石油先物・ショックに見る「狼狽売り」は今回も絶対に避けるべきか

2026年3月9日(月)、イラン情勢の影響でNY原油先物が急騰し、翌日朝の日経平均株価は終値で一時2892円12銭安の5万2728円72銭まで落ち込みました。1970年代に社会を大混乱に陥れた「オイル・ショックの再来」という声も聞こえます。


このような局面で避けるべきは、想定しない評価損があると混乱し、売りに走ってしまうこと。2024年夏の植田ショックでも、記憶に新しい2025年春のトランプ関税ショックでも、どん!と落ちた日足を見て不安が最大になり、売却に走ったという話を数多く聞きました。


そのあと短期間で戻ったことを聞き、後悔したいわゆる「狼狽売り」です。この狼狽売りは避けるべきというのは投資初心者の鉄則ですが、今回も守るべきなのでしょうか。


いったん「いまは株高」であることを忘れる

イラン情勢が緊迫化するまで、日本・アメリカともに株高が続いていました。現在アメリカの株相場を牽引するのは「マグニフィセント・セブン」を軸としたハイテク株です。2026年2月にこのマグ7を構成する各社が決算を迎えます。実業績よりも世界を変える期待が先行している会社の評価が覆ることも想定されましたが、何も起きずに済みました。


そして今回のような日足です。通常、このような日足の落ち方をしたときに「この銘柄は再び戻るのか」と考えます。まずは中東戦争はどうなるのか。想定外の悪化として報じられた2月の(アメリカの)雇用統計は今後どうなるのか。いま筆者が伝えたいのは、いったん「いまは株高」であることを忘れるようにしましょうということです。次の方向性が見えてから、全体的な戦略を練るべきだと考えます。


少なくとも原油に関しては、これだけ国際社会にとって不可欠なものですので、早々に手は打たれると考えるべきです。3月9日には財務相会議がオンラインで開催され、万が一の際に備えて備蓄される原油が出せる状態、と報じられました。


そのうえで中東情勢の緊張感は維持されていくか否か。3月10日(火)、トランプ大統領は「対イラン作戦はほぼ終わった」と発言しました。イラン情勢が終われば、相場は次の課題に着目します。一方で殺害されたイランの最高指導者であるハメネイ師の後任に次男が指名され、早速アメリカが認めないという姿勢を示すなど、混乱は終わりそうもありません。



下がった株・投信の「5日移動平均線」を見る

では所有している株を売却するか否かを判断するにはどうするか。かねてから「〇〇円まで下がったら売ろう」という損切りポイントを設定している人は、いまこそ遵守すべきだと思います。下落局面において怖いのは先の見えなさ感ですが、2026年はこの先の見えなさは長く続くものと考えられます。数年にわたり投資初心者も波に乗ることができた過去5年間とは異なります。では、損切りポイントを設定していない人はどう考えるべきでしょうか。


個別株ではなく投資信託が連動する日経225やS&Pなどの指標において、上昇するか否かは「5日移動平均線を見るべき」といわれます。つまり、自分の所有している株の5日移動平均線を見て、ぱっとしないのであれば売りを判断します。「現値を見て動く」ときに怖いのは乗り遅れです。移動平均線なら、売買判断を数日早められるうえ、翌日に戻る銘柄を狼狽売りするということも避けることができます。現値が5日移動平均線を下抜けていれば、更に下がる可能性があるから売却を決断するという考え方です。


一方で個人投資家ならではの鉄則もあります。それは、「後だしじゃんけんができる」という立ち位置です。



後だしじゃんけんをして2026年前半戦を乗り切る

動かなければいけない機関投資家と異なり、個人投資家は「後だし」ができます。ポジションを持ちながらも勝負せずに、不確実性の多いこの状況を乗り切るという戦略です。とはいえ損切りポイント(=限界)には忠実に、です。


2026年のファンダメンタルズでいえば、秋口のトランプ大統領と中間選挙やFRBの新総裁就任など、さまざまなポイントがあります。経済が上向かない中国の内需と対台湾の外交姿勢にも注目です。2027年秋に習近平国家主席は任期満了を迎えます。自分の政権は中国を成長させたと言いたいところですが、不動産をはじめとした内需は冷え込んだままです。そのときに向けて、かねてから統一に言及している台湾に対する姿勢が強硬化する可能性は決して低くはないでしょう。


損切りポイントと移動平均線などで設けた売買判断の基準は維持しつつ、わからないことには無理をせずに動きすぎない。そのうえで機関投資家が動いて、状況が明らかになったら後出しをする。これらを基本姿勢に、想定外のことが続々と起きるトランプ相場を乗り越えるべきと考えます。


昨年はこのくらいの時期から発言が活発化したトランプ大統領が、世界をかき回しました。今年も同じ動きをしているようにも見えますが、「TACO取引」と揶揄されているうちはまだ安心でしょうか。これからの動きは、個人投資家の胆力が試されていきます。


独立型ファイナンシャルプランナー

工藤 崇

FP事務所MYS代表。ファイナンシャルプランナー(FP)。日本最大級のマネースクール事業に参画。上場株、貴金属、為替のほか、これまで約700本の執筆記事を手掛ける。1982年北海道生まれ。

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