花火大会にもインフレの影響 半数超で「有料席」値上げ

帝国データバンクは7月28日、全国の主な花火大会における有料観覧席の価格動向について発表しました。花火大会というと、横浜市のみなとみらい地区で8月4日に開かれた花火大会で、打ち上げ用の台船が燃える火災が起きたのをはじめ、3日には淡路市の夏祭りで花火事故が発生。連日の事故を受けて、花火師の高齢化など、さまざまな事故の背景を検証する動きも見られていますが、コスト上昇の影響も否めないと個人的には感じました。


日本でも防衛力の強化が盛んに叫ばれていますが、そのなかで火薬類の価格も高騰。花火大会の運営コストを直撃しています。加えて、警備や運営を行うスタッフの人件費増加、会場設営のための資材なども高騰しており、花火大会の存続そのものが危ぶまれている地域もあるようです。


そうした運営費を確保しようと、有料席を売り出す動きが広がっています。全国の花火大会のうち動員客数が10万人以上(2023年調査時点)の106大会を対象に帝国データバンクが調査したところ、2025年に有料席を導入している国内主要花火大会は83大会となりました。



主要花火大会(106大会)の有料席導入状況 (単位 大会)

帝国データバンク公表資料よりDZHFR作成


このうち、半数超の42大会が有料席の値上げを実施。一般席の平均価格は5227円で前年から1.8%増加。プレミアム席の平均価格は3万6193円で7.2%増加しており、特に高価格帯の席における値上げが目立つ結果となりました。なお、調査対象の中で最も高額な有料席は「2025 松江水郷祭湖上花火大会」(島根県松江市・8月2日~3日開催)で販売された「VIPテーブル席」(定員4名)の12万円とのことです。


有料席導入については、コロナによる自粛期間の明けた2023年ごろから、花火大会を再開する動きとともに、徐々に増えてきた印象です。そのなかでも2025年は前述したように一般席の値上げをできる限り抑え、プレミアム席を値上げする動きが鮮明となりました。


一般席とプレミアム席の平均価格差は6.92倍となり、調査開始以来で最大となったもようです。とはいえ、最も高額な有料席価格は2023年の30万円から2025年には前述した12万円にまで落ち着いており、3年間で半額以下となりました。


有料席の導入当初は話題性もあり、超高額な席の導入が複数見られましたが、有料席の普及とともに価格と体験価値のバランスに見合った水準に徐々に落ち着いてきているということなのでしょう。


一方で、有料席の普及に伴って、新たな問題も浮上しています。それはプレミアム席の高額転売問題です。日本三大花火大会の一つとも言われる新潟県の「長岡まつり大花火大会」では、通常価格4万8000円(定員8人)の席が、インターネットのチケット販売サイトで5倍以上の25万円で売られている例も確認されたとのことです。


また、有料化の拡大に伴い花火大会の開催地住民から「地元なのに見ることができない」といった不満の声も散見されるようになっており、花火大会の在り方そのものを見直す動きも続きそうです。


日本株情報部 アナリスト

斎藤 裕昭

経済誌、株式情報誌の記者を経て2019年に入社。 幅広い企業への取材経験をもとに、個別株を中心としたニュース配信を担当。

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