トマトが異常に高い!小売価格の高騰がもたらす市場への影響

スーパーで目を疑った人も多いでしょう。トマトの小売価格が前例の無い値幅で高騰しています。例年400円~500円台を推移するトマト1kgの小売価格は10月下旬に1000円を突破、過去類を見ない高騰です。先日筆者が東京都内の小売スーパーに赴くと小さめのトマトが280円、ミニトマトが15個前後で480円と、見たこともない価格でした。日常生活に密着したトマトの高騰は様々な影響をもたらしています。


トマト高騰の要因は2023年夏の猛暑

報じられているトマト高騰の要因は2023年夏の猛暑です。夏から秋にかけてトマト生産上位県の茨城県に近い東京では、2023年7月から最高気温35℃以上の猛暑日が64日間続きました。これは2004年の40日を超え、過去最高の記録となりました。なお、冬から春にかけては、温暖な気候が続く九州の熊本県が生産量最上位となります。


さて、今回のトマトの高騰です。10月を迎え、店に並ぶ姿にも変化が見えます。実際に小売店では青白いトマトが並んでおり、生育不良を感じさせるようになりました。トマトは年中収穫時期ですが、特にビニールハウスで生育するトマトは7-8月にかけてが収穫のピークです。それ以外の時期に市場に出るトマトは、収穫時期をずらしたものと予想されます。


2023年に関しては下記の統計からわかるように、8月下旬までは平均値付近を推移していたものの、9月に入り急上昇します。その後下落を見せたものの、10月に入り再上昇し1200円付近まで到達します。例年平均と比較すると約2倍から3倍の上昇率です。


出典:農林水産省 青果物卸売市場調査


高騰の背景には、輸送コストも看過できません。ガソリン高の影響で生産値に輸送費が上乗せされていることもまた、小売価格の上昇に拍車をかけています。専門家や農家の分析をまとめると、今後の秋の深まりに合わせてトマトの高騰は収まっていくのではとのことです。トマトといえば生食用のほかにも、さまざまな用途で活用されています。野菜の高騰は、直接口にいれる生食を扱う小売店のほかに、その野菜を使って加工する会社にも大きな影響があります。


トマトケチャップのカゴメ社に影響はあるか

トマトの加工食品といえばケチャップとトマトジュースが代表的です。この両者を代表する社名といえばカゴメ(2811)を置いてほかにないでしょう。トマトの高騰を受け、カゴメの株価に影響は出ているのでしょうか。


出典:トレーダーズ・ウェブ


2023年8月から株価は下落基調にあるものの、高騰を理由とした下落ではない可能性が高いです。影響が株価にまだ反映されていない可能性はもちろんありますが、高騰の中心が食用であり、加工品の原材料はそれほど大きな影響が出ていないことも予想されます。


なおカゴメ社は直前の決算が上方修正されているため、株価の下落が止まらない点自体は大きな問題です。もし影響がこれからとすれば、トマトの高騰以外を原因とする株価低迷に高騰問題が上乗せされることになります。



トマト以外の野菜も影響される可能性

猛暑の影響はトマトに限った話ではありません。トマトに大きな影響が出ているものの、冬の鍋料理に欠かせない白菜なども高騰の兆しを見せています。高騰する銘柄が多くなれば、トマトの高騰から野菜の高騰に主語が変わり、ニュースの緊急度も高くなるでしょう。またお米の生育度も状況によっては、これから大きなニュースです。もしかしたらトマトは、2023年の野菜高騰が株式市場に大きな影響を与える前の、先行指数になっているのかもしれません。


日本全体を通して物価自体が高騰しています。ガソリン価格に依る輸送コストも重なり、今後もしばらくは「〇〇が高いなあ」という時期が続く公算が高いでしょう。投資家としてはこれらの高騰がどのような影響を生むのか。カゴメ社のように食材自体を消費者に販売しているわけではないものの、特定の食材が無ければビジネス自体成立しない銘柄をどのように評価するかがポイントです。


猛暑の影響はすべての投資家に「見えている」景色のため、影響の有無はともかく、どのくらいの時期に反応があるかどうか、時期を合わせることも大切です。現物売買だけではなく、信用取引なども上手く活用してタイミングを見極めるようにしましょう。今回はさまざまな記録を更新した猛暑ですが、これから継続的な温暖化が訪れることは専門家の多くに指摘されています。投資家としてもトマトに限らず、野菜関連企業のチャートをしっかり分析していくことが、今後にむけてのスキルアップに繋がっていくことでしょう。

独立型ファイナンシャルプランナー

工藤 崇

株式会社FP-MYS 代表取締役 1982年北海道生まれ。相続×Fintechサービス「レタプラ」開発・運営。2022年夏より金融教育のプロダクト提供。上場企業の多数の執筆・セミナー講師の実績を有する独立型ファイナンシャルプランナー(FP)。

工藤 崇の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております