あの株はいまいくら?

第44回 スキマバイトサービス運営の「タイミー」 初値超えで視界良好か

「あの株はいまいくら?」では、話題になった銘柄の現状を確認します。今回は2024年7月26日に東証グロースに上場したタイミー(215A)をみていきます。


同社の提供する「タイミー」は、有料職業紹介事業として「働きたい時間」と「働いてほしい時間」をマッチングするスキマバイトサービスです。

従来の求人媒体型サービスと異なり、「タイミー」でマッチングする業務はクライアント(物流業界や飲食・小売業界、ホテル・宿泊業界など)とワーカー(20代から40代までの若い世代が多い)の1日単位の直接雇用となっています。


クライアントは初期費用、掲載料無料で、「タイミー」に最短1時間の業務時間から求人情報を掲載することができます。クライアントが同社へ支払う手数料は、原則としてワーカーに支払う賃金報酬および交通費の合計額の30%程度であり、成果報酬型の料金体系を採用しています。


上場における同社の吸収資金は537.7億円と、トライアルホールディングスの446.8億円やアストロスケールホールディングスの238.5億円を上回り今年(2024年8月まで)のIPOで最大となりました。ただ、吸収資金は多いものの、海外の配分割合は公開株数の75%と海外勢の取得意欲の高さも目立っていました。


では、実際にどのような株価の動きになったのか、タイミーの上場からの株価の動きを確認します。



タイミーの株価推移(上場から2024年8月14日まで)

同社の初値は1850円と公開価格1450円を大きく上回りました。しかし、初値形成後はすぐに下落。1700円台前半でいったん下げ止まったものの、大引けにかけてさらに売られ、上場初日の終値は1650円となりました。なお、この上場初日の高値1855円が8月13日までの上場来高値となっていました。


上場後の株価は軟調な展開が続き、全体相場が急落した8月5日には公開価格1450円を大きく下回る1179円まで下落する場面があり、終値(1235円)でも公開価格を下回りました。しかし、ここから株価は上昇基調となり、8月14日の終値は1903円となり、上場後初めて終値が初値を上回りました。



【タイミーの日足チャート(上場から2024年8月14日まで)】



今後について

8月14日の終値1903円のPERは80.4倍です。同業と考えられる人材関連の会社のPERは20倍を下回っていることが多く、同社についてはかなりの成長が見込まれていることになります。


具体的な業績をみてみると、今期(24.10期)の売上高予想は275.6億円(前期比70.7%増)、営業利益予想は40.9億円(前期比2.1倍)と大幅な増収・増益の会社予想となっています。株価は、そろそろ来期業績を織り込み始めると考えられますが、この増益ペースが続くとすれば、上値余地は大きいと考えられます。


スキマバイトサービス「タイミー」の普及を背景に今後も成長が期待されることから、長期保有に適した銘柄であると考えます。ただ、営業利益率を維持できているかは決算ごとに確認するようにしてください。23.10期営業利益率(実績)は12.1%、24.10期営業利益率(会社計画)は14.8%となっています。20%超えは難しいかもしれませんが、10%を超える水準をしっかり維持できるかがポイントとなります。


同社は既に業界を代表する存在として広く認知されているものの、最近は人材派遣大手や異業種からの参入が相次でいます。価格競争によって「30%程度の手数料」が維持できなくなれば、営業利益率が10%を下回ってくる可能性があります。その場合、成長期待がはく落し株価が急落することが想定されますので、その点は留意すべきと考えます。


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日本株情報部長

河賀 宏明

証券会社、事業会社におけるIR担当・経営情報担当、FPや証券アナリスト講師などを経て2016年に入社。 金融全般に精通。証券アナリスト資格保有。 「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別株を中心としたニュース配信を担当。 メディア掲載&出演歴 株主手帳、日経CNBC「朝エクスプレス」、日経マネー

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