政府が提示した「新日銀審議委員候補」は、金融市場に即座の反応をもたらしました。リフレ派と目される2氏の起用観測からドル円は156円台へと円安に振れ、株式市場は最高値を更新。今回の人事は、今後の利上げペースや政策運営の方向性を占う重要なシグナルとなりそうです。
リフレ派2人起用で高まる「緩和長期化」観測
政府は、任期満了を迎える審議委員の後任として、中央大学名誉教授の浅田統一郎氏と、青山学院大学教授の佐藤綾野氏を提示しました。両氏は、金融緩和と積極財政を重視する「リフレ派」と受け止められています。
浅田氏は、景気後退局面では減税や政府支出拡大と金融緩和を組み合わせる「反緊縮」的政策の重要性を主張してきました。消費増税が景気を下押しするリスクにも警鐘を鳴らしています。
佐藤氏も、総合的に見れば円安は日本経済にプラスとの立場を示し、持続的な賃上げが確認されるまで金融政策は現状維持が望ましいと述べてきました。
人事案が伝わると、東京外国為替市場では早期利上げ観測が後退し円売りが優勢に。155円前半へ下押して推移していたドル円は急速に156円台を回復しました(図表参照)。さらに上値をうかがう様相となりました。

株式市場では景気拡大期待が強まり、日経平均株価は大幅高と、典型的な「円安・株高」の反応が広がりました。マーケットは、金融政策の正常化がより緩やかになる可能性を織り込み始めたといえます。
金融政策の行方と為替・金利への波及
もっとも、新任2氏が直ちに政策委員会を主導するわけではありません。政策決定は総裁・副総裁を含む9人の合議制。ただし、時間をかけて議論の方向性に影響を与える可能性はあります。
現在、日銀は政策金利を0.75%まで引き上げ、正常化を進めています。物価上昇圧力や円安基調が続くなか、追加利上げの是非が焦点ですが、リフレ志向の委員が加わることで利上げペースは慎重になるとの見方が強まっています。
為替市場では、利上げ後ずれ観測は円安要因。一方で、長期金利が上昇し過ぎれば債券市場や住宅ローン金利への影響も無視できません。実際、人事案公表後には超長期金利が急上昇する場面もあり、インフレ対応が後手に回るリスクを意識する動きもみられました。
今回の「新日銀審議委員候補」は、高市政権の経済運営スタンスを映す“リトマス紙”とも報じられています。金融と財政を総動員して成長を後押しする路線が強まるのか、市場との対話を重視しつつ段階的な正常化を進めるのかどうか。
マーケット参加者にとっては、為替水準や株価動向だけでなく、今後の政策委員会での発言や投票行動を丁寧に見極める局面が続きそうです。



