日々是売買~トレードへの道

第95回「イベント満載の1週間 ドル円は上値重い展開」

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イベント満載の1週間 ドル円は上値重い展開

 

今週はイベント満載の1週間でしたが、ドル円は上値が重い展開となりました。週明け7月28日の海外市場では「参院選後の米系短期筋のポジション調整が終わり、大元の円ロングポジションの巻き戻しの動きが続いている」との声が聞かれ、買いが先行する展開。東京市場では連日、本邦実需勢の買いが観測されました。

 

30日には7月ADP全米雇用報告や4-6月期米国内総生産(GDP)速報値が発表され、予想を上回る結果に。また、米連邦準備理事会(FRB)は29-30日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で市場予想通り政策金利を4.25-4.50%で据え置くことを決めたと発表しました。声明では「純輸出の変動が引き続きデータに影響を及ぼしているものの、最近の指標は今年上期の経済活動の成長が緩やかになったことを示している」と指摘し、米経済に対する認識を下方修正しました。また、ボウマンFRB副議長とウォラーFRB理事が0.25%の利下げを主張し、決定に反対票を投じたことが明らかに。FOMC声明を受けてドル円は売られる場面もありました。

 

ただ、ドル売りでの反応は一時的でした。パウエルFRB議長はFOMC後の記者会見で「経済は堅調な状況にある」「インフレ率は目標をやや上回っている」「インフレリスクへの対応として、現在のスタンスは適切だと認識」「9月FOMCについては何も決定していない」などと発言。市場では「タカ派的」と受け止められ、米長期金利の上昇とともにドル買いが広がりました。この日取引終了間際には一時149.54円まで値を上げています。

 

翌31日には日銀金融政策決定会合が開催されました。植田和男日銀総裁は記者会見で「見通しが実現していくとすれば、引き続き政策金利を引き上げる」としながらも「インフレ率の上方修正だけで金融政策が左右されるものではない」「基調的な物価上昇率は2%に届いておらず、緩和的な金融政策を維持している」などと発言。「日銀は追加利上げを急いでいない」との見方が広がり、円売りが出やすい地合いとなりました。結局、FOMCと日銀でのドル高・円安の流れが週末まで続き、8月1日には一時150.92円と3月28日以来約4カ月ぶりの高値を更新しています。

 

*Trading Viewより 


しかしながら、同日のNY市場で発表された月に一度のビッグイベントである「米雇用統計」で全てがひっくり返される展開に。米労働省が発表した7月米雇用統計では非農業部門雇用者数が前月比7.3万人増と予想の10.4万人増を下回り、過去2カ月分が計25.8万人下方修正されました。米雇用市場に対する懸念が高まると、米長期金利の大幅低下とともにドル売りが加速。その後発表された7月米ISM製造業景況指数も予想を下回り、さらにドル売りが進む格好となりました。さらには、「クーグラーFRB理事が8月8日付で辞任する意向を示した」「トランプ米大統領が雇用統計を集計している米労働統計局(BLS)の局長を解任」と伝わり、米長期金利が一段と低下。ドル円は一時147.30円まで値を下げています

 

 

 

投機筋の円買いポジション、大きく縮小

 

米商品先物取引委員会(CFTC)が8月1日(日本時間2日早朝)に発表した7月29日時点の建玉報告によると、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の通貨先物市場で非商業部門(投機筋)の円の対ドル持ち高は8万9243枚の円買い越し(ドル円のショート)となり、前週から1万7402枚減少しました

 

*CFTCのデータを基にDZHフィナンシャルリサーチ作成

 

投機筋の円のポジションは昨年7月2日には18万4223枚の円売り越し(ドル円のロング)となり、2007年6月(18万8077枚)以来の高水準を記録していましたが、そのあとは一転して円買いポジションを構築する動きが優勢に。4月29日には17万9212枚と過去最大を更新しています。ただ、これ以降はその動きが一服しており、円買いポジションは縮小傾向が続いています。とはいえ、いまだ9万枚近くの円買いポジションがあり、「燃料は十分」と言えます

 

