「ジョンソンエンドジョンソンの株価が上がってる理由は何?」
「配当を60年以上も増やし続けているって本当?」
「今から買うのは、さすがに高値づかみになるんじゃないかな…」
ジョンソン・エンド・ジョンソン(ティッカー:JNJ)は、医薬品と医療機器を手がける世界最大級のヘルスケア企業です。
日本では絆創膏やコンタクトレンズの会社として知られていますが、収益の柱はまったく別の事業にあります。
株価は1年前の165ドル前後から256ドル台まで上昇し、上昇率はおよそ5割に達しました。
なぜここまで買われたのか、そして今から投資する価値はあるのか。最新の決算データをもとに、上昇の理由と今後の見通しをわかりやすく解説します。
なお本記事では、1ドル160円で円換算した目安を併記します。

ジョンソン・エンド・ジョンソンってどんな会社?
ジョンソン・エンド・ジョンソンは1886年に創業した、140年の歴史を持つアメリカのヘルスケア企業です。
事業は大きく2つに分かれています。1つが医薬品を手がけるイノベーティブメディスン部門でです。癌・免疫疾患・脳神経の領域に強みを持ちます。もう1つが医療機器を手がけるメドテック部門で、手術器具や心臓カテーテル、コンタクトレンズなどを扱っています。
ここで押さえておきたいのは、かつての主力だった日用品事業がすでに切り離されているという点です。バンドエイドやリステリンといった消費者向け製品は、2023年にケンビューという別会社として分離されました。
つまり現在のジョンソン・エンド・ジョンソンは、利益率の高い医薬品と医療機器に絞り込まれた企業になっています。この変化が、株価を読み解く前提になります。
ジョンソン・エンド・ジョンソン株価の動きを振り返る

参照:Trading View
直近1年の動きを追うと、2025年8月には165ドル前後だった株価が、秋にかけて190ドル台まで水準を切り上げました。
年末には210ドル前後に乗せ、2026年に入ってからも上昇が続き、3月には250ドル台をつけています。
その後、5月にかけて220ドル前後まで押す場面もありました。しかし6月から再び上昇に転じ、7月には一時275ドル前後まで買われています。
7月31日の終値は256.35ドル、円換算するとおよそ4万1,000円で1年前と比べるとおよそ5割の上昇になります。
医薬品や医療機器はディフェンシブ銘柄と呼ばれ、景気に左右されにくい代わりに値動きも穏やかとされてきました。その銘柄が1年で5割上がるのは、決して普通のことではありません。
何が起きたのかについて、次章で詳しくみていきます。
ジョンソン・エンド・ジョンソンの株価が上がった3つの理由
【理由①】通期見通しを引き上げ初の売上1,000億ドルが見えた
最大の理由は2026年7月15日に発表された第2四半期決算で、四半期の売上高は253億1,000万ドル、円換算でおよそ4兆円となり、前年同期から6.6%増えました。
この結果を受けて、会社は通期の見通しを引き上げています。
売上高の見通しは4月時点の1,008億ドルから1,011億ドルへ、調整後EPS(1株あたり利益)は11.55ドルから11.68ドルへ0.13ドル引き上げられました。
同社のホアキン・ドゥアト会長兼CEOは決算リリースで、四半期売上が250億ドルを超えたことに触れ「140年の歴史で初めて年間売上1,000億ドルを超える目標に向かって順調に進んでいる」と述べています。
1,000億ドルは円換算でおよそ16兆円で、創業以来一度も届かなかった水準です。今期そこに到達する見込みが立ったことが、大きな買い材料として受け止められました。
【理由②】特許切れの逆風を新薬が上回った
2つ目は、市場が心配していたリスクを新薬の売上が打ち消したことです。
同社の主力薬だったステラーラは特許による独占期間が終わって後発品との競争にさらされており、売上が大きく減ることで会社全体の成長が止まるのではないかと懸念されていました。
ところが第2四半期の決算リリースにおいて、イノベーティブメディスン部門の売上は為替の影響を除いて6.8%伸びたのですが、ステラーラだけで約7.6ポイントも成長率を押し下げていたというのです。
言い換えると、ステラーラの落ち込みがなければ14%を超える成長だった計算になり、それだけの逆風を受けながらなお7%近く伸びたことになります。
伸びを支えたのは、癌領域のダーザレックスやカービクティ、免疫領域のトレムフィア、脳神経領域のスプラバートやキャプリタといった薬です。
1つの薬に頼らない生産体制ができていることが、数字で示された形になります。
【理由③】64年連続増配という配当の安定感
3つ目は株主還元の実績です。同社は2026年4月14日、四半期配当を1株1.30ドルから1.34ドルへ3.1%引き上げると発表し、増配は64年連続となりました。
年間では5.36ドルとなり、円換算でおよそ860円になります。
64年間というのは、オイルショックもリーマンショックもコロナ禍も挟んだ期間です。その間ずっと配当を増やし続けてきた企業は、米国でも限られます。
金利が下がる局面では、安定した配当を出す銘柄に資金が向かいやすくなります。上半期のフリーキャッシュフローも約87億ドルと前年の62億1,400万ドルから大きく増えており、配当を支える現金の裏づけも厚くなっています。

ジョンソン・エンド・ジョンソンの今後と注意点
ここまで良い材料が続きましたが、注意点もあります。
まず株価の水準です。執筆時点の256.35ドルを会社予想の調整後EPS11.68ドルで割ると、PER(株価収益率=株価が1株あたり利益の何倍かを示す指標)は約21.9倍になります。
配当利回りは約2.09%です。ディフェンシブ銘柄としては、すでに安いとは言いにくい水準まで買われています。
次に特許切れの問題です。ステラーラの影響は今回こそ吸収できましたが、医薬品会社にとって特許切れは繰り返し訪れる構造的な逆風であり、次に主力薬の独占期間が終わるとき、同じように新薬で埋められる保証はありません。
さらに薬価をめぐる規制や過去から続く訴訟のリスクもあります。ヘルスケアは政治の影響を受けやすい分野であり、制度が変われば利益率が下がる可能性は残ります。
そして日本から投資する場合は、為替も判断材料になります。株価がドルで上がっても円高が進めば円建てのリターンは目減りするため、1ドル160円前後という現在の水準から円高に振れたときの影響は小さくありません。
まとめ:日本の個人投資家はどう向き合うべきか
ジョンソン・エンド・ジョンソンの株価が1年で5割上がった背景には、通期見通しの引き上げによって売上1,000億ドルが見えてきたこと、ステラーラの特許切れという7.6ポイント分の逆風を新薬が上回ったこと、そして64年連続増配という配当の安定感がありました。
日用品事業を切り離して医薬品と医療機器に絞った戦略が、数字となって表れてきた1年でもありました。
一方で、PERは約22倍、配当利回りは約2%と、かつてのような割安さは薄れています。特許切れは今後も繰り返し訪れますし、薬価規制や訴訟のリスクも消えたわけではありません。
次の決算で新薬の伸びが続いているかを確認しながら、下げた局面で少しずつ拾っていく。そういう付き合い方が合う銘柄といえるでしょう。



