【株価動意の前兆を見抜く~三角もち合い③】

三角もち合いとは

三角もち合いとは、数週間か、あるいは数カ月かけて上げ下げを繰り返しながら、次第に変動幅を縮小していく価格推移を指します。「トライアングル」ともいわれます。


三角もち合いを形成する要件としては、少なくとも2つの高値と2つの安値が必要です。その高値同士を結んで右へ延長した抵抗線と、安値同士を結んで右へ延長した支持線とで形成されます。


抵抗線や支持線かを突き抜けた後の価格の変化幅は、三角もち合いに入る前までの価格の変化幅や、三角もち合い形成中の最高値と最安値の差を目安とすることがあります。


対称三角形「シンメトリカル・トライアングル」

三角もち合いには、大きく分けて3つあります。上値が一定で下値が切り上がる「上昇三角形」、下値が一定で上値が切り下がる「下降三角形」、下値が切り上がる一方で上値が切り下がる「対称三角形」です。今回は、以前に【もち合い相場の原理とは】でも取りあげた「対称三角形」について解説します。


対象三角形とは、図表1のように、もち合い中の節目となる(2)と(4)の高値を結んだ抵抗線が右下がりとなる一方、節目となる(1)と(3)と(5)の安値を結んだ支持線が右上がりとなります。もち合い期間中の高値と安値の中央値に収束していくようにみえる価格推移です。「シンメトリカル・トライアングル」とも呼ばれます。出来高はパターン形成の初期に多く、値動きが収束するにしたがって減少していく傾向があります。

これは売り方の勢力と買い方の勢力のバランスが拮抗している状態を表しています。両勢力のどちらが勝つか、その判断は難しいものの、もち合い後の動きはこの一時休止状態が起こる前のトレンドが今後の行方を左右する傾向が強いです。上昇トレンドの途中に起こった一時休止ならば上昇トレンドが続きやすい、逆に下降トレンドの途中に起こった一時休止ならば下降トレンドが継続しやすい傾向があります。


特徴を知るだけでも買い場を察知できる

一方、パターン形成前のトレンドと形成後のトレンドが逆転する場合もあります。しかし、「もち合い後の動きはこの一時休止状態が起こる前のトレンドが今後の行方を左右する傾向が強い」という特徴さえ知っていれば、上昇トレンドがいったん終了したあと、高値と安値が中央値に収束していく値動を追認しながら、次の上昇に移るタイミングを察知することができるかもしれません。


トヨタ自動車の例

図表2は、トヨタ自動車(7203)の週足チャートです。安値を結んだ支持線が右上がりとなる一方、高値を結んだ抵抗線が右下がりとなっています。このケースは、結果的に上昇トレンドの一時休止状態のパターンでしたが、上放れの直前は押し目が浅く、それ自体が株価上放れの動意の前兆となることがあります。高値を結んだ抵抗線を上抜けるともち合い上放れとなり、図のように新しい上昇局面に入る傾向があります。


もち合い放れ後の反動

図表3は、NTT(9432)の週足チャートです。安値を結んだ支持線が右上がりとなる一方、高値を結んだ抵抗線が右下がりとなっています。ただ、このケースは、もち合い上放れの直後にかつての抵抗線まで急速に押し目を入れていることがわかります。このように、上放れた直後に反動安が生じるケースも珍しくありません。この習性があることを知っていれば、もち合い上放れで買いそびれた後でも慌てず、押し目を待つ選択肢が増えるわけです。


重要なポイント

三角もち合いの重要なポイントは、パターン形成前のトレンドの方向が、パターン形成後のトレンドの方向を決定することが多いことを知っておくことです。また、上放れの直前の押し目は浅い、下放れの直前の戻りは鈍い。もち合い放れ後には短期的に逆の動きが発生することがある、などを知っておくことで、市場参入への準備をすることができるということです。


日本株情報部 チーフストラテジスト

東野 幸利

証券会社情報部、大手信託銀行トレーダー、大手銀行などの勤務を経て2006年に入社。 マーケット分析やデリバティブ市場のコンテンツを担当。世界主要指数や個別株を対象にテクニカル・ストラテジーの提案。 日経CNBC「夜エクスプレス」、日経チャンネル「マーケッツのツボ」、テレビ東京「モーニングサテライト」、ラジオ日経(金曜後場マーケットプレス)など 会社四季報プロ500、ダイヤモンド・ザイ、日経マネー、株主手帳など 金融機関向けコラム「相場一点喜怒哀楽」 IFTA国際検定テクニカルアナリスト(MFTA) 日本テクニカルアナリスト協会理事 CFP、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務) DCアドバイザー(確定拠出型年金教育・普及協会)

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