ふたたび盛り上がった「第二のアクアライン」とは?

夏休みを利用して、家族と千葉県に旅行に行ってきました。東京在住の筆者にとって、初の(東京湾)アクアライン利用です。1997年に神奈川県川崎市と千葉県木更津市を結んだアクアラインの開通によって、1時間半を要していた両市の移動は約30分に短縮されました。現在、今や首都圏の交通インフラとして欠かせない存在となったアクアラインを、もう一つ作ろうという動きが注目されています。それが「第二のアクアライン」です。


「第二のアクアライン」とは?

第二のアクアラインは現在のアクアラインの更に南部、神奈川県横須賀市と千葉県富津市をつなぐ構想のことです。1950年代から議論があるも進展せず、2008年に1度棚上げされていました。そんななか、2023年にあるSNSユーザーが「ここに橋が欲しい」と投稿し、1万件以上の反響が寄せられたことで、不動産・交通関連のメディアが特集記事を組むなど再注目を集めています。


現実性の無いインターネット上の夢物語ではありません。この盛り上がりを受け君津市は、「東京湾口道路には社会的に大きな期待がある」として、9年ぶりに総会を開催、2024年には促進協議会への設立に進んでいます。君津市に限らず千葉県全体、そして対岸の神奈川県への効果を広域的に期待できる話として、実現性が加わっています。


第二のアクアラインが実現すること


出典:産業計画会議:「東京湾2億坪埋め立てについての勧告」


第二のアクアラインが実現すると、東京湾を圏央道のように交通網が囲み、一体化することが期待されます。2つのアクアラインによって、数字の8のような形で東京湾が囲まれる印象です。建設によって神奈川県と千葉県のあいだでの交通の行き来、流通網の整備が進みます。


現在、東京・神奈川県において圏央道の整備が進んでいます。第二のアクアラインが実現することによって東京北西部と千葉県との移動時間も著しく短縮化されることでしょう。首都圏だけではなく、東名(新東名)高速と千葉県の連携も期待することができます。圏央道が東京23区を囲いますが、アクアラインが整備されることによって「東京湾」が囲まれることになります。


当然ながらメリットばかりではありません。人口減少の次代に膨大な費用をつぎ込み、東京湾を覆う必要があるのかという反対意見も目立ちます。民間企業の取組みではなく、巨額の税金を投入する取り組みです。仮に数年後、建設が決定したとしても、一筋縄ではいかないでしょう。投資するコストに見合った経済効果と、将来への期待値を踏まえてはじめて、話が前に進んでいくことは間違いありません。


筆者は(第一の)アクアラインを訪れた際に、千葉県側で繋ぐ富津市の富津岬にある「明治百年記念展望塔」に足を運びました。今回の第二のアクアラインにおいて、千葉県側の玄関地とされている場所です。良い悪いの話ではありませんが、玄関地として発展する木更津と比べると商業施設の少ない地域です。


富津岬は明治時代の前線基地

富津岬には「富津元洲堡塁砲台」があり、対ロシアの脅威に備えた前線基地となっていました。対する神奈川県側の横須賀市は日露戦争にてバルチック艦隊を迎え撃った「三笠」が保存されている、よく知られた海軍の前線基地です。ロシアに限らず、日本の首都に外敵の脅威が到来したときの前線基地同士が繋がることは印象的です。



投資家は「まだ」インフラに期待してもいいのか

繰り返しになりますが、五輪招致や万博の誘致などは従来にも増して、厳しく吟味される次代になりました。ましてや第二アクアラインのような交通インフラは、不動産投資家を中心に大きな期待感がありつつも、今日の日本において「時代遅れ感」はどうしても否めないものです。


上物だけではなく、「街」も年齢を重ねます。よく財政的に厳しい自治体で行われる議論では無いですが、一定数の人が住んでいる地域をコンパクトにまとめることにより、今後の日本に適している経済圏のコンパクト化は、前向きなものに変わります。このような議論は時に「いま住んでいる場所を捨てろというのか」と炎上の対象となってしまいますが、著しく進むDXや自動化の流れで十分に補完できるものでもあると筆者は考えています。


そのコンパクトな経済圏を再構築するものとして、第二のアクアラインは協業できる考え方です。千葉県の房総半島しかり、神奈川の三浦半島しかり。「首都圏を大きく円で囲む」ことによって、あらたな期待感を生じることに繋がります。海外からの来日客を見込んで経済を活性化させる方向に進むこれからの日本にとっても、プラスの側面が大きいものです。


第二のアクアラインはまだこれからの議論ですが、高度経済成長期では無い時代に再度注目されたのも、隠れたポイントがあるように考えることができます。果たしてこの話、どれくらいの可能性とスピードで進むことができるでしょうか。

独立型ファイナンシャルプランナー

工藤 崇

株式会社FP-MYS 代表取締役 1982年北海道生まれ。相続×Fintechサービス「レタプラ」開発・運営。2022年夏より金融教育のプロダクト提供。上場企業の多数の執筆・セミナー講師の実績を有する独立型ファイナンシャルプランナー(FP)。

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