「海賊と呼ばれた男」とシーレーンの将来株価

出光興産をモデルとした百田尚樹さんの「海賊と呼ばれた男」が自宅の本棚にあります。モデルとされているのは1953年(昭和28年)の日章丸事件です。時が経ち2026年、「イランと石油(原油)」が大きな注目を浴びています。


個人投資家のなかには石油不足からの日本株の落ち込みを懸念する声も聞こえますが、本記事では少し異なる視点から考えてみましょう。


日章丸事件とホルムズ海峡

今後配信などで「海賊と呼ばれた男」を視聴される方もいると思いますので、これ以上小説・映画の内容には触れませんが、この日章丸事件は実際に発生した事件です。イギリスの影響下にあったイランは自国で生産した石油を海外諸国に販売することができませんでしたが、出光興産はイランと独自取引を樹立し、イラン産石油を日本に輸入することに成功します。このときに日章丸が夜陰に紛れて通過したのが「ホルムズ海峡」です。


時代が進んで2026年、イランはアメリカ・イスラエルと戦争状態に入り、ホルムズ海峡を通る船を攻撃、事実上の「海峡閉鎖状態」としています。


記事執筆時の2026年3月、日本の石油備蓄は254日分と報道されています。週末から開催される日米首脳会談ではアメリカ・アラスカ州の石油輸入開始に向けて協議が進められるなど、いわゆる「オイル・ショック」を起こさないように国・政府が邁進している状況です。その一方でガソリンが一時190円台を超えるなど、日常生活への影響も報じられています。


シーレーンは原油だけなのか

日本はエネルギー自給率が低く、化石燃料の約83.5%を海外から輸入しています。ホルムズ海峡の閉鎖が長期化したとき、代替手段の1つとなるのがLNG(液化天然ガス)です。経済産業省の資料によると、LNGはオーストラリア(41.6%)、マレーシア(15.6%)、パプアニューギニア(5.8%)と東南アジア諸国が高いシェアを築いています。


参照:経済産業 資源エネルギー庁


この「シーレーン」という言葉を狭義で捉えると、イランなど湾岸諸国があるペルシャ湾からインド洋およびシンガポール周辺を通過して台湾沿いから日本へ北上するという印象が強いものです。日章丸もこの航路を通ってイランから石油を日本に運びました。もちろん石油・原油はエネルギー用途のみではありませんが、ホルムズ海峡の閉鎖が長期化すると、LNGや原子力発電に使われるウランの主要輸入国であるカザフスタンの存在感もシーレーンの重要性に加わってくることでしょう。


際立つオーストラリアとの関係

LNG・ウランの両原料において高い存在感を示しているのがオーストラリアです。軍事的にはQUAD(クアッド:日本・オーストラリア・アメリカ・インド)の結びつきで知られていますが、経済的にも綿密なパートナーシップを築いていることがわかります。


Googleで「オーストラリア・投信」と検索すると、複数のファンドが出てきます。このなかから原料系で探したり、高配当株でスクリーニングをしたりすることで出てくる投資商品は、今後需要が高まる可能性があります。アメリカは引き続き、何かあれば「関税」です。日本との貿易活性化によってオーストラリア国内の景気浮揚が見込まれるため、高配当株がしっかりと利益を出し、投信の基準価格にも反映されるのではという期待感が見込めます。


このオーストラリア株は現状のニーズから銘柄を見つけた格好ですが、更に高い運用成績を目指すときに深掘りしたいのが、「シーレーンの将来株価」という視点です。



シーレーン「以外」の将来株価

これまでシーレーンは、代替性のなさが指摘されるも、「ほかの手段がない」とされてきました。こうして実際に閉鎖が長期化する段階まで追い込まれて、はじめて「シーレーン以外」という発想が生まれ、具体化してきます。個人投資家にとって、これは大きなチャンスです。


2026年の春から夏にかけては、シーレーンの代替案が個人投資家にとっての大きなテーマとなります。2027年10月には、中国において習近平国家主席の任期(=李強内閣の任期)が満了を迎えます。経済不況に苦しむ中国国内において、それまでに現内閣の成果を示すため台湾に対する姿勢が強硬化する可能性も決して低くはないでしょう。実際に発生すると、中東以外の地域でシーレーンは多大な影響を受けることになります。


ポイントになるのは「将来株価」です。一般的に個別株の売買をするには、この将来株価の予測が大切なポイントとなります。株価が現時点から見て、数か月から半年程度、企業決算ベースで見て2回分(6か月分)のあいだにどう動くかどうかで、現在その株を買うか否かを判断していきます。


シーレーン「以外」については、長期的な読みが必要です。現在の状況がいつまで続くか。悪化するのか緩和するのかは、各国の関係や戦争状況ひとつで大きく変わります。言い換えれば、市場に織り込まれていないという状況です。個人投資家の大半が想定していないところに状況が変われば、株価の大きな変動要素となります。ファンダメンタルの先行情報を見ながら、状況が半年後以降にどうなっていくのか、「読む力」を磨いていくようにしましょう。


独立型ファイナンシャルプランナー

工藤 崇

FP事務所MYS代表。ファイナンシャルプランナー(FP)。日本最大級のマネースクール事業に参画。上場株、貴金属、為替のほか、これまで約700本の執筆記事を手掛ける。1982年北海道生まれ。

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