知っておきたいIPOのキホン~吸収金額とロックアップ~

IPO(新規公開)は、新しく証券取引所に上場する会社が、株式(新規公開株式)を投資家に販売することをいいます。今回はIPOのキホンとして、吸収金額とロックアップについてみていきます。



吸収金額

吸収金額は、IPOにおいて市場から調達する資金の総額です。公開価格×公開株数で計算します。

2022年のIPOで吸収金額が大きかった会社は以下となります。



逆に吸収金額が小さかった会社(地方市場上場および12月15日時点で公開価格の決定していない会社は除く)は以下となります。



吸収金額が大きいということは、募集や売り出しにより株式を取得する人が多いといえます。買いたい人が多くても、売りたい人も多いことから、需給は緩みやすくなります。一方、一定の吸収規模があると機関投資家の参戦が期待できます。

吸収金額が小さいということは、募集や売り出しにより株式を取得する人が少ないといえます。買いたい人が多く、売りたい人は少ないことから、需給はひっ迫することになります。吸収金額が小さいIPOは、初値が数倍になることも多くあります。一方、機関投資家の参戦が期待できないこともあり、上場後の値動きが荒くなる傾向があります。



ロックアップ

ロックアップは、上場前から株式や新株予約権を保有する株主などについて、上場後一定期間、株式を売却できなくする制度です。売却できない期間をロックアップ期間といいます。

ロックアップには、主幹事証券会社と株主などの間で任意で確約する「任意ロックアップ」と、取引所の規則により定められた「制度ロックアップ」があります。

既存株主など全員にロックアップがかかっていれば、上場時に既存株主から売りが出ることはありません。つまり需給がタイトになりやすいといえます。

ロックアップがかかっていなければ、上場時に既存株主から売りに注意しなければなりません。吸収金額が小さくても、既存株主から売りが多ければ、需給が緩む可能性があります。



ロックアップ期間と解除条項

ロックアップ期間は90日や180日となっています。既存株主などはこの期間は売却できません。注意したいのがロックアップの解除条項が付いている場合です。

ロックアップの対象となっていても、「その売却価格が募集における発行価格または売出しにおける売出価格1.5倍以上であって、主幹事会社を通して行う東京証券取引所での売却などは除く」などのロックアップの解除条項が付いている場合があります。


例えば、公開価格が1000円であれば、その1.5倍となる1500円以上で売却する場合は、ロックアップ解除となり、既存株主は売却できます。

ベンチャーキャピタルなどには、このロックアップの解除条項が付されているケースが多いです。ロックアップ解除となる株数が多い場合は、公開価格の1.5倍で一気に需給が緩むことになりますので、その水準で初値が決定しやすくなります。

また、ロックアップ解除が警戒され、1.5倍の手前で初値が決定することもよくあります。


ロックアップについては有価証券届出書をみれば誰でも確認することができます。EDINETの書類検索で、その他の書類種別にチェックし、社名を入力して検索してください。



「任意ロックアップ」は、有価証券届出書の「第一部証券情報」の「第2売出要項」の最後、「募集又は売出しに関する特別記載事項」の「ロックアップについて」に記載されています。

「制度ロックアップ」は、有価証券届出書の第四部株式公開情報の「第2 第三者割当等の概況」の「1 第三者割当等による株式等の発行の内容」の表の「保有期間等に関する確約」で該当するものを探すことになります。



最後に

事業内容や業績はもちろん重要ですが、初値形成においては需給が大きな影響を与えます。吸収金額とロックアップは需給の基本情報といえますので、必ずチェックできるようにしてください。


日本株情報部長

河賀 宏明

証券会社、事業会社におけるIR担当・経営情報担当、FPや証券アナリスト講師などを経て2016年に入社。 金融全般に精通。証券アナリスト資格保有。 「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別株を中心としたニュース配信を担当。 メディア掲載&出演歴 株主手帳、日経CNBC「朝エクスプレス」、日経マネー

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