家計のバランスシートを作ってみよう

3月末は、多くの企業で決算月となっています。個人の家計の場合は、所得税の計算期間が1月から12月なので、年末に締めるご家庭も多いと思います。または、学校や会社の年度に合わせたほうが集計しやすいという方もいらっしゃるでしょうね。


みなさんは、保有資産をどのように管理しているでしょうか? 企業の決算のように、バランスシートを作ってみませんか? 昨年の12月末時点でも良いですし、これから準備をして3月末でも良いと思います。


家計の資産を「見える化」する


家計のバランスシートを作る目的は、保有する金融資産や価値のある資産、ローンなどを一覧にして、把握できるようにするためです。「どこにいくら預けているかわからない」という状態から抜け出しましょう。


企業会計の「貸借対照表」と同じルールで、家計の資産を一覧表にしたものが【表1】です。



左側の「資産」は、換金しやすい順に上から並んでいます。流動資産は、いつでもすぐに引き出せるお金。固定資産は換金しにくい資産や長期間保有する資産です。投資信託や株式は時価で記載、終身保険は現在解約した場合の金額、iDeCo(個人型確定拠出年金)も時価です。自家用車や自宅の価値もおおよその相場を調べて記入します。


右側の上部は「負債」で、すぐに返済するものから順に並んでいます。現在のローン残債を調べて記入し、負債を合計しておきます。


右側の下部は、「純資産」。左の「資産合計」から右上部の「負債合計」を引いた金額を記入します。「純資産」はその名の通り、ローンを差し引いた家計の資産額。自己資本です。住宅ローンを借りたばかりの家計はマイナスになるかもしれません。「負債合計」と「純資産」を足し合わせると、左の「資産合計」と同じ金額になります。


一覧表を作ると、保有資産が一目瞭然。いざという時に、どこからお金を用意したら良いか判断しやすくなります。今後、どのぐらいお金を使えるのかの目途も立ちます。


家計の体力をチェック


家計のバランスシートを作成したら、株式の投資判断のようにチェックをしましょう。


ローンがいくら残っているか、もし全額一度に返済したら手元に資金が残るのか・残らないのか、自宅の価値と住宅ローン残債の差はどの程度か、などが確認できます。


【表1】では「負債比率」と「自己資本比率」を算出しています。負債比率は、「純資産」に対する「負債」の割合。「自己資本比率」は資産全体(「資産合計」=「負債および純資産合計」)のうちの「純資産」の割合です。


住宅ローンを繰り上げ返済すると


次は、これを応用しましょう。【表1】の「A銀行定期預金」が満期になり、住宅ローンの繰り上げ返済に500万円を充てたとすると、バランスシートは【表2】のように変わります。説明をわかりやすくする都合上、他の資産に出入りはなく、時価も変動していないこととします。



A銀行の定期預金がゼロになり、住宅ローンが500万円減って800万円になります。すると負債合計も500万円減ります。「資産合計」「負債および純資産合計」も500万円ずつ減ります。「純資産」の2,860万円は変わりません。


これによって「負債比率」は49.0%から31.5%に減り、「自己資本比率」は67.1%から76.1%へと高くなります。家計の体質が改善したことがわかります。


その後、働いて預金が増えると


その後、頑張って働いた結果、A銀行の普通預金の残高が50万円から250万円へと、200万円増えたとしましょう【表3】。



すると「資産合計」が200万円増え、純資産も200万円増えます。「負債比率」は31.5%から29.4%に減り、「自己資本比率」は76.1%から77.3%に向上します。本来なら他の資産やローン残高が変化しているはずですが、前回同様に同額のままで、説明をわかりやすくさせています。


このように、定期的にバランスシートを作ると、前回との違いがはっきりします。貯蓄のモチベーションが上がると思います。また、投資信託や株式などは値動きするので、バランスシートを作成する都度、運用が好調かどうかをチェックできます。


では次に、A銀行の普通預金が増えたことですし、この後、200万円を再び住宅ローンの繰り上げ返済に充てたとしましょう。するとバランスシートは【表4】のようになります。



住宅ローンが200万円減り、その結果「負債」も減少。「負債比率」は29.4%から22.9%に向上します。「自己資本比率」も77.3%から81.4%へと高まります。家計が健全になっていると数字で実感できます。ローン返済のモチベーションが上がるので、早期返済を目指している人にとって、有効なツールといえるでしょう。


バランスシートは、資産運用の配分を見る上でも役立ちます。よく「投資はいくら(または何割)までやっていいのですか?」などと聞かれます。投資資金の適切な金額や割合は、人それぞれ違います。バランスシートを作成して、ご自身がしっくりくる資産配分を考えてみましょう。


この機会にぜひバランスシートを作成して、家計管理に役立ててください。


ファイナンシャル・プランナー

石原 敬子

ライフプラン→マネープラン研究所 代表 ファイナンシャル・プランナー/CFP®認定者。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。終活アドバイザー® 大学卒業後、証券会社に約13年勤務後、2003年にファイナンシャル・プランナーの個人事務所を開業。大学で専攻した心理学と開業後に学んだコーチングを駆使した対話が強み。個人相談、マネー座談会のコーディネイター、行動を起こさせるセミナーの講師、金融関連の執筆を行う。近著は「世界一わかりやすい 図解 金融用語」(秀和システム)。

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