市場では「例年、夏季休暇を控えて一方向に傾いたポジションは整理される傾向にある。さらに、現在の投機筋の円買いポジションは含み損に転落し始めた可能性がある。そのため、一段と円安が進み、ポジションの損失拡大懸念が強まるようなら、ポジション解消に伴う円売りがさらに強まる可能性もある」との声が聞かれています。

 

 

 

ドル円の一目均衡表チャートを見ると

 

ドル円の一目均衡表チャートを見ると、転換線(148.39円)は下回って週末の取引を終えていますが、週末の終値(147.40円)雲の上限(145.48円)、下限(144.27円)、基準線(146.80円)は上回っています。

 

*Trading Viewより

 

一方、重要なポイントである200日移動平均線が位置する149.57円超えは一時的なものとなりました。200日移動平均線は重要な中期線として、機関投資家など多くの市場参加者が注目するポイントになっています。テクニカル的なサポートやレジスタンスとしてだけではなく、ここを中心に投資家心理も大きく変わってくると言われています。この水準を再び超えて行けるかどうかが焦点となりそうです。


*IG証券より

 

現在のポジションはドル円ロング@144.235円。一時はポジションを切るかどうかの瀬戸際にきていましたが、現時点ではプラス。しばらくは上サイド突破を期待しながらポジションを維持していきたいところです。

 

 

 

【免責事項・注意事項】

 

本コラムは個人的見解であり、あくまで情報提供を目的としたものです。いかなる商品についても売買の勧誘・推奨を目的としたものではありません。また、コラム中のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資決定はお客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。

