相次ぐレジャー施設の値上げ 前年から倍増へ

食品しかり、マンションしかり、インフレによる値上げの影響がさまざまな場面で語られることが今や当たり前になっていますが、その例にもれずテーマパークも入園料の値上げが続いています。


帝国データバンクが発表した2025年「主要レジャー施設(テーマパーク)」価格調査(調査対象はテーマパーク、水族館、動物園の計190施設)によると、2025年に入場料の値上げが判明した国内主要レジャー施設は71施設で、前年の37施設から1.9倍に増加しました。


特にテーマパークでは100施設中51施設が値上げし、調査開始以降で初めて半数を超えたとしています。そのなかでも最高額となったのはユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の「1デイ・スタジオ・パス(大人1名当たり)」で1万1900円でした。


テーマパーク以外に「水族館」「動物園」も、それぞれ前年から値上げとなった施設数が10施設と前年(6増、8増)を上回りました。


価格改定前後のチケット料金をみると、チケット種別や施設ジャンルによって傾向がやや分かれるかたちとなりました。最高額がUSJだったことは前述しましたが、それ以外にもテーマパーク型の上昇が目立っています。


2025年におけるレジャー施設全体の入場料の平均価格(大人1名)が1695円となり、前年平均(1626円)に比べ4.2%・69円上昇したのに対し、遊園地・テーマパークで多く導入されている、入場料とアトラクション乗り放題がセットとなった「フリーパス」の平均価格(最高額)は4846円5.4%・249円増と全体の平均を上回りました。


要因としてはダイナミックプライシング(変動料金制)の導入が進んでいることが挙げられます。ゴールデンウィークや夏休み期間などのハイシーズンにおけるフリーパスの料金は大人1名あたり5000円に迫っています。


一方で、動物園や水族館の入園券では、土日祝日料金はあるもののハイシーズンでも価格を据え置いている施設が多く、フリーパスの平均価格差は、2022年の2571円・2.7倍から、2025年には3151円・2.9倍に拡大。チケット種別間の料金格差が広がっているようです。


一般的な入場券の平均価格を見た場合、最も平均が高いのは「水族館」で2158円となりました。これは前年平均から91円・4.4%上昇しています。


入場券の平均で最も低いのは「動物園」で、2025年は1427円。最高値の水族館に比べて700円超安い結果となりました。動物園においても値上がりの傾向はみられており、2022年時点(1283円)に比べると1割近く上昇しているものの、テーマパークや水族館に比べると価格の伸びは緩やかだったとしています。


飼料代の高騰など物価高の影響で、動物園でも入場料を引き上げる動きが広がっているものの、運営事業者が市町村など自治体・公営企業のケースが多く、値上げ幅が少額にとどまっていると帝国データバンクでは分析しています。


主要レジャー施設のチケット料金値上げ動向(施設数)

帝国データバンク公表資料よりDZHFR作成


毎年のように値上げが続くチケット料金ですが、消費者はどこまでついていけるのかが懸念される面もあります。ですが、値上げが「モノ」から「サービス」へと波及する動きはますます広がっており、テーマパークに限らず、花火大会などコト消費にも「有料席」の導入が進んでいることから、こうした流れは今後も続くことが予想されます。


背景には、電気代や人件費をはじめとした運営コストの高騰ももちろんあると思いますが、より付加価値の高いプレミアム化(高額化)したサービスを提供することで、上限価格を引き上げる動きが特に影響しているのではないでしょうか。


前述したダイナミックプライシングの導入はもちろん、ファストパスのような「待ち時間の短縮」といったサービスを有料で提供することで、客単価を引き上げたいとする施設側の意図も見受けられます。


「若者のテーマパーク離れ」と言われるような、高額な価格設定に対する来園意欲の減退や、リピート率の低下といった点については、すでに一部テーマパークでは兆候が見られており、テーマパーク側としても課題として認識しているでしょう。ですが、運営コストの上昇もあり、値下げは難しいところ。今後はいかに価格と顧客の満足度を両立させるか。そのバランスをとることに各社とも悩まされることになりそうです。価格に見合う価値をいかに提供できるか、知恵の出しどころとなるでしょう。


日本株情報部 アナリスト

斎藤 裕昭

経済誌、株式情報誌の記者を経て2019年に入社。 幅広い企業への取材経験をもとに、個別株を中心としたニュース配信を担当。

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