利益確定することができます。分割後に人気になるようなら、そこは良い売り時と言えます。また、分割後の値動きを見ながら、勢いがつきそうな方向にベットしたい短期の投資家の参戦も予想されます。
株式分割そのものは株価への影響はニュートラルです。そのため、分割だけを理由に株価が大きく上昇した際には、バリュエーション面では割高感が意識されます。それでも買われる銘柄というのは多くの投資家が保有しておきたい、すなわち人気銘柄になる要素が多いと考えられます。
ご自身の保有している銘柄が大きく上昇して分割を発表することもあるかと思います。分割した銘柄が皆同じ動きをするわけではありませんが、多くの銘柄の値動きをウォッチして様々なケースを把握しておくことは、実際のトレードでも役立ちます。大型の株式分割が株価にどういった影響を及ぼすのか、振れ幅が大きい状態が長く続くのかどうか、この先の値動きをイメージしてみてください。