この連載の一覧
第95回「イベント満載の1週間 ドル円は上値重い展開」
第94回「夏休み前、傾いたポジションは整理される傾向に」
第93回「参院選後も円安の流れは変わらずか!?」
第91回「ポジションを切るかどうかの瀬戸際」
第90回「ドル円、来週以降は買い増しを検討」
第89回「投機筋の円ロングポジション、縮小が続く」
第88回「投機筋の円ロングポジション、縮小」
第87回「ドル円、140円割れを目指す展開か!?」
第86回「米国『トリプルA』格付け失う 来週は為替協議の思惑も」
第85回「投機筋の円買いポジション、やや拡大 過去最大を更新」
第84回「投資家心理は改善 恐怖指数=VIXは順調に低下」
第83回「注目は24日予定の日米財務相会談 為替について協議」
第82回「ドル円『1日の値幅は3円超』 売っても買ってもやられる相場」
第81回「虎の子だったはずのポジションが見事に粉砕」
第80回「円買いポジションの解消に伴う急速な円安・ドル高圧力」
第79回「投機筋の円買いポジション、いよいよ巻き戻しスタートか!?」
第78回「来るか!?行き過ぎた『ポジションの偏り』の反動」
第77回「投機筋の円買い過去最大 行き過ぎた『ポジションの偏り』」
第76回「投機筋の円買いが過去最大に 偏り警戒160円超えを指摘する声も」
第75回「投機筋の円買いポジション、再び6万枚超まで拡大」
第74回「投機筋の円買いポジション、5万4615枚に拡大」
第73回「ドル円、テクニカル的にも売りが出やすいか」
第72回「投機筋、ポジションはほぼフラットに」
第71回「28-29日のFOMC、利下げ見送りが濃厚」
第70回「日銀の追加利上げは織り込み済み」
第69回「ドル円は半年ぶり高値 ロングは維持したい」
第68回「やっぱり7月3日の高値161.95円突破を狙いたい」
第67回「ドル円、またまた160円台を目指していくのか」
第66回「日銀の年内利上げ観測後退 1月すらも怪しい」
第65回「感謝祭ウィーク週末のNY午後(日本の夜中2時)」
第64回「投機筋のユーロ売りポジション、再び5万枚に迫る」
第63回「クリスマスラリーに向けて仕込み時か!?その2」
第62回「クリスマスラリーに向けて仕込み時か!?」
第61回「投機筋、円買いポジションを大きく縮小」
第59回「投資の格言『損切りは早く、利は伸ばせ』」
第58回「円安予想で投機的ポジションを再び積み増し!?」
第57回「高市氏勝利を期待したポジションが含み損」
第56回「残暑厳しくも年末ラリーを期待する季節」
第55回「ドル円は年初来安値 歴史的な円安進行は終わり!?」
第54回「ブラックマンデーの再来!?!?(1カ月ぶり2度目)」
第53回「いろいろ底打ち? 日経平均は1カ月ぶり高値」
第52回「ドル円、二番底確認か?底割れか?」
第51回「投機筋のポジション、まさかの円ロングに」
第50回「株も為替もセリング・クライマックス」
第49回「植田総裁が突如タカ派路線、円高と株急落招く」
第48回「投機筋の円売りポジションが10.7万枚まで大幅に減少」
第47回「ヘッジファンドによる円売りポジションが急減」
第46回「ドル円、ピークアウトか 押し下げ介入?のサプライズ」
第45回「ドル円、またまた37年半ぶりの高値を更新」
第44回「ドル円、37年半ぶりの高値 当面は円安・ドル高基調か」
第43回「ドル円、34年ぶりの高値160円に接近 介入は困難か」
第42回「注目のFOMCを通過、今年の米利下げ予想1回に」
第41回「米雇用統計でFRBの年内利下げ観測が後退」
第40回「ドル円、介入規模は過去最大 ただ効果は1カ月」
第39回「ドル円、再び157円台に 介入は困難!?」
第38回「投機筋の円売りポジションが急減 介入受け」
第37回「政府・日銀、投機筋との攻防は長期化の可能性」
第35回「個人投資家の円買いvs投機筋の円売り」
第34回「介入期待もあってユーロ円のショートは維持」
第33回「久々のリスク・オフのムード 株安・原油急騰・円高」
第32回「ドル円、嵐の前の静けさか? 今週の値幅は1円未満」
第31回「中銀ウィークを無事通過!? ドル高・円安を期待」
第30回「ドル円ロングは維持、ストップは付かずに切り返す」
第29回「ドル円、上値重く 日銀の政策修正観測高まる」
第28回「【祝】日経平均株価、史上最高値 ドル円もそろそろ」
第27回「日経平均株価、史上最高値まであと少し」
第26回「ドル円、上値試すか 昨年11月の151円台も視野」
第25回「注目のFOMCタカ派寄りもドルは下落」
第24回「ドルと円、それぞれの買い要因が綱引き」
第23回「ドル円ショートは損切り 円安とドル高のダブルパンチで」
第22回「ドル円、1カ月ぶり146円台 追加でショート」
第21回「ドル円、年始の悪夢 1月3日のフラッシュクラッシュ」
第20回「ドル円、売りシグナル点灯 さらなる下落に期待」
第19回「ドル円、140円割れが視野に」
第18回「米債ロングは利食い FRB議長発言を前にポジションはなし」
第17回「米長期金利、2カ月ぶり低水準 上昇リスクにはなお注意」
第16回「米国債のロングポジション、含み益が拡大」
第15回「米国債のロングポジション、含み損から含み益に」
第14回「米10年債利回り、16年ぶりに『5%』を突破」
第13回「米国債、下落止まらず 利回りは2007年7月以来の高水準」
第12回「初めての米国債(CFD)買い、そろそろ底打ちかと思ったら・・・」
第11回「下手な難平(なんぴん)、素寒貧(すかんぴん)」
第10回「日経ロングはキープもリスク高い週末 米政府機関の閉鎖はほぼ確実に」
第9回「日経225ロング、含みゾーン(損)に突入!」
第8回「日経平均、レジスタンス突破でいよいよ3万4000円台乗せか!?」
第7回「日経平均、9連騰ならず テクニカル的には・・・」
第6回「日経平均をロング トレンドは友達(Trend is your friend)」
第5回「重要イベント通過もポジション取れず・・・相場は乱高下」
第4回「朝起きたらポジションが全てなくなっているという悲しみ」
第3回「ドル円、ストップロス水準に接近 祝日のため円安けん制発言も期待できず」
第2回「前週のドル円ショートはあえなくストップ 懲りずに再in」
第1回「ドル円、乱高下のあと何故か全戻し 戻りは叩く」

為替情報部 アナリスト

中村 知博

鹿児島出身。2007年国際金融情報サービス会社に入社。 外国為替取引会社・金融機関への24時間リアルタイム金融情報サービスの為替記者として従事。市場動向や見通しなどを解説する動画サービスの業務も経験。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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