なぜこれだけ生活が厳しいのに外国にお金を送るのか 外貨準備高とニュースの背景

これだけ世間が物価高だ、コロナ禍を引継ぎ多くの会社が倒産しているとニュースが流れたあと、テレビのアナウンサーが一拍置き「岸田総理はフィリピンに2000億円への支援を」と続けます。え、その2000億があれば我々の生活も変わるのではと嘆息した人も多いでしょう。


フィリピンに限らず定期的にこのようなニュースが報じられ、その都度にハレーションを巻き起こしている印象を受けます。このニュースの背景には、日本国内で使えるお金と使えないお金があります。代表格といえる外貨準備高について読み解きます。



2021年末の外貨準備高は1兆4058億ドル


2022年11月1日の東京新聞によると、日本の有する外貨準備高(外為特会)は1兆4058億ドルと、G7諸国のなかでも突出して多いことが報じられています。外貨準備高は一般会計とは異なり、政府の外為特会で保管されているお金です。為替相場の急激な変動に備えて備蓄されているため、国民生活の補填など一般会計には原則使うことができません。


2023年2月のフィリピンへの支援の内容が外貨準備高の活用なのか、別の方法なのかは同時期の日本経済新聞でも言及されていないため不明です。外貨準備高と似たケースにODA(政府開発援助)という制度があり、こちらは借款(国家間の貸し借り)も含めて仕組みが整備されています。


借款といっても「自由にお金を使ってね」ではなく、用途の限定や貸し手となる自国の企業を使うなどの指名、借款以外の国家間の優位性獲得などがあるといわれています。


もちろん外貨準備高を国会での議論により、一般会計に充当することは不可能ではありません。実際に2023年になって、野党から外貨準備高の利息を生活支援に当てられないかという提案がありました。対する政府は「たまたま利息がプラスになっているところを取り崩すわけにはいかない」という返答をしています。政府の判断だけでなく、財務省の意向も背景にあることがうかがえます。


TwitterやSNS上の「断定」に落ち着きを


関係する複数のニュースを見ると、今回の支援がどのような根拠・財布によるものなのかを言及せずバラマキだ、国民の見殺しだといった過激な言葉を浴びせているのが目立ちます。


その方がPV(記事のクリック数)が取れるため敢えてそうしているのか、執筆者が本当に知らないのかは明らかではありません。外貨準備高の使い道、または一般会計への移行に納得いかないのであれば、なぜ別の原資なのか、移行性が悪いのかを分析したうえで、議論をすべきではないかと感じます。


ただ、何か理由があるはずの動きと、TwitterやSNSの短文で断定をする風潮は、とても相性の悪いものだとも感じます。投資の世界においても、「これからはS&Pではなくオルカン(オールカントリー関連ファンド)だ!」と早口でまくし立てている投稿を見かけます。


なかにはアメリカの財務状況を分析しながら根拠建てをしているものもありますが、自分がオルカンで利益を生んだからオルカンを勧めるという、n=1(たった1人の声)が拡大されているのはとても怖くなります。それを見たタイミングの異なる投資が損をしてから、反対論も根拠を持たず「あいつの真似をしたけど俺は損した」と、こちらも根拠の無い否定投稿までをセットとして、落ち着きを提唱したいと思います。



専門家はどのようなセカンドオピニオンを目指すか


そこでFPやIFAといった専門家の登場です。個別相談でも執筆でも、我々には発信する場があります。少し行き過ぎた断定を落ち着かせることも、昨今の専門家の仕事なのではと考えています。


ところが関連する記事を見ていると、不安になることも少なくありません。SNSと一緒になり今回の意思決定をバラマキだと断定し、なかには総理大臣の子息の粗相に重ね合わせるものもあります。これは専門家だけの傾向ではなく、異論の受け手となるべき一部の野党に関しても、同様のことがいえるのではないでしょうか(筆者は与党・野党ともに支持と言えるものは持ち合わせていません)。


前提として、この傾向は昨今はじまったものではありません。以前から断定口調の世論と、沈静化させず扇動する専門家という構図はありました。インターネット、続いてSNSの隆盛により、このあたりの距離感が変わってきているのではないでしょうか。専門家も台の上からマスに向かって講演をする形から、個別の顧客ニーズに対応したマッチングビジネスに移行しているようにも感じます。


コロナ禍からの回復のなかで、このようなケースは今後も増えてくるのではないでしょうか。我々は外貨準備建てにしても情報取得性にしても、多くの方々より優位性のある立場にいます。だからこそ本メディアのような情報発信の場を大切にしていきたいものです。


続編:外国に送る多額のお金を日本国民のために使うには、首相は誰を説得しなければならないか

独立型ファイナンシャルプランナー

工藤 崇

株式会社FP-MYS 代表取締役 1982年北海道生まれ。相続×Fintechサービス「レタプラ」開発・運営。2022年夏より金融教育のプロダクト提供。上場企業の多数の執筆・セミナー講師の実績を有する独立型ファイナンシャルプランナー(FP)。

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