「あの株はいまいくら?」では、話題になった銘柄の現状を確認します。今回はyutori(5892)をみていきます。なお、同社はZOZOの子会社でしたが上場により株主間契約が終了し、関連会社に変わっています。
同社は10~20代を主なターゲット層として、ストリートファッションのブランドを中心に展開。90年代ユースカルチャーのリバイバル「9090(ナインティナインティ)」を発端に独自ブランドを立ち上げているほか、M&A(合併・買収)によるブランド取得も行っています。
上場は2023年12月27日で、2023年の年内ラストのIPOということで注目されましたが、そもそもアパレル株のIPO人気があまり高くないことなどから、初値高騰を期待する声は多くありませんでした。
では、実際にどのような株価の動きになったのか、yutoriの上場からの株価の動きを確認します。なお、同社は2024年3月31日を基準日として1株を3株に分割しています。当コラムでは株価を遡及修正して表示します。
yutoriの株価推移(上場から2024年3月29日まで)
同社の初値は943円(分割訴求修正前:2849円)と公開価格840円(分割訴求修正前:2520円)を12%ほど上回りました。初値形成後に1000円をめざす動きはありましたが、手前で失速し、その後は軟調な展開となりました。
結局、上場初日の終値は866.3円(分割訴求修正前:2599円)と、公開価格は上回ったものの、初値は下回りました。
上場初日は買い先行後に伸び悩む展開となりましたが、その後は堅調に推移し、年内最終売買日となった27日に1000円の大台乗せとなりました。しかし、大台乗せで達成感が出たのか、年明けから下落。1月中旬に下げ止まりましたが、その後は1000円を下回る水準での推移が続きました。
大きくトレンドが変化したのは2月14日。前日の24.3期3Qの決算発表を受けてのものでした。同社の24.3期3Q累計の連結営業利益は3.0億円となり、併せて通期の連結営業利益予想を従来の3.4億円から3.7億円に上方修正しました。
オンライン事業を主とした販売強化に加え、実店舗の展開を拡大したことで、3Q累計期間の販売が好調に推移したことが要因としています。
好調な業績が確認できたことで株価は上昇トレンドとなり、3月25日に3260円まで上昇しました。なお、これが上場来高値となっています。
【yutoriの日足チャート(上場から2024年3月29日まで)】
yutoriの株価推移(2024年4月1日から9月5日まで)
3000円台の株価を維持できていたのは3月下旬の数日だけで、その後は急上昇の反動により株価は一気に下落。4月15日に1607円まで下落したところでようやく下げ止まりました。
その後2000円程度まで戻したところで、24.3期通期の決算発表を迎えます。同社は5月14日に24.3期通期の営業利益は3.8億円だったと発表。ほぼ会社予想通りの着地となりました。そして、25.3期通期の営業利益予想については5.0億円(前期比30.4%増)と大幅増益見込みとしています。
この発表を受けて株価は上昇基調となり、5月21日には2907円まで上昇しました。しかし、急上昇の反動でそこからの株価は下落トレンドとなります。8月5日には全体相場の急落もあり1082円まで下落、そこでようやく下げ止まりました。そして、株価がやや持ち直したところで、25.3期1Qの決算発表を迎えます。
同社が8月13日に発表した25.3期1Q(4-6月)の営業利益は3900万円となりました。なお、同社の決算説明会資料によれば、季節性の偏重により売り上げ・利益は、3Q、4Q、2Q、1Qの順の想定になっています。1Qが一番弱いことから進ちょくはいまいちですが、25.3期1Qの営業利益3900万円は前年同期(1900万円)の2倍です。この発表を受けて株価は再び騰勢を強め、8月20日に2000円の大台を回復、9月5日には2574円まで上昇しました。
【yutoriの日足チャート(2024年4月1日から9月5日まで)】
今後について
同社は初値が高騰しすぎなかったこともあってか、上場後の株価は堅調となっています。同社の株価推移ですが、「決算を受けて上昇トレンドに転換し、勢い余って大幅に上昇。その後は反動で大きく下げる」という特長が、24.3期3Qと24.3期通期の決算で出ています。25.3期1Qもそうなるとすれば、そろそろ下落トレンドに転じてもおかしくありません。
これまでと同様に決算発表後の上げ過ぎの反動で株価が下落するようであれば、11月中旬に予定されている25.3期上期決算後の上昇が期待されます。同社は潜在的な顧客層であるInstagramのフォロワー数は着実に増加しており、さらにオフライン店舗も順調に増加しています。今後の収益拡大に期待し、株価が下落したところを狙ってみるのも面白いと考えます。