米国シカゴを本拠地とする世界最大級の金融派生商品取引所を運営するCME Groupが8月10日に、計算力先物(Compute futures)の取引を10月5日から開始する計画と発表しました。
先物というと原油、金、小麦、トウモロコシなどの実体がある商品や株価指数(日経平均やS&P500など)を思い浮かべますが、今回始まるのは計算力です。これがいったい何者なのかパッとイメージできませんが、どうやらCME幹部によれば「計算力はAI時代の通貨になりつつある」とのこと。今回は計算力先物がどのようなものなのか調べていきます。
計算力先物のベースは?
CMEはGPU(画像処理装置)ベンチマーク企業のシリコンデータと提携し、「Silicon Data H100 Rental Index Futures」と「Silicon Data B200 Rental Index Futures」の2つの先物取引を用意するとのこと。
鋭い人なら勘づくかもしれませんが、H100、B200はエヌビディア製GPUです。AI使用の需要が高まるなどによって、エヌビディア製GPUを使ったAIサーバーのレンタル価格が上昇すると見込まれれば、先物に買いが入るというイメージですね。

先物には原資産(先物の対象となる資産)がありますので、今回の場合はエヌビディア製GPUのレンタル価格が原資産ということになります。現時点では公式から具体的な情報を見つけられませんでしたが、先物の満期が来たら、シリコンデータが算出しているGPUレンタル価格指数を参照に清算されるということになるでしょう。
計算力先物が始まる経緯
これまでになかった先物取引が始まる経緯は、AI開発の急拡大に伴うGPUレンタル価格の乱高下と、価格情報の不透明さにあるようです。同じ量のGPU容量を調達する企業同士でも、相対交渉によって支払う価格に大きな差が生じているようで、企業側にはこのコスト変動を管理する手段がほとんど存在しなかったもようです。
そういった背景から、先物市場によって公開の参照価格が生まれれば業界全体の調達コストが下がる可能性があるということのようです。ちなみに、B200のレンタル価格の推移は以下のようになっていました。

出所:https://index.ornn.com/compute
シリコンデータが提供するものではなく第三者のデータではありますが、価格の変動はかなり大きいことが分かります。上記サイトでは無料でみられるのは過去3カ月まで。長期のチャートはシリコンデータも含めて有料になるようです。
期待とリスク
先物取引を利用することでGPU調達コストの価格変動リスクをヘッジできるようになります。あらかじめ先物を買っておけば、レンタル価格が高くなったところで契約したとしても先物の値上がりでペイできるといったイメージです。価格が下がると見込めば先物をショート(売り建て)することでリスクをヘッジすることもできます。先物を市場価格とみることができるので、契約価格に関する透明性が増す期待も高まります。
もちろん歓迎の一方で懸念を示す声もあり、計算力は商品であるためのあらゆる基準を満たしていないという指摘もあります。「計算力の先物取引」と最初に聞いたときに疑問を持った人もいるのではないでしょうか。「レンタル価格」が根拠にはありますが、違和感は存在します。
新しい試みであるため、先物取引の開始によってより良い方向に進むかどうかは今後次第です。投機的な取引によって先物価格が乱高下すれば原資産のレンタル価格にも影響が出るかもしれません。もしそうなってしまうと株式市場にも大きな影響が考えられるため、今後注目しておきたいトピックの一つと言えるでしょう。



