カップヌードルが海外で苦戦 韓国三養食品の「ブルダック麺」が躍進

日清食品ホールディングス<2897.T>が8月4日に決算を発表しました。26.3期1Q(4-6月)の連結営業利益(IFRS)は158.4億円(前年同期比27.5%減)となり、市場コンセンサスの200億円を大きく下回る結果となりました。


7月31日には東洋水産<2875.T>も26.3期1Q(4-6月)決算を発表しており、連結営業利益は183.0億円(前年同期比7.6%減)、市場コンセンサス175億円は上回ったもののこちらも減益となりました。


両社ともに国内での即席めん事業は増収となりましたが、海外売り上げが落ち込んでいる点が気になるところです。米国関税の影響などもあるのかと思いますが、実はそうした理由とは別の要因があるとの指摘が市場では見られています。


それは米国を中心にスーパーなどでの棚獲得競争で苦戦しているというものです。棚獲得競争とは何かということを補足しますと、読んで字のごとくスーパーなどで販売される棚に置いてもらう、商品を陳列してもらうための競争のことです。


小売店としては、売り場スペースが限られている以上、世の中にあるたくさんのメーカーの商品をすべて並べるわけにはいきません。そのため、より売れる商品、より注目の商品、よりお客さんを呼べる商品に絞ることになります。


メーカーはただ待っているだけでは棚に並べてはもらえませんから、各社が競争してこのスペースを取り合っているわけです。その競争において、日清食品や東洋水産といった会社の商品が負け、棚においてもらえない、目立つ場所から追いやられるなどの動きが販売機会の減少につながっている、というのが前述した指摘につながっています。


かわりに伸びているのが韓国三養食品の「ブルダック炒め麺」です。日本でも発売されているのでご存じの方もいるでしょう。韓国のインスタント麺といえば少し前は農心の「辛ラーメン」だったと思いますが、勢いではブルダック炒め麺も負けていません。





三養食品の海外売り上げは猛烈な勢いで伸びており、全体の約8割を占めると言われています。それを牽引しているのが米国での売り上げ増です。好調な業績を背景に三養食品の時価総額は2025年6月末に10兆ウォンを突破。同7月末時点では11兆ウォンに迫る勢いです。2024年初には1兆ウォンほどでしたから、わずか1年半のあいだにテンバガーとなったことになります。


ちなみに農心の時価総額がおよそ2兆4000億ウォンほどですから、三養食品が時価総額では大幅に上回ったことになります。同じくらいの規模だと現代(ヒョンデ)グロービス、三星(サムスン)電気などが挙げられます。三養食品では、工場の生産能力拡充により、旺盛な海外市場需要に本格的に応える体制を整えたとしており、2025年後半にはさらに勢いを増すかもしれません。


これほど好調なライバルがいるわけですから、日系2社が押されるのも無理はないというということでしょうか。しかし、これまで業績を牽引してきた海外市場での成長に黄色信号が灯ったとすれば、今後の業績への影響は一時的なものでは済まない可能性もありそうです。2Q以降の動向をこれまでに以上に注視して見守りたいと思います。


日本株情報部 アナリスト

斎藤 裕昭

経済誌、株式情報誌の記者を経て2019年に入社。 幅広い企業への取材経験をもとに、個別株を中心としたニュース配信を担当。

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