中東情勢を巡りマーケットは荒れていますが、過去最大級の新規上場(IPO)が実現する可能性が伝わりました。上場観測が伝わったのは2002年にイーロン・マスク氏が創業した米国の民間宇宙開発企業であるスペースXです。
名前は聞いたことがあるものの、日本に住んでいるとあまり馴染みがないかもしれません。マーケットへのインパクトも大きくなりそうなので、今回はスペースXがどのような企業なのか見ていきたいと思います。
スペースXとはどんな企業なのか
本社はテキサス州にあり、ロケットの設計・製造・打ち上げを一貫して手掛けています。創業当初から「再使用可能なロケットで宇宙へのアクセスコストを劇的に引き下げる」という目標を掲げており、自社ロケット「ファルコン9」による機体の垂直着陸・再利用を実現しました。
ロケットが再利用できることにより、「ファルコン9」の打ち上げコストは従来の半分になったとされます。将来的には100分の1のコストになるとの期待もあるので、もしそうなれば宇宙がより身近になるかもしれません。

もう一つの大きな事業が、衛星通信によるインターネットサービス「スターリンク(Starlink)」です。従来の静止衛星は高度3万6000キロメートルであるのに対し、スターリンク衛星は高度550キロ程度と低軌道を周回しています。これで何が変わるのか次項で説明します。
スターリンクの仕組み
低軌道であることで、通信の遅延が大幅に低減できるメリットがあります。遅延時間は25~35ミリ秒程度と、従来の静止衛星で生じる遅延を65分の1と大幅に圧縮できるようになります。
ただし、低軌道周回では高速で移動し続ける必要があるため、すぐに地上と衛生の通信が途切れてしまいます。このため、衛星を大量に飛ばして連携する「衛星コンステレーション」という技術を用いることで途切れることなく地上との通信を可能にしました。現在では1万基以上のスターリンク衛星が飛んでいるとされます。
世界中のどこにいても、衛星を通じてインターネットに接続できれば便利ですよね。コストに見合わない僻地に電波塔を建てる必要がなくなりますし、海上や山岳、砂漠など、空が見渡せる場所であればどこでもインターネットが使えます。

使い方もシンプルで、アンテナ設置して電源につなぎ、専用アプリで設定するだけです。もちろん個人も使うことができ、現時点で月額4600円。なお、ネットワーク機器の代金が別途必要となります。
ちなみにスターリンクの契約者数は2025年12月時点で900万人を超えたようです。スペースX全体の売上高は2兆円を超えると報じられており、その半分以上をスターリンクが稼ぐとされます。筆者の周りにスターリンクを使っている人がいないので実感はわきませんが、想像以上に大きなサービスに成長していることが分かりますね。
穏やかな話ではありませんが、ロシア・ウクライナ戦争においても、ロシア軍がスターリンクを不正に使って攻撃していたことがニュースとなりました。その後はアクセス遮断措置により不正利用はブロックされていますが、衛星通信は便利な反面で脅威になり得る存在でもあります。
高速衛星通信を世界規模で実現したスペースXは、単なるロケット開発企業では片付けられない存在といえます。なお、戦争により荒廃したウクライナの一部地域においてスターリンクが通信の要にもなっています。
上場による影響は?
スペースXについては、上場を検討、来年にも上場するかも、とその都度上場に関する観測報道が出ていました。最新のニュースでは米証券取引委員会(SEC)に対して非開示で新規株式公開(IPO)を申請したと報じられており、6月の上場が視野に入るとのことです。
不明瞭ではありますが企業価値は200兆円以上にもなるようで、IPOの規模は過去最大になると予想されています。影響力が大きい会社が上場すると、マーケットももちろん反応します。スペースXは宇宙開発で世界最大の上場企業になるかもしれないので、世界中の株式市場でも宇宙開発の関連企業が注目されやすくなるでしょう。
<日本に上場する宇宙関連企業の一例>

スペースXの上場が実現すれば、短期的には宇宙関連が大きく盛り上がると思われます。ただ、宇宙開発は一朝一夕とはいかないものなので、テーマとしては長期。5年後10年後に宇宙開発はどのような進歩を遂げているのか、期待しながら待ちたいですね。





