最優遇貸出金利
中国人民銀行(中央銀行)は国内経済の安定のため様々な金融政策パッケージを用意しています。このうち、最優遇貸出金利(LPR、ローンプライムレート)を、事実上の政策金利と位置づけています。
LPRは市中銀行が市場の資金需給などに基づいて優良顧客向けに提示する貸出金利を指します。期間1年が企業向け運転資金の融資などに、同5年超は住宅ローン金利にそれぞれ影響します。人民銀は2019年8月以降、LPRを毎月公表しています。この数値を参考に市中銀行は金利を設定します。
人民銀行はLPRの公表に先立ち、市中銀行向けに1年間の短期資金を融通する場合の金利も毎月公表します。中期貸出ファシリティ(MLF)と呼ばれる仕組みで、MLFの金利はLPRを計算するベースとなります。MLFの金利が下がると、市場ではLPRの引き下げ観測が強まります。またMLFの金利が据え置きのままLPRが下がると、市場に「サプライズ緩和」との受け止めが広がることもあります。
人民銀、7月は2カ月連続でLPRを据え置き
人民銀は市場予想通りに7月にLPR1年物を3.0%、5年物 を3.5%に据え置くことを決定しました。据え置きは2カ月連続となります。
中国国家統計局が今月発表した第2四半期の国内総生産(GDP)は前年同期比5.2%増加し、市場予想の5.1%増を小幅に上回りました。景気の底堅さが示されたことを受け、追加刺激策の緊急性は事実上低下したが、根強い内需の弱さを踏まえると年内に幾らかの金融緩和が妥当との見方が多いです。年内に0.2%の追加利下げに踏み切る可能性はあるが、経済が直面しているボトルネックを考慮すると、より積極的な利下げの余地は限られています。
中国の金融政策
中国は金融政策手段が多数存在しています。先進国では短期金利を一つだけ選択して政策金利とし、それを公開市場操作によって正確にコントロールして中長期の金利は市場で形成されます。一方、人民銀は公開市場におけるリバースレポ、中期貸出しファシリティ(MLF)、各種再貸出など複数の政策手段を有し、それぞれの期間や金利水準が異なり相互の関係が複雑です。よって、例えば他の政策金利が低下する中で住宅ローン金利が引き上げられるなど、金融政策の全体的な方向性がわかりにくい複雑な状況が生じる場合があります。
ただ、改善はみられています。2024年7月、人民銀行は公開市場における7日物リバースレポ金利を政策金利とすることを明示しました。そのオペレーションの手法もそれまでは金利を入札する方法であったが、これ以降は人民銀行が金融政策上の必要に応じて金利を決定し、固定金利の数量入札方式に変更しました。
一般的に先進国では短期金利を一つだけ選んで政策金利とし、その水準をコントロールすることで金融政策を行っているが、中国の金融政策も今後はこのような先進国の一般的な手法と同様にシンプルにする方向で改善が進められると思われます。