史上最速で利用者1億人に到達
2022年11月のChatGPT一般公開から約半年が過ぎました。対話型AIともいわれるChatGPTが、わずかな間にここまで世界中で話題になったのは、ありとあらゆるトピックについて、自然な言語でAIとのやり取りが可能である点にあると言えるでしょう。
単純に質問をして回答をえるだけでなく、シチュエーションにそった文章の作成や、既存の論文などの要約、プログラミングに世界中の言語の翻訳など、さまざまなことが可能で、逆にできないことを見つけるのが難しいほどです。回答の正確性などにはまだ課題が残りますが、非常に可能性を感じさせられますよね。
ChatGPTの一般公開によるインパクトはすさまじく、その後のグーグルの検索トレンドでは、わずかな間に急速に関心が高まったことがわかります。
UBSのレポートによれば、利用者数はわずか2カ月で1億人に達したといわれており、これは史上最速のペースだったようです。
また、ロイター通信では、ショート動画アプリ「TikTok」が同じく利用者数1億人に達するのに必要だった期間は9カ月、写真共有アプリ「インスタグラム」では2年半を要したと報じており、いかにChatGPTがすさまじい速度で広がったのかがわかります。
これほどまでに注目されたサービスですから、株式市場もその登場から約半年の間に、さまざまな影響を受けました。
まず、ChatGPTを開発した企業OpenAIに出資するマイクロソフト。同社の株価はChatGPTが一般公開された2022年11月のはじめには1株220ドル前後で推移していました。それが直近の2023年5月初旬には300ドル台にまで上昇。4割近く値上がりしていることになります。
米国だけでなく日本の株式市場にも影響がありました。先鞭をきったのは個人がコンテンツを投稿・販売するメディア「note」を運営するnote<5243.T>で、同社は20232月にChatGPTに使われている技術を活用した創作支援ツール「note AIアシスタント(β)」を開始すると発表。株価はその日にストップ高を付けるなど急騰し、一時は発表前の2倍超の水準まで上昇しました。
note日足チャート
同社以外にも、一時期はChatGPTを活用したサービスを開始すると発表するだけで、その企業の株価が急騰するといった事例が続出し、さまざまな企業から関連したリリースが開示されることになりました。
しかし、こうしたサービスがその企業の業績にどれほど貢献するかはいまだ未知数な部分が多く、株価も期待先行の面が否めません。前述したnote社も、直近の株価はピーク時の6割前後の水準まで調整しています。
ChatGPT関連の本命はクラウド
単にChatGPTに関連した企業に投資するというのは避けた方がいいのでしょうか。そんなことはありません。単にChatGPTに関連したサービスを提供しているというだけではない、今後高い成長が期待できる企業が日本にも存在します。
そのキーワードが「クラウド」です。ChatGPTは便利さと同時に個人情報の取り扱いや企業に持つ社外秘のデータなどがAIの学習に使われることによる情報漏洩リスクなどを懸念する声も小さくありません。実際にChatGPTを導入するといった企業だけでなく、禁止すると表明している企業もあります。
AIに情報を取得させるための条件など境界線を引いておくことが、利用には必須となってくるでしょう。そのために、今後はクラウドサービスが対話型AIを利用するためのインフラとなってくると予想しています。
マイクロソフトでは、クラウドサービスAzureがその対象になります。Azureを採用している企業では、同クラウド上でさまざまな情報をすでに取り扱っていますので、セキュリティの問題もクリアすることができます。
以上のような要因から、今後はAzureの導入支援を手がける企業などでは業績の伸びが期待できそうです。
具体的には、クラウドインテグレーター大手で、「Azure」の最上位パートナープログラム「Azure Expert MSP認定」を取得している日本ビジネスシステムズ<5036.T>などが例に挙げられるでしょう。
日本ビジネスシステムズ日足チャート
同社は2022年8月にスタンダード市場に上場。直近の株価は5月に発表した23.9期の業績予想について、利益の伸びが物足りないとされたことで売られる場面がありましたが、今後数年間の大きな流れのなかで、同社の業績は右肩上がりで成長していくことが期待されます。
また、2022年10月に上場したFIXER<5129.T>も注目です。同社もMicrosoft Azureに特化したクラウドインテグレーターで、クラウド環境で動作するシステム開発、クラウド環境の設計や運用・保守、監視サービスなどを手がけています。
足もとでは厚生労働省の新型コロナウイルス感染者情報管理・共有システム「HER-SYS(ハーシス)」関連の業務の方で注目されることが多く、むしろコロナ関連の業務が先細りとなることによる業績への影響が懸念されることもありましたが、それを上回る成長余地を秘めていると言えるでしょう。
FIXER日足チャート
直接的なリリースを出した会社の方がより注目されることが多いですが、将来的に業績に寄与してくるのはどういった分野なのか、という点も考慮して銘柄を物色すると、視野が広がってくるでしょう。次の注目銘柄はどの企業になるのか、探してみるのも面白いと思います。