マーケットニュースなどで、「金利が上昇(債券価格は下落)」というフレーズを目にする機会が増えました。主要国の政策金利が注目されています。金利と債券価格の関係について解説しましょう。
債券とは? 基本をおさらい
債券は、投資家などから資金を借りた者が発行する証書です。国が発行するのは「国債」、会社が事業資金を集めるのは「社債」です。
投資家が「債券を買う」と、償還日まで国や会社に「お金を貸す」状態になります。償還日までの間、投資家は定期的に利子を受け取れます。この利子が投資利益になります。あらかじめ「年利率●%」と利子の割合が決まっている固定金利の債券と、市場金利の変動に応じて、利払いの都度、利率を見直す変動金利の債券があります。
マーケットニュースで「金利上昇(債券価格は下落)」と伝えられているのは、固定金利の国債です。
魅力的な債券は、価値が高い
債券価格は、債券の価値です。価値とは、魅力を数字で表したもの。つまり、投資対象として魅力的なら債券価格は高くなり、魅力が低下すれば価格は下がります。
では、債券にとっての魅力とは何でしょうか。
利率が高い債券は、魅力的です。また、償還時に額面金額が戻る確実性が高いほど、魅力的な債券といえます。高い投資収益と高い確実性の両方を持ち合わせていれば最高なのですが、そんなオイシイ投資話はあり得ません。
魅力的で多くの人が欲しがるものは値打ちが上がります。レアもののスニーカー。大谷選手のサインボール。新型コロナウィルスが広がり始めた頃のマスク。
債券も同じです。ただし、みんなが買いに来ると、利回りが下がってしまい、その魅力が薄れてしまうのが債券です。どういうことでしょうか。
債券投資の利益は2種類
その前に、債券投資の利益について簡単に説明しておきましょう。債券投資の利益は2種類あります。1つは利子。半年に1回、利子を受け取れる債券が主流です。
もう1つは、購入金額より高く債券を換金した場合の差益です。
債券は、償還まで持ち続けるだけでなく、発行から償還までの間に時価での売買ができます。既に発行されて流通している債券を買うことができるのです。反対に、自分が保有している債券を、償還日前に他の投資家に売ることも可能です。
原則として、債券は額面金額で償還されます。時価で買った債券を償還まで持ち、差額がプラスになれば「償還差益」といい、マイナスなら「償還差損」です。また、償還前でも自分の購入価額より高い債券価格で売れば、その差額が利益となります。
債券の利回りは、債券価格と表裏一体
利子と差損益。この2つを合わせた利益を、投資金額で割ると「利回り」になります。通常は、これを保有期間で割った「年利回り」で表示されます。
債券は、債券市場というマーケットで売買され、債券価格が決まります。これは株式市場で株価が決まるしくみと同じです。債券価格が上下すると、その債券の利回りは変動します。
ニュースなどで伝えられる、「利回りが上昇(債券価格は低下)」「利回りが下落(債券価格は上昇)」というのは、この変動を表現しています。
具体的な数字で見てみましょう
では、債券の価格と利回りの関係を具体的な数字で見てみましょう。
債券市場では、債券の売買を「価格」ではなく「利回り」で示しますが、ここではわかりやすくするため、「価格」を主にして説明します。
年利率2%の債券を、償還までの残存期間5年のタイミングで購入するとします。額面は100万円。①99万円で購入する場合と、②95万円で購入する場合を見ていきます【表1】。
償還までの5年間の受取利子は同額です。投資金額が違うため、①と②では償還差益が異なり、利益合計や最終利回りに差がついています。
99万円で購入した①は年利回りが2.22%、②は①より価格が安い95万円で購入し、年利回りは3.16%です。価格が高いと償還差益が小さくなり、価格が低いと償還差益が大きくなるためです。
なお、債券市場では、価格が額面以上になることもあります。上記の例で、5年ものの運用の市場環境が年1%程度になったとします。すると多くの人が「利回りの高いの債券、いいね。欲しいね」と思うでしょう。
年間2万円の利子が受け取れるなら、少しぐらい額面より高くても買いたい投資家が現れます。103万円で買って償還差損が3万円になっても、5年分の利子10万円が受け取れるなら、差し引きで利益合計は7万円です。
これを計算すると、【表2】のようになります。
額面以上で買っても年1.36%なら、市場金利1%より投資する価値はあると考えられます。
このように、債券はその時々の市場金利を念頭に置き、ほかに信用リスクなどとの見合いで利回りが変動しています。最近は、中央銀行の政策とのにらめっこで債券市場が動いています。債券の利回りと価格の関係が理解できていると、ニュースがより分かりやすくなるのではないでしょうか。