個人投資家は出資したスタートアップ経営者がピンチの時何をすればいいか

2023年はそれまで順調に資金調達を続けてきたスタートアップ経営者にとって大きな壁が到来しています。金利引き上げの影響から世界的なリスクマネーの引き締めが発生し、資金調達の難易度が急上昇しています。現在の日本は企業を後押ししているとはいえ、10社に9社ともいえる成功率の低さにピンチに陥る経営者も多数います。


起業王国を目指す日本は失敗すると許されない国?

アメリカは、日本はと母数値もわからない印象論を述べるつもりはありませんが、それでもアメリカは失敗に寛容といわれています。対する日本は失敗のあと、別の領域で再起したという話はあまり聞きません。再挑戦の成功確率はそれほど変わらないとは思いますが、いわゆるスポットの当たり方に違いがあるのは明白です。


今回の挑戦では成功と言い難い経営者も、部隊を変えた次回以降は経験値も加味され、成功を手にする可能性があります。少子化による人口減少に悩む国の視点から見た人材活用術としても、一回失敗した経営者に再活躍の場を与えることは、続々と初挑戦の若者を探し続けるより賢明です。


狩猟民族出身の国と異なり、集団で製造をする国民性にスタンドプレー性のある起業家は似合わないという見立てもありますが、どうなのでしょうか。


スタートアップに出資した方は「その時」にどう振る舞うべきか

本メディアの投資家は上場株を対象とした単元株や有価証券が中心だと思いますが、2010年中盤からは個人投資家が上場前のスタートアップの株を購入するケースも増えてきました。スタートアップの株は上場株のように証券取引所では扱われていないため、経営者から直接購入する方法が主流です。2010年代後半にはクラウドファンディングサービスのなかでスタートアップを扱う事業も始まり、より市民権を得てきた印象があります。


とはいえ繰り返しになりますが、スタートアップの成功率は10社に9社です。定説の枠内での経営をしていれば良いわけではなく、いわゆる先行でリスクマネーを入れての急速な企業価値拡大をし、後から売上が追いついていくモデルとなります。もちろん想定(事業計画書)通りに売上が蓄積していく保障はどこにもないので、多くのスタートアップは途中で資金が付き、終焉を迎えます。


その時の振る舞い方で投資家の次の機会が変わる?

途中退場を迫られたスタートアップ経営者に対して、個人投資家の対応は様々です。最初から縁が無かったかのように没交渉になる方もいれば、ノルマ未達の営業マンのように「どうにかしろ」と詰めて1円でも戻して貰おうとする投資家もいます。もちろん、投資金回収に走ることは投資家として当然の権利ですし、何ら違法性のある動きではありません。


ただ起業家が再度旗を上げようとしたとき、そのような投資家としてのアクションと例えるべき動きは起業家コミュニティのなかで共有され、プラスの効果を生み出さない可能性が高いです。日本を代表する著名な個人投資家の方が失敗を許し再挑戦を期待するエピソードが多いのは、繰り返しの起業を支援するという側面とともに、このようなタトゥーに対する予防策を張っているのではないかと筆者には感じられます。


いずれにしても、今後の日本において起業を推進する動きが加速するのは間違いがないため、これらのセーフティネットをどのように準備していくかは大切な動きだと思います。少なくとも人口が減るなかで、失敗した人が疎外感を感じるような醸成づくりは避けなければなりません。


また何年後かに来るスタートアップブームに向けて準備をする

2010年代前半から継続しているスタートアップブームは、2022年後半から1つ陰りが見えているように思えます。こういう動きを何度か繰り返したうえで、日本における起業文化が根付いていくのでしょうか。実際にこれまで梃子でも動かなかった金融機関の個人保証についても、大きな動きが生まれました。


金融機関からの借入(デットファイナンス)には会社保証と個人保証があります。スタートアップが倒産した際、会社として借り入れた借入金は代表取締役(連帯保証人)に引き継がれ、個人として返済が継続します。当然ながら個人レベルで法人規模のデットを返済できる可能性は低いので、法人倒産と同時に個人も自己破産を選択します。


自己破産によってクレジットカードが一定期間作れなくなるといわれているほか(信販会社によって異なります)、インターネット上で自己破産した方の名前と住所を晒すメディアもあり、健全な精神とは思えません。こういう嘲笑する文化を無くしていくことが、日本が起業立国となるうえでの不可欠な要素といえるでしょう。ただいまの減退局面を見て、強く意識します。


独立型ファイナンシャルプランナー

工藤 崇

株式会社FP-MYS 代表取締役 1982年北海道生まれ。相続×Fintechサービス「レタプラ」開発・運営。2022年夏より金融教育のプロダクト提供。上場企業の多数の執筆・セミナー講師の実績を有する独立型ファイナンシャルプランナー(FP)。

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