2023年10月27日、プロ野球ドラフト会議が開催され、支配下契約72人、育成契約50人の計122人が指名を受けました。今後指名球団と選手の交渉で契約が不合意に終わる可能性はありますが、多くの野球青年がプロ野球選手として新たな一歩を踏み出します。
多少の例外はありますが、日本ではプロ野球選手になるために、年1回のドラフト会議における指名を受けなければなりません。これまで高校卒、大学卒、社会人卒の3種類がありましたが、ここに「独立リーグ」という新たな道が開拓されようとしています。
2023年ドラフト会議は独立リーグから23人の指名!
独立リーグとは、日本プロ野球を運営する日本野球連盟(NPB)と対等のリーグを目指し、日本全国に展開されている野球の運営団体です。2023年現在、北海道から沖縄まで7つのリーグが活動しています。
2023年のドラフト会議では、計23人の独立リーグ加入選手がプロ野球球団に指名されました。うち支配下契約は6人です。前年の2022年が1名だったことを鑑みると、情勢の変化が分かります。独立リーグは「徳島インディゴソックス」のように、地名+相性からなるチームが大半です。プロ野球は12球団しかないため、球団を持たない地域が我がチームとして応援してきました。
さて、既存のプロ野球選手になる形を解説しておきます。高校卒業時、選手は18歳前後です。甲子園で大活躍する選手のように、すべての青年がその時点で才能を開花させるとは限りません。また同様に、大学野球を経た4年後に完成する保障などどこにもありません。そのあと2-3年選手を社員として預かる社会人野球という選択肢はこれまでもありましたが、決して裾野は広いものではありませんでした。
独立リーグはそんな未完成な、ただ足が速い、肩が強いといった一芸の才能がある選手を育てます。NPBと対等のリーグを目指す立ち位置から、決してプロ野球への人材輩出機関ではありませんが、今回の指名数急上昇は間違いなく独立リーグの分岐点となったことでしょう。独立リーグの運営資金ですが、試合観戦のチケット代や広告宣伝費などほかのスポーツ経営と同様、スポンサー収入が大きな軸となります。実際に独立リーグの選手が着るユニフォームには、多くのスポンサー社名が所狭しと並んでいます。
独立リーグのスポンサーは投資家にとって注目の銘柄
独立リーグは今後、注目度が上がってくることは間違いありません。ユニフォームに社名を載せるスポンサーもまた、先物買いをする先見ある企業として評価されるでしょう。現行の独立リーグの規模からすると、我々が自由に株を売買することのできる上場企業である可能性は低いです。ただ独立リーグは地域に根差した趣旨のため、共鳴しているスポンサーも多いです。
投資家にとって、会社名を聞いて投資できるかどうかは1つの判断軸です。一方で投資不可の銘柄でも、購入者や利用者としての使い方もあれば、会社経営の姿勢に共鳴し、何かしらの形でコミットするという選択もあります。最近はクラウドファンディングなどにより、非上場の株やベンチャー企業でも株を購入できる機会も増えてきました。
野球人口減少のなかで裾野が広がるスポンサー領域
笹川スポーツ財団の調査によると、2021年時点での10代の野球推定人口は137万人で、2001年の282万人から約半数となっています。前提としてプロ野球は観戦するものでもあるため、一概に競技としての勢いが減少していると結論づけることはできませんが、マイナスの要因であることは間違いありません。
その一方で独立リーグが勢いを増しているのは、順調にスポンサー集めを達成できているチームが増えているということです。これまでプロ野球は閉鎖的でした。あらたにスポンサーになる企業は数十億ともいわれる入会費用のほか、既存のオーナー企業に気にいられる必要がありました。
独立リーグのスポンサーは規模は小さいながらも、格段に安い費用で、チーム応援の姿勢を示すことができます。たとえ2023年現在は年を重ねてバットを振ることができなくとも、野球という競技をさまざまな形で応援する人は、企業のスポンサードもまたリスペクトすることでしょう。
2023年のドラフト会議で指名された23人の独立リーグ生は、ここからが勝負です。ぜひ甲子園のヒーローを追いやって日本野球のスター、果てはメジャーリーグを目指せるところまで駆けあがって欲しいと思います。そしてそのときに、独立リーグの頃に胸に企業名をつけていた1社だからと、同様に成長した会社の広告塔となるならば。物語にこれ以上の成功譚はありません。