運用や将来に備える資金が倍増

2024年の新NISA(少額投資非課税制度)をきっかけに、資産形成に関心を持つ人が増えています。新NISAスタート2年目となった2025年の調査では、運用や将来に備える資金が飛躍的に増加しました。


金融資産の平均額は1,940万円、中央値は1年で720万円に倍増


「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」〔二人以上世帯〕によると、金融資産の保有額は、金融資産を保有しない世帯を含めた平均額で1,940万円。2024年の1,374万円、2023年の1,307万円から徐々に増加しています。


「家計の金融行動に関する世論調査」は、2024年度に設立された金融経済教育推進機構(J-FLEC)が、それまでの金融広報中央委員会から引き継ぎ、年1回実施しているインターネット調査です。調査時期は2025年6月20日(金)~ 7月2日(水)で、対象は世帯主が20歳以上80歳未満で世帯員が2名以上の5,000世帯です。別途、単身世帯の調査もありますが、本コラムでは二人以上の世帯の結果をご紹介しましょう。


この調査の「金融資産」は、運用や将来の備えとして蓄えている資金のこと。日常的な出し入れ・引落しのための現金や預貯金などは含みません。あくまでも長期間保有する予定の資金で、定期預金・普通預金といった預金等の区分は問いません。また、事業のために保有している金融資産や、土地・住宅・貴金属等の実物資産も除いています。


金融資産の中央値は720万円で、2024年の360万円から1年でなんと倍増。平均額と中央値のいずれも、データをさかのぼることができる2004年以降で最高額となっています。


さらに、金融資産を保有する世帯のみに絞った集計では、平均額が2,309万円、中央値が1,050万円でした。こちらも2024年の平均額1,833万円と中央値780万円から大きく増加しています。データが現存する1963年以降の最高額となりました。


金融資産がなかった人の3分の1が、保有できるようになった


では、金融資産をどのぐらい保有しているか、保有金額の分布を見てみましょう。3年分の推移を見ると、2025年は保有額の多い層が増加しました。



「500~700万円未満」より多くの金融資産を保有する層は、いずれも前年より増えています。特に「3,000万円以上」は18.8%と2割に迫るほどで、前年の12.2%より6.6ポイント増えています。


一方、金融資産を保有していない人は15.7%で、前年の24.0%から大幅に減りました。「100万円未満」も前年の9.1%から7.6%へと減少しています。2024年に金融資産を保有していなかった層のうちの約3分の1が、金融資産を保有するようになったことが読み取れます。


株式や債券の価格変動で資産を増やした人、減らした人 


金融資産を株式や債券で保有している人は、価格変動リスクを負いながらも全体的には資産を増やしていることが読み取れます。


金融資産保有世帯に対し、1年前に比べて金融資産の残高が増えたか減ったかを尋ねたところ、「増えた」と答えた人は34.5%。前年の41.8%から7.3ポイント減少しました。一方、「減った」と答えた人は16.9%で、こちらは前年の15.9%から1.0ポイント増加しています。「変わらない」という人が全体の約半数の48.5%で、前年の42.3%から6.2ポイント増加しました。


「増えた」と答えた人の理由としては、「株式、債券価格の上昇により、これらの評価額が増加したから」(38.7%)、「配当や金利収入があったから」(35.0%)が上位で、「定例的な収入が増加したから」(31.7%)を上回っています。


一方、「減った」という人の理由として最も多かったのは「定例的な収入が減ったので金融資産を取り崩したから」(37.7%)で、「株式、債券価格の低下により、これらの評価額が減少したから」(24.5%)を13.2ポイント上回っています。


資産の増減理由について、データが公表されている最も古い1989年は、「定期的な収入が増加したから」という回答は、52.8%でした。年末に日経平均株価が当時の最高値をつけた1989年でも、「株式、債券価格の上昇により、これらの評価額が増加したから」という回答は9.3%でした。近年は、「お金にも働いてもらう」という考え方が広まっていることが感じられます。


株式と投資信託の保有額が著しく増加


「金融資産が減った」と答えた人のうち、株式や債券価格の低下で評価額が減少したという人は、前年の13.9%に比べて10.6ポイント増えました。金融資産を増やした人・減らした人の両方に、株式や債券の価格変動で金融資産が増減したという回答が上位になりました。


その背景には、リスク資産を保有する人が増えたことがあると考えられます。【グラフ2】は、金融資産保有世帯の債券、株式、投資信託の保有額の推移です。



特に価格変動の大きい株式と投資信託の保有額が増加傾向で、これらから受ける金融資産保有額の変動の影響は、以前より高まっていると考えられます。


それでもなお、金融商品の選択理由としては、安全性より収益性を重視する傾向が強まっています。金融資産保有世帯の41.8%が収益性を重視する一方で、安全性を重視する人は26.6%でした。


収益性重視として、「利回りが良いから」と答えた人は22.4%で、「将来の値上がりが期待できるから」と答えた人は19.4%でした。同じ「収益性」でも、両者の間にはリスクの取り方が異なりますが、値上がりを期待する人が年々上昇しています。2010年の調査結果では、「利回りが良いから」が13.2%、「将来の値上がりが期待できるから」が2.6%だったのです。


新NISAのスタートから1年半が経過した時点で行われたこの調査からは、徐々にリスク資産への資金シフトが進んでいることが読み取れました。また、価格変動リスクを受け入れながらも、資産形成を行っている様子もうかがえる結果となっています。


【出典】「家計の金融行動に関する世論調査」(金融経済教育推進機構)



ファイナンシャル・プランナー

石原 敬子

ライフプラン→マネープラン研究所 代表 ファイナンシャル・プランナー/CFP®認定者。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。終活アドバイザー® 大学卒業後、証券会社に約13年勤務後、2003年にファイナンシャル・プランナーの個人事務所を開業。大学で専攻した心理学と開業後に学んだコーチングを駆使した対話が強み。個人相談、マネー座談会のコーディネイター、行動を起こさせるセミナーの講師、金融関連の執筆を行う。近著は「世界一わかりやすい 図解 金融用語」(秀和システム)。

石原 敬子の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております