コナグラ・ブランズCEO、アメリカ人は食品を「買い控え」
消費者は食料品をめぐり「安い商品へ買い替え(trading down)」ではなく「買い控え(hunkering down)をしている」ー米食料品大手コナグラ・ブランズのショーン・コノリー最高経営責任者(CEO)は7月の決算説明会で、このように警告しました。
同社の決算をみても、食料品の「買い控え」は明白です。レトルト食料品“バーズ・アイ”などで知られる同社の3~5月期(Q4)の販売量は前年同期比比7.7%減でした。9.9%に及ぶ値上げなどで販売量の減少が相殺されたため、売上高は同2.2%増の30億ドルと増収だったものの、昨年度の6.2%から伸びは3分の1に縮小し、芳しい結果とは言えません。
コナグラは6月に始まった今期も、逆風に直面しそうです。米6月小売売上高をみると、食料品・飲料は前月比0.7%減で、2022年12月以降、7カ月間で5回減少していました。逆に、小売売上高のうちリテール・コントロールと呼ばれ、食料品、自動車、建設資材、ガソリンを除く場合は6月に同0.6%増、22年12月以降で5回増加しており、食料品に代表される生活必需品と明暗が分けています。
チャート:米6月小売売上高、食料品・ガソリンは22年末から減少傾向ながらリテール・コントロールは堅調
アメリカ人、食料品をめぐりブランド品からジェネリック品に買い替えの動きも
仮にアメリカ人が食料品向けの消費を削っているとすれば、アメリカ人が空腹で苦しんでいるかというと、そういうわけではありません。消費者調査会社ニールセンNIQが4月に発表したレポートによれば、食料品の購入量は1~3月期に前年同期比2%減でした。特に同17%と値上がりが目立った冷凍食料品のほか、果物ジュースなどの購入量の減少が最も大きかったといいます。つまり、アメリカ人は食べる量を減らしているのではなく、値上がりした食料品を買い控え、且つ食料品在庫を取り崩していると考えられます。外出を減らせば消費量を削減できるガソリンとはわけが違う、というわけです。
ニールセンNIQの北米バイスプレジデントは、アメリカ人の消費動向の変化について「ブランドよりも自らの財布の薄さを重視している」と表現していました。その意味の代表例と言えば、7月27日までの年初来でS&P500のリターンが18.2%高に対し、株価が18.9%安のキャンベル・スープが挙げられます。同社は原料などの値上がりを最終価格に転嫁してきましたが、買い物客はジェネリック・ブランドへの買い替えに走りまし。結果、2~4月期(Q3)の売上高は値上げを続けたにもかかわらず、前年同期比5%増とQ2の14%増から縮小しています。
画像:キャンベルと(オレンジ線)とS&P500(青線)の年初来リターン、明暗がくっきり分かれる
食料品の値上がり再開で、裁量的支出を削る動きにシフトも?
食料品など、生活必需品の支出を削減する傾向は続くのでしょうか?夏が終われば、一巡する期待もあります。金融研究の世界的権威であるペンシルベニア大学のジェレミー・シーゲル教授は「夏場を過ぎれば、“人生一度きり(You Only Live Once、YOLO)”と考える若者を中心に裁量的支出を削るだろう」と予想。また、10月以降は米連邦最高裁判所がバイデン政権の学生ローン債務免除の決定を無効と判断したため、学生ローンの支払いが再開し、消費支出の余地が狭くなることでしょう。加えて、足元でロシアが穀物合意から離脱を表明し、小麦先物が急騰するなど、食料品が再び値上がりしかねません。人生一度きりとはいえ、生活必需品を削るにも限界があることでしょう。