米1月人員削減予定数は前年比5倍増、今年リストラを行う予定の米企業は6割!

米1月人員削減予定数、単月では09年以来で最多


米1月チャレンジャー人員削減予定数は前年同月比で約5.4倍増の10万2,943人でした。8ヵ月連続の増加となります。前月比でも約2.4倍と3カ月連続で2倍を超える急増を迎えただけでなく、4カ月連続で増加。人員削減予定数自体は2020年9月以来、1月としてはリーマン・ショックが直撃してまもない2009年以来で最多を記録しました。


チャート:米1月人員削減予定数は2020年9月以来の高水準、1月としては2009年以来の高水準 


チャート:過去4年間と比較し、2020年を除き突出した増加に 


チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマス社のアンドリュー・チャレンジャー・シニア・バイス・プレジデントは、結果を受け「コロナ禍を経て、採用ブームが起こった反動が発生している」と指摘。また「企業は経済減速に備え始め、人員を削減し採用を凍結しつつある」との見解を寄せています。


人員削減が多かったセクターのランキングは、単月で以下の通り。アマゾンやマイクロソフト、アルファベットなど1月はテクノロジーの人員削減だけでなく、ゴールドマン・サックスやダウ、3Mなど他分野にも広がりました。22年12月の1位はテクノロジー、2位はサービス、3位は倉庫、4位はヘルスケア、5位は建設でした。


1位 テクノロジー 41,829人、前年同月は72人

2位 小売 13,000人、前年同月は391人

3位 金融 10,603人、前年同月は696人

4位 ヘルスケア 6,733人、前年同月は5,053人

5位 サービス 4,497人、前年同月は1,786人


州別動向は年初来で以下の通りで1、3、5位は人口別でのトップ5に入る州が並んだ。1位のカリフォルニア州が突出して多いのはIT関連の人員削減が響いたとみられる。4位のワシントン州も、テクノロジー関連の人員削減で急速に増加したもようだ。ミシガン州は自動車セクターのリストラ増加が背景と考えられる。22年12月は1位がカリフォルニア、2位がニューヨーク、3位がミシガン、4位がワシントン、5位がペンシルベニアだった。


1位 カリフォルニア州 10万3,433人 前年同期は4万5,114人

2位 ワシントン州 2万9,283人 前年同期は1万4,572人

3位 ニューヨーク州 1万9,554人 前年同期は4,102人

4位 ミシガン州 1万9,194人 前年同期は4万596人

5位 テキサス州 1万4,580人 前年同期は9,966人


リストラ実施の理由別ランキングは、1月分で以下の通り。22年12月は1位が市場動向、2位が理由不明、3位が閉鎖、4位が再編、5位が住宅市場の減速だった。


1位 市場・経済動向 8万6,526人

2位 理由不明 5,777人

3位 閉鎖 5,744人

4位 再編 2,031人

5位 コスト削減 1,992人


採用予定数は1月に前年同月比57.8%減の3万2,764人となり、2カ月連続で減少した。前月比では逆36.6%減と、減少に転じた。


チャート:採用予定者数、過去4年間と比較しても低い 


セクター別では、単月で以下の通り。どちらかと言えば、労働集約型の産業が並んだ。前月は1位が小売、2位がサービス、3位がテクノロジー、4位が食品、5位が化学だった。

1位 娯楽 1万5,859人

2位 エネルギー 2,884人

3位 非営利団体 1,900人

4位 建設 1,670人

5位 食品 1,475人


1月は全世界で219社、約7万人がリストラ


以上の通り米1月チャレンジャー人員削減予定数は労働市場の減速を表しました。人員削減の波がテクノロジー部門を超え、金融は製造業に波及していることも確認。パウエルFRB議長が1月31~2月1日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)後に言及するように、需要は明らかに減退しつつあります。


人員削減をめぐっては、驚愕の調査結果もございます。なんと、全世界で1月30日までに219社が6万8,000人のリストラを発表したのだとか。2022年全体で1,000社、15万4,336人だった結果を踏まえれば、金利上昇や需要の落ち込みに合わせ、企業は人員削減に踏み切らざるを得ない様子が見て取れます。


チャート:1月の主な人員削減発表、テクノロジーから製造業まで裾野広がる 


また、人材派遣大手レジメビルダーが2022年12月に米企業1,000社に対して実施した調査でも、人員削減を進める方向性を確認しました。今年「リストラを行う予定」と回答した企業は61%に及び、規模については57%が「従業員の30%以上」と回答。また、70%は「採用凍結」を決定する公算が大きいといいます。


その割に米新規失業保険申請件数が低水準なのは、高所得層のレイオフが多いためなのか。雇用統計が示すように複数の職を持つ者が増加するように個人事業主に転じている可能性もあり、労働参加率が低い状況で短期的に失業率の急伸は回避されそうです。


ストリート・インサイツ

金融記者やシンクタンクのアナリストとしての経験を生かし、政治経済を軸に米国動向をウォッチ。NHKや日経CNBCなどの TV 番組に出演歴があるほか、複数のメディアでコラムを執筆中。

ストリート・インサイツの別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております