iDeCo加入者約290万人、年間2割増ペース続く

国民年金基金連合会(国基連)から、2023年3月末のiDeCo(イデコ=個人型確定拠出年金)の加入者数が発表されました。2022年は改正もあり、年間2割以上の増加ペースは保ったものの、増加率はやや鈍化しています。


iDeCoの加入者は約290万人、約2割増


国基連の公表資料によると、2023年3月末時点のiDeCoの加入者は、2022年3月末比21.4%増の2,899,618万人。加入者区分による内訳は、【グラフ1】の通りです。



第1号加入者は、国民年金保険制度の第1号被保険者。自営業などの人です。第2号加入者は、民間企業の従業員や公務員など。第3号加入者は専業主婦(夫)などです。第4号加入者は、加入要件が見直されたことで新設された加入者区分です。


【グラフ1】を見ると、企業年金制度のない職場に勤めている人が加入者の約半数を占めています。iDeCoは、中小企業などの従業員の老後の生活を支える制度として、意識されているようです。


運用指図者は832,104人で5.5%増。運用指図者とは、掛金の拠出をせずに、以前の拠出分を運用している人です。リタイア年齢に達して拠出を終えた人や、国民年金の被保険者の資格を失った人などが該当します。


2022年4月1日から、老齢給付金の受取開始時期が75歳までに拡大されました。拠出を終えてから受け取り始めるまでの間、選択により、10年程度は年金資産を運用できます。今後も、高齢期の就業率の高まりとともに、運用指図者は増えることでしょう。


手続きせず、運用していない人は約118万人!


自動移管者は1,183,061人で9.2%増えました。自動移管者とは、企業型確定拠出年金の加入者でなくなってから半年以内に移換等の手続きをしなかった人です。企業型の資産が、国民年金基金連合会に自動的に移換されています。


手続きをして運用指図者になった人より、手続きをせず自動移管になっている人の方が多いのは残念です。iDeCoの認知度は上がっていても、まだ隅々まで浸透していないようです。または退職後の慌ただしさで、つい、手続きを忘れてしまったのでしょうか。


自動移管者の資産は、運用の指図ができずに現金で保管されています。それでも、管理手数料は毎月52円(税込)が引かれていきます。iDeCoや企業型に移す場合も手数料(税込1,100円)はかかりますが、その後の運用ができるので、iDeCoや再就職先の企業型確定拠出年金に移管することをお勧めします。


制度改正で会社員のiDeCo加入者が増加


次は、iDeCoの区分別に加入者数の推移を見てみましょう【グラフ2】。



iDeCoの加入者区分で、2022年度に最も増加率が高かったのは第3号加入者の24%増。次は第2号加入者で21.9%の増加です。そのうち特に増加したのは、他の企業年金制度がある会社の従業員で、39%増です。その背景には、制度の改正がありました。


2022年10月から、民間企業の従業員がiDeCoに加入しやすくなったのです。10月、11月、12月は、企業年金がある会社の従業員のiDeCo新規加入者数が、それぞれ前年同月に比べて3倍強に上りました。1月以降も高水準の増加数となっています。


また2022年4月には、iDeCoの加入要件が広がりました。それまでは企業型・個人型ともに、確定拠出年金に加入できるのは60歳未満の人でした。改正により、国民年金の第1号加入者(自営業者等)および第3号加入者(専業主婦(夫)等)は、国民年金に任意加入すれば、65歳未満までiDeCoに加入可能に。海外居住者も、20歳以上65歳未満であればiDeCoに加入できるようになりました。これらの人たちは、新たに設けられた「第4号加入者」に区分されます。


iDeCoの掛金平均は、自営業2.9万円、会社員は1.1~1.7万円


iDeCoに加入している人は、毎月どれだけ掛金を払っているのでしょうか。【表】は、2023年3月末時点の各加入者区分の掛金平均額です。



個人事業主やフリーランサー、企業型が導入されていない職場に勤めている人は、企業年金がある会社員に比べると、より自助努力が必要となります。


企業型は事業主が掛金を拠出すのに対し、iDeCoでは加入者自身が払います。iDeCoの掛金は月々5,000円以上1,000円単位。毎月ではなく、年1回以上の加入者自身が決めた月に、まとめて払うこともできます。また掛金額は、1年に1回、変更できます。状況に応じて、無理のない金額で老後の生活資金を準備できるようになっています。


iDeCoの運用資産は、60歳以降にならないと換金できません。そのため、現役時代に必要な生活資金は別に確保する必要があります。月々の掛金も、生活に支障がない、無理のない金額で拠出額を決めることが大切です。


【参考】

iDeCo公式サイト「業務状況


ファイナンシャル・プランナー

石原 敬子

ライフプラン→マネープラン研究所 代表 ファイナンシャル・プランナー/CFP®認定者。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。終活アドバイザー® 大学卒業後、証券会社に約13年勤務後、2003年にファイナンシャル・プランナーの個人事務所を開業。大学で専攻した心理学と開業後に学んだコーチングを駆使した対話が強み。個人相談、マネー座談会のコーディネイター、行動を起こさせるセミナーの講師、金融関連の執筆を行う。近著は「世界一わかりやすい 図解 金融用語」(秀和システム)。

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