日経平均入れ替えの影響について解説 入れ替え時に2000億円の売り需要発生か

サプライズなしの入れ替え


日本経済新聞社は3月3日、日経平均株価の定期入れ替えについて発表しました。


新たに採用されたのは、オリエンタルランド、ルネサスエレクトロニクス、日本航空の3銘柄となりました。一方、除外されたのは東洋紡、日本軽金属ホールディングス、東邦亜鉛の3銘柄です。


日経平均入れ替え銘柄


これらの銘柄は、各証券会社が事前に予想していた内容とほぼ一致しており、サプライズはありませんでした。しいていえば、採用銘柄にはレーザーテック、除外銘柄には日本板硝子なども候補に挙がっていましたが、本命視はされていなかったため、基本的には予想通りの結果だったと言えます。


一般的には日経平均に採用されると、それを好感し株価は上昇する傾向があり、除外されれば嫌気されて売られる傾向にあります。しかし、前述したように各証券会社による事前予想が広く周知されるようにもなっており、素直にそのまま反応しないケースも増えてきています。


今回の入れ替えでは、採用銘柄ではルネサスエレクトロニクス、日本航空が発表の翌営業日となった3月7日に上昇した一方、ディズニーランドやシーなどのディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドについては、売りが優勢となりました。これは事前に日経平均への採用期待から上昇していた反動から、材料出尽くし的に売られた面もあったように感じます。


また、オリエンタルランドについては、少し専門的な話になりますが、3月末を基準日に予定されている株式分割の影響もあったようです。日経平均に採用された場合、日経平均に連動して資産を買い入れるパッシブファンドによる買いが期待できるわけですが、オリエンタルランドは足もと株価は2万円を超える値がさ株です。パッシブファンドが銘柄を組み入れる際には、株価換算係数をもとに株数を基準にしますので、値がさ株ほど買い入れ額も大きくなると期待されます。


ですが、同社の組み入れにおいては、1株を5株に分割する株式分割後の株価水準を考慮して株価換算係数などが決定されたため、期待されたほどの買い入れ額にはならない、と指摘する声もありました。そうした面も同日の売りにつながった可能性はあるでしょう。


一方、除外となる東洋紡、日本軽金属ホールディングス、東邦亜鉛については、発表翌営業日である7日は買いが優勢となりました。こちらは事前の予想から先回りして売りを入れていた投資家の買い戻しから、株価が上昇したものとみられます。


日経平均全体では2000億円超の売り需要が発生か


さきほどオリエンタルランドの株価の反応について説明する際、株価換算係数について触れました。これは各銘柄ごとの売買インパクトだけでなく、日経平均入れ替え時に実施されるリバランスについても影響が生じることになります。


パッシブファンドは日経平均の入れ替えに伴い、前営業日となる3月31日の大引けに新たに採用されるオリエンタルランド、ルネサスエレクトロニクス、日本航空の3銘柄を買い入れ、除外される東洋紡、日本軽金属ホールディングス、東邦亜鉛を売却すると予想されます。


しかし、東洋紡、日本軽金属ホールディングス、東邦亜鉛の株価換算係数は0.1となっており、これらの銘柄を売却して得られる資金は大きくはありません。一方で買い入れる3銘柄の株価換算係数は1となっており、買い入れにはたくさんの資金が必要となります。


この購入に必要な額と売却で得られる資金に差があるところが問題となります。大和証券の発行したレポートによると、パッシブファンドが新規採用の3銘柄を買い入れるのに必要な資金と除外3銘柄を売却して得られる資金との差額は約2200億円。この不足した資金は上記以外に保有している日経平均銘柄全体を売ることによってまかなうことになるので、リバランスの際には日経平均全体にとっては大きめの売り需要が発生することになります。


3月末は年度末でもあり、株価もいつもとは違う需給に左右される場面が増えるかもしれませんから、細心の注意を払いたいところです。


日本株情報部 アナリスト

斎藤 裕昭

経済誌、株式情報誌の記者を経て2019年に入社。 幅広い企業への取材経験をもとに、個別株を中心としたニュース配信を担当。

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