インバウンド回復よりも全国旅行支援の影響大
観光庁が3月31日、2月分の宿泊旅行統計調査を発表しました。それによると2月の2023年2月の延べ宿泊者数は4039万人泊(前年同月比73.5%増)となり、1月の同38.9%増から大幅に伸長。新型コロナウイルスの影響が出る前の2019年同月比でみた場合でも、同7.2%減(1月は同7.5%減)までマイナス幅が縮小しています。
最近では、政府の水際対策の緩和などもあり、インバウンドの増加が話題になることも多いため、外国人旅行者による宿泊需要が寄与しているのでしょうか。
日本政府観光局(JNTO)の発表によれば、2月の訪日客数は147.5万人となり、新型コロナウイルス禍前の2019年2月比で同43%減の水準まで回復しています。一時はゼロに近い水準にまで落ち込んでいたこともありましたから、ずいぶん増えたものです。
街中を歩いていても、外国人旅行者の姿をよく見かけるようになったこともあり、肌感覚としては、インバウンド増が宿泊旅行者の増加につながっているというのは的外れな指摘ではなさそうに思えます。
しかし、実際には、宿泊者増はインバウンドではなく日本人宿泊者の増加が要因となっているようです。意外に思える内容ですが、もう少し細かく同調査の中身をみてみましょう。
延べ宿泊者数の推移(単位 万人)
観光庁資料よりDZHフィナンシャルリサーチ作成
宿泊旅行統計調査では、日本人宿泊者の数と外国人宿泊者の数をそれぞれ別に算出しています。それによると、同月の日本人延べ宿泊者数は3450万人泊となり、前月の数字を上回りました。
これは1月10日以降、運用が再開された全国旅行支援の後押しを受けててものだと推測されます。2022年11月の4230万人から、旅行支援が中断していた時期の12月に4090万人、同1月が同3340万人となっていましたから、影響は明らかです。
一方で、2月の外国人延べ宿泊者数は592万人泊となり、1月の606万人泊を下回る水準となりました。外国人延べ宿泊者数は、前述したように2022年10月11日の水際対策緩和以降、急回復していました。しかし、2023年入り後、回復のペースは鈍化しています。
要因は中国人観光客が回復していない点にあると思われます。中国人観光客はコロナ禍前、外国人観光客のおよそ3分の1を占めていましたが、足もとではほとんど日本に入国してきていません。日本政府観光局(JNTO)の発表でもそれは明らかで、インバウンド全体は回復傾向にあるなかで、訪日中国人数は2023年2月時点コロナ禍前の2019年同月比で95%減と以前非常に低い水準のままです。
これは日本政府の入国規制が影響していた面も大きいようです。この入国規制は、7日以内に中国に渡航歴のあるすべての人および中国からの直行便で入国する人に対して、ワクチン接種の有無にかかわらず、出国前検査での陰性証明書の提出を求めるというものです。
ただし、政府は4月3日、新型コロナウイルスが感染症法上の「5類」に移行する5月8日に現行の水際対策を終了すると発表しました。また、中国からの渡航者に対する新型コロナの水際対策については4月5日から緩和する方針です。
規制緩和により中国からの観光客を日本に呼び戻すことができれば、インバウンド需要も一層の回復を見込むことができるでしょう。宿泊旅行者についても、全国旅行支援が終了し、日本人宿泊者の数が落ち着いてくる一方で、今後は外国人宿泊者数の増加が回復をけん引する場面が訪れそうです。