株式相場が評価をするのは、ほかならぬ企業活動の結果です。その到達点に至る「働き方」も評価対象なのかが本日のテーマです。株価が大きく動く年4回(通期・四半期)の決算において、基本的に現場の働き方まで「見える」ことはありません。一方、高市総理は2026年の施政方針演説にて、裁量労働制の拡充を主張しました。今日の知識集約労働において、「何時間働いたから〇〇円」の仕組みはベストではなく、心身の健康を保ったうえでの働き方改革は時代の要望といえるでしょう。
2026年に進む裁量労働制への移行
筆者は現在、上場株の学習をするマネースクールにて入会前のコンサルティングを務めています。特に長い時間をかけて運転する運輸業界の方々は、一昔前でいうラジオの代わりにWEB講義をかけて学習することにも意欲的です。2024年に運輸業界には「年960時間の時間外労働規制」が設けられ、就業環境は大きく変わりました。収入の代わりにお金に働いてもらう、株式投資への熱量が高まっている背景のひとつといえるでしょう。なお、運輸業(自動車運転業務)と同時に残業規制が強まったのは、建設業と医師の世界です。
一方、これらの動きは少数派とも見ることもできます。現在の労働基準法は、時間外労働の上限を月45時間、年360時間と厳しく定めており、違反した企業には刑事罰が科される可能性もあります。高市首相はこの上限規制に対して、「企業が過剰に反応し、本来より働ける余地がある」と、日本経済における生産性向上の妨げになっていると指摘しています。
株式相場の評価は?
まさに裁量労働制と残業規制がせめぎ合っているような状況ですが、そもそも両者は対立軸ではありません。裁量労働だから従業員の健康を無視することはないのと同時に、残業規制だから生産性を二の次に置いているわけではありません。つまり、大きくずれた状態で議論をしている印象があります。
株式相場の反応も同様の印象です。裁量労働制の拡大によって何が変わるのかを見極めている印象があります。そもそも各企業において、生産性は数字で測ることのできるものではありません。労働時間の改革によって見える成果が現われれば、各社株価の評価にも反映されていくでしょう。
長時間労働「希望」4%
そんななか、働く人のうち労働時間を長くしたいと考えているのは、わずか4.3%。という調査結果を東京大社会科学研究所がまとめ、2026年8月4日に公表されました。各地方紙に広くスペースが割かれていることから、共同通信か時事通信の配信記事と推察されます。記事によると労働時間を長くしたい人は非正規雇用者や低収入の人に偏り、男性より女性の方が割合が高かったと報じられています。記事は「高市内閣の想定している対象とギャップがあった」と結論づけています。
ただ、高市内閣による裁量労働制の導入において、そもそも労働時間の長期化を前提としているものはありません。時給による労働時間制の撤廃=事業側は際限なく労働時間を設定できるはずだ、という指摘はやはりずれているものであり、この前提を出されれば生産性いかんの議論にいつまでも移ることができないといえます。残業(時間外労働)への考え方は、本来は各社が取り組むべき優先度の高い事柄であるべきですが、平行線の議論によっていつまでも歩み寄らない印象を受けます。
そもそも「労働時間が伸びるのを希望するか」とだけ聞かれれば、筆者のように独立をして、完全な売上連動報酬で仕事をしている人間も「No」というのは間違いありません。仕事の時間が伸びるのであれば、比例して生産性も伸びるのは大前提です。誰しも生産性が変わらない「かもしれない」のに、労働時間が伸びるのは嫌だと感じるでしょう。繰り返しになりますがこの議論は恣意的か、それとも偶然か「ずれたまま」であり、株式相場も評価のしづらい状況が続いている、という反応を見せているのではないでしょうか。
「イノベーション後」の労働改革であれば
同時に本稿の最初に記載した運輸業界では、配送ロボットやAIによる「イノベーション」が進んでいます。労働環境の変更によるネガティブなイメージがありながらも、それがイノベーションを前提としたものであるならば、株価にも反映されることでしょう。特に2026年後期から「FDE活動」という言葉が注目されています。AIを活用して、それまでAI導入の進度が高くはなかった現場やオフィスに深く入り込みます。そこでAIやシステムの設計・開発・実装・運用改善までを一気通貫で伴走・実行する活動です。いわばがらっと就業環境が変わる現場も多く、その結果として裁量労働制に対する考えも変わってくることでしょう。2026年は、AIがより社会的インフラとなり、なくては何もできないインターネットとなる可能性を秘めた1年と考えられるでしょう。



