【米国株かんたんナビ】生活必需品セクター(後編):ナショナルブランドの宝庫

S&P500は米国の主要産業を代表する500社で構成される株価指数です。構成銘柄の採用には時価総額や株式の流動性だけでなく業績も考慮されるため、優良銘柄が多いことも特徴の1つです。


構成銘柄は情報技術(IT)、ヘルスケア、金融、コミュニケーション・サービス、一般消費財、資本財、生活必需品、エネルギー、公益、不動産、素材の11セクターに分類され、それぞれセクター指数も算出されています。


11に分類されるセクターのうち、このコラムでは前回に続き生活必需品セクターをご紹介します。構成するのは37銘柄で、S&P500に占めるウエートは7.4%に達しています。


時価総額のベスト10はウォルマート(WMT)、プロクター&ギャンブル(PG)、コカ・コーラ(KO)、ペプシコ(PEP)、コストコ・ホールセール(COST)、フィリップ・モリス・インターナショナル(PM)、モンデリーズ・インターナショナル(MDLZ)、エスティローダー(EL)、アルトリア・グループ(MO)、ターゲット(TGT)となります。



前回は「エブリデー・ロープライス(毎日安い)」で知られる首位のウォルマートをご紹介しましたので、今回はプロクター&ギャンブル、コカ・コーラ、ペプシコ、コストコ・ホールセールの4銘柄を取り上げます。


プロクター&ギャンブル、日用品・トイレタリーの世界最大手

プロクター&ギャンブルは日用品・トイレタリーの世界最大手です。1837年にウイリアム・プロクター氏とジェームス・ギャンブル氏が立ち上げたビジネスが祖業で、創業者2人の名前が社名になっています。


約180の国・地域で事業を展開しており、英蘭系のユニリーバと世界市場でしのぎを削っています。世界展開するだけに国際イベントのスポンサーシップにも積極的で、代表的なものが五輪です。


五輪のスポンサーにもランクがありますが、プロクター&ギャンブルは世界中で14社にしか認められていない最上位のスポンサーです。国際オリンピック委員会(IOC)と契約した「ワールドワイドオリンピックパートナー」の1社なのです。


ただ、米国での事業の比率は高く、最大の顧客は生活必需品セクターで時価総額最大のウォルマートです。ウォルマートとその関連会社に対する販売が売上高の約15%を占めています(2022年6月期)。



事業分野別では衣料品&ホームケア部門が最大で、売上高に対する割合は34%です。洗濯洗剤の「アリエール」や消臭剤の「ファブリーズ」、キッチン洗剤の「ドーン」などが代表的なブランドです。


ベビー&ファミリーケア部門の売上比率は25%で、有名ブランドは紙おむつの「パンパース」や生理用品の「オールウェイズ」。美容部門は売上高に対する割合が18%に上り、シャンプーとコンディショナーの分野で「パンテーン」「リジョイス」といったブランドの知名度が高いようです。


ヘルスケア部門は売上比率が13%に達しており、歯ブラシと歯磨き粉の「オーラルB」に加え、のど飴やトローチの「ヴィックス」が主力ブランド。身だしなみ部門は売上比率が8%と主要5分野の中で最も低いですが、電気シェーバーの「ブラウン」のほか、カミソリやシェービングクリームの「ジレット」などブランドは強力です。


コカ・コーラ、五輪とサッカーW杯の最上位スポンサー

時価総額の3位はコカ・コーラです。世界最大級のソフトドリンクメーカーで、ボトリング会社にライセンスを供与するケースを含めれば、世界の200以上の国・地域で事業を展開しています。


コカ・コーラはプロクター&ギャンブルと同様に五輪の最上位のスポンサー「ワールドワイドオリンピックパートナー」の1社です。さらに国際サッカー連盟(FIFA)の最上位のスポンサー「FIFAパートナー(現在は7社です)」でもあるのです。


五輪とFIFAワールドカップでともに最上位のスポンサーになっているのは、世界中の企業の中でコカ・コーラとクレジットカードのビザ(V)だけです。広告費は莫大ですが、スポンサーとして露出する効果が高いのです。


コカ・コーラの全世界の飲料販売量は2022年にパートナーであるボトリング会社も含め、前年比4.5%増の約1857億リットルに達しました。炭酸飲料が全体の69%、「コカ・コーラ」が全体の46%を占めています。



飲料販売量に占める米国の比率は17%です。米国では炭酸飲料が61%と全世界に比べて低く、「コカ・コーラ」の割合は42%でした。


主力ブランド・商品には「コカ・コーラ」をはじめ、炭酸飲料の「スプライト」「ファンタ」、果実飲料の「ミニッツメイド」、ボトル水の「ダサニ」などがあります。また、日本発のブランドでは缶コーヒーの「ジョージア」、スポーツ飲料の「アクエリアス」、緑茶飲料の「綾鷹」などが海外でも一部の地域で販売されています。


ペプシコ、コカ・コーラの長年のライバル

時価総額の4位は飲料・食品大手で、やはり200以上の国・地域で事業を展開するペプシコです。コカ・コーラのライバルだけに製品の展開でも競い合っているようで、コーラでは「ペプシ・コーラ」対「コカ・コーラ」、レモンライム風味の炭酸飲料では「セブンアップ(米国外)」対「スプライト」、オレンジ風味の炭酸飲料では「ミリンダ」対「ファンタ」、

果汁飲料では「トロピカーナ」対「ミニッツメイド」などそれぞれの分野で競合する商品があります。


ペプシコはスナック菓子ブランドを傘下に持っており、売上比率が大きいというコカ・コーラにはない特徴があります。主なブランドはポテトチップスの「レイズ」、トルティーヤチップスの「ドリトス」、チーズ風味のスナック菓子の「チートス」などです。


北米のスナック菓子事業の売上高(2022年12月期)は232億9100万ドルと全体の約27%を占めています。売上高は北米の飲料事業の262億1300万ドルに届きませんが、営業利益は61億3500万ドルと飲料事業の54億2600万ドルを上回る稼ぎ頭です。



一方、株式市場でペプシコは安定的に成長する企業という位置づけで、コカ・コーラと共通しています。配当にも積極的でコカ・コーラの61年連続の増配には及びませんが、それでも50年連続と増配が半世紀に及んでいます。


コストコ・ホールセール、倉庫型の会員制スーパーを展開

時価総額の5位は会員制スーパーマーケットを展開するコストコ・ホールセールです。倉庫型の大型店舗を運営し、会員向けに製品を販売します。小売事業者向けにホールセール事業も展開しています。


米国に加え、カナダ、メキシコ、英国、スペイン、フランス、日本、韓国、中国、オーストラリアなどの海外にも進出しています。2022年8月末時点の店舗数は838店で、米国とプエルトリコが578店、カナダが107店、そのほかが153店です。



会員数は1億1890万人です。米国とカナダでは会員の更新率が93%、世界全体では90%に達しており、会員数は着実に増えています。


中国株情報部

島野 敬之

出版社を経て、アジアの経済・政治情報の配信会社に勤務。約10年にわたりアジア各国に駐在。 中国株二季報の編集のほか、個別銘柄のレポート執筆を担当する

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