「アメリカがくしゃみをすると日本は風邪をひく」は本当?過去の連動性をチェックしてみよう

「アメリカ市場の影響で、本日の日経平均株価は上昇(または下落)しています」というニュウースを聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。


「アメリカがくしゃみをすると日本は風邪をひく」という言葉があり、日本株と米国株は連動性が高いといわれてきました。しかし相関関係を調べてみると連動していない時期もあります。一体なぜでしょうか?


今回は米国株と日本株の過去10年の連動性、連動性が低くなった時期の背景、相関関係を示す指数について解説していきます。


米国株と日本株の関係

世界の主要取引所の株式時価総額を見ると、NY証券取引所は東京証券取引所のおよそ5倍の市場規模となっています。NYとナスダックを合わせると8倍以上です。アメリカの株式市場規模は世界で最も大きく、次いで中国・ユーロ圏となっています。日本は第4位です。


日本だけではなく、株式市場は世界の経済や市場の動きの影響を受けます。よって日本は世界的に市場規模が最も大きいアメリカの株価の影響を受けているのです。


日経平均株価とアメリカの主要3指数の、過去10年の推移を見ていきましょう。

 

青=日経平均株価 紫=TOPIX オレンジ=S&P500 緑=NASDAQ 黄色=ダウ

出典:TradingView


おおむね連動しているように見えますが、2020年の「コロナショック」以降はアメリカのリターン率が高いことが分かります。特にナスダック市場は急成長しています。



ナスダックと日本の株式市場が乖離している理由とは

ナスダック市場は1971年に開設された新興企業向けの株式市場で、ハイテク企業の銘柄が多いことで知られています。GAFAM(Google、Amazon、旧Facebook現Meta、Apple、Microsoft)やテスラ・エヌビディアなど、成長率が高い多くの企業が上場中です。


近年はICT市場でサービスやシステムを運営する企業(プラットフォーマー)の成長率が高い傾向にあります。

総務省が発表している2022年度「情報通信白書 日米中のプラットフォーマーの売上高」では、世界の主要なプラットフォーマーの2013年と2020年の売上比(縦軸)と2020年の売上高(横軸)をチェックできます。


 

緑=アメリカ企業 赤=中国企業 青=日本企業

出典:総務省「2022年度情報通信白書 日米中のプラットフォーマーの売上高」



最も売上高が大きいのはAmazon(約41兆2,214億円)で、2013年に比べて5.2倍です。中国のAlibaba(約7兆8,924億円)は2013年比で13.3倍と成長率が最も高くなっています。


一方、日本企業は規模も小さく、LINE5.1倍、ヤフー2.7倍、楽天2.6倍、ソニー1.1倍と売上高・成長面で世界市場には及ばないという実態があります。


2023年4月には日本のバリュー株が人気となり、連動性が低下

2023年4月には日本株と米国株の連動性が低下し、相関係数がマイナスになったという報道がありました。


相関係数とは2つのデータの関連性の強さが分かる指標で「1」に近づくほど同じ方向に動く傾向が強いです。0の値は相関がないことを示し、「-1」に近いと2つの銘柄は反対方向に動きます。


直近5年の日経平均株価と、アメリカの主要3指数の相関係数は以下のとおりです。

 

出典:TradingView


2021年夏、アメリカ市場は躍進する一方で日経平均株価は小幅な上昇に留まり8月23日の相関係数は-0.61~-0.75となりました。


2023年4月には、再び日経平均株価とナスダック市場の相関係数がマイナスに転じます。


2021年とは逆に、アメリカの金利が上昇し設備投資を必要とする企業が多いナスダック市場が下落しました。一方で、日本の割安銘柄(いわゆるバリュー株)の人気が高まったのです。アメリカの著名投資家、ウォーレン・バフェット氏が追加投資を検討するとの報道でも熱が高まりました。


日本とアメリカ、そして世界への分散投資を

日本とアメリカの市場は連動性が高いですが、時期によっては相関係数がマイナスに転じています。日本とアメリカひいては世界株に分散投資することで、リスクをおさえられる可能性が高くなります。株式と逆の動きをするといわれる債券をポートフォリオに組み入れると、より低リスクでバランスのとれた資産運用ができるでしょう。


ファイナンシャル・プランナー/ライター

田中 あさみ

大学在学中に2級FP技能士の資格を取得。会社員を経て独立し、金融・投資・相続・法律などの記事を執筆している。 自身でも米国株やETF・投資信託等を運用中。

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