気になるテーマ解説

米国新興企業のアンソロピックとは何者なのか?

このところ、AIがソフトウェア企業のサービスを代替するとの懸念が出てきています。前回はSaaS企業が生き残れるのか考えてみましたが、今回は懸念の一端となった米国の新興企業アンソロピックについて調べてみました。


アンソロピックとは何者なのか?

アンソロピックは2021年に設立された米国発の人工知能(AI)開発企業で、大規模言語モデル「Claude(クロード)」を中心に生成AIの研究・サービス展開を行っています。元OpenAIの技術者らが立ち上げた企業であり、アマゾン、グーグル、マイクロソフト、エヌビディアなどが出資しています。


主力製品の「Claude」はOpenAIのGPTシリーズや、グーグルのGeminiシリーズと競合になり得る性能を持ち、一部報道では企業価値が3500億ドル(1ドル155円換算で約54兆円)とされます。まだ非上場です。


企業価値54兆円となると、日本で時価総額最大のトヨタ自動車(2月12日時点で約58兆円)と肩を並べます。設立5年にもかかわらず年換算の売上高が1兆円を超えるようなので、もはや大企業と言っても過言ではないですね。


<アンソロピックの主なサービス>


自然な文章や安全性に強み

アンソロピックは生成AIの高度化競争の中で、能力拡張だけでなく安全性研究を重視することを掲げる新興AI企業とされます。特に、長文の処理、自然な文章に強みを持ち、安全性(違法行為の助長や危険物の利用方法)への配慮がされているとのこと。AIがもっともらしい嘘をつく(ハルシネーション)といったリスクの低減にも力を入れているようです。


自然な文章に強みがあるとのことなので、比較してみることにします。


プロンプト『添付した「金融政策決定会合における主な意見」を200文字程度で要約してください』


Claude「日本銀行の2026年1月会合では、経済は緩やかに回復しているものの、円安による物価上昇リスクや格差拡大への懸念が示されました。物価の基調的上昇率は2%目標に近づいており、複数の委員が追加利上げの必要性を指摘。特に円安の物価への影響を重視し、ビハインドザカーブを避けるため、適時適切な金融緩和度合いの調整が求められています。一方、長期金利の上昇には注意が必要との意見もありました。」


ChatGPT「日本経済は一部に弱さを残しつつも緩やかに回復しており、賃金と物価の好循環の下で基調的なインフレ率は目標に近づくと示されています。一方で、円安や賃上げ、人件費転嫁などによる物価上振れや格差拡大への懸念も指摘されています。金融環境はなお緩和的とされ、経済・物価の改善に応じた段階的な利上げや柔軟な国債買入れ対応の必要性が議論されています。政府は連携のもとで2%目標達成を期待しています。」


Gemini「わが国経済は緩やかに回復しており、春には物価の基調が2%に達するとの見方が示されました 。円安による物価上振れリスクや実質金利の低さを踏まえ、経済・物価情勢の改善に応じて、適切なタイミングで利上げを進めるべきとの意見が相次いでいます 。中立金利を意識しつつ、数か月に一度のペースでの継続的な調整や、長期国債買入れの柔軟な対応を求める声も上がっています 。」


こうして比較してみるといずれの要約もしっかりと作られていますが、確かにClaudeの文章は自然な感じがしますね。ニュースの原稿としてそのまま使えそうな印象を受けます。


アンソロピックが脅威となったワケ

従来SaaS(Software as a Service)は業務機能をソフトウェアとして提供し、ユーザーが操作することで価値を実現するモデルで成長してきました。一方、生成AIが高度化したことでAIエージェントと呼ばれる業務を自動化する技術が誕生しています。これまで人間がパソコンの画面を操作して行っていた業務を、AIエージェントに例えば「請求書を処理して」「顧客分析して」などと指示するだけで済むようになります。


その中で2026年1月にアンソロピックがAIエージェント型デスクトップツール「Cowork(コワーク)」を発表しました。単体の製品ではなく「Claude」のサブスクリプション機能です。簡単に言うと、やってほしい業務を依頼するとそれを実行してくれるツールです。例えば、自身の端末上にある請求書などのデータを自動で取り込み、スプレッドシートを作成することなどができます。

 


有力企業のAIエージェントということもあって、これまでの会計ソフトがAIに代替されるとの懸念が強まりました。その後、アンソロピックは「Cowork」に法務や財務分析といった専門分野の業務を自動化する機能を追加することを発表。ソフトウェア企業が存在意義を失うかもしれないという警戒感からITサービス、SaaS、コンサルティングなどの関連銘柄が軒並み急落する事態になりました。


AIの急速な発展に伴って、単にSaaSを契約して人が操作する時代ではなくなる可能性が高くなりました。サービスを差別化できなければAIに代替される恐れがありますが、大規模な基幹システムや高いシェアを持つSaaSがすぐに代替される可能性は低いでしょう。


現状維持を続ければ競争に負けるのは、なにもSaaSに限ったことではありません。アンソロピックの新サービスは既存のSaaS企業、コンサルティング企業などにとって脅威かもしれませんが、自社のサービスをより良い方向へ見直すきっかけにもなります。競争が強まるなかで、どのような生き残りの戦略をとるか注目していきたいところです。


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日本株情報部 アナリスト

畑尾 悟

2014年に国内証券会社へ入社後、リテール営業部に在籍。個人顧客向けにコンサルティング営業に携わり、国内証券会社を経て2020年に入社。「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別銘柄を中心としたニュース配信を担当。 AFP IFTA国際検定テクニカルアナリスト(CMTA)

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