日本経済新聞電子版は18日、ニデック(旧日本電産)が電気自動車(EV)向け駆動装置「eアクスル」で、中国企業との合弁解消に向けた協議を始めたことが同日わかったと報じました。
ニデックの中国における電気自動車(EV)向け駆動モーターシステム「eアクスル」事業は、同社の成長戦略の「本丸」とされてきましたが、激しい市場環境の変化と経営陣の路線対立を経て、現在大きな転換期を迎えています。
ニデックの創業者である永守重信元会長は、未来のEVシフトを見据え、EVの心臓部となる「eアクスル」を次世代の収益の柱に据えました。世界最大のEV市場である中国を主戦場と位置づけ、現地の大手自動車メーカー(広州汽車グループなど)との合弁会社を次々と設立。圧倒的なスピード感と低価格を武器に、まずは市場のシェアを握る拡大路線を突き進みました。
その後、車載事業のさらなる強化とグローバル展開、そして自身の後継者育成のため、永守氏は2020年に日産自動車の元副COOである関潤氏を社長として招聘しました。しかし、この時期から中国市場の潮目が変わります。BYDなどの中国現地メーカーがeアクスルの内製化を進めたほか、安価なローカルサプライヤーが台頭し、猛烈な価格競争、というよりは価格破壊、が始まったのです。
この危機への対応をめぐり、永守氏と関氏の間で方針の不一致が生じたといわれています。永守氏はこれまでの成功体験ともとに、徹底したコスト削減とニデック流の猛烈なスピード経営での突破を要求しました。一方で、関氏が自動車業界のセオリーに基づいた品質管理や、収益性を重視した慎重なアプローチを進めようとしたと見られています。
結果として、永守氏は関氏の経営スピードや業績に不満を募らせ、2022年4月に関氏をCEOから降格。同年9月に関氏は事実上の更迭となる形で退任へと追い込まれました。関氏の退任後も、中国市場の激しい価格競争は止まらず、ニデックの車載事業は巨額の赤字や減益に苦しむことになります。
その後、永守氏はこれまでの戦略を転換し、中国での不採算機種の受注を制限。販路の軸足を、比較的採算が確保しやすい日米欧の自動車メーカー向けへとシフトする方針を示していましたが、前述したようにニデックの中国eアクスル事業は「完全な撤退」という構造改革の最終局面を迎えたといえるでしょう。
ニデック日足チャート

同社については、事業面だけでなく、不適切会計や品質に関する不正疑いについても、現在調査が進められています。5月21日に配信されたロイター通信の記事によれば、同社岸田光哉社長は今後の成長戦略に不可欠なM&Aなどを考えても「上場維持は譲らない」と強調したと伝わっています。
さまざまな面で正念場を迎えている同社の動向に今後も注目していきたいと思います。




