2023年10月23日に楽天モバイルのプラチナバンド獲得が正式決定し、契約者の増加にはずみをつけられるか注目を集めています。
プラチナバンドとは電波が届きやすい周波数帯のことで、障害物を回り込んで届く特性から、都市部でも安定した通信を実現できます。楽天モバイルは自社でプラチナバンドを持っていなかったため、建物や地下施設内にいるとインターネットがつながりにくいという明確な弱点がありました。
楽天は都市部のユーザーの利便性向上を狙って、2023年KDDIとローミング協定を結んでいます。一部都市部に対しては、KDDI回線を使い通信のつながりやすさを改善してきましたが、自社でプラチナバンドを持っていない問題は解決できていませんでした。
そこで本記事では、プラチナバンド取得後におけるサービスの提供開始時期や、今後の懸念点について解説します。
楽天モバイルのプラチナバンド提供は2024年中を目標に開始する予定
楽天モバイルのプラチナバンド獲得が決まり、正式なサービスの提供は2024年中を目標にしていると発表しています。正式にサービスがリリースされれば、今まで電波のつながりにくさから敬遠してきた顧客層の取り込みが期待できるため、新規契約数を大きく増やせるかもしれません。
楽天グループは赤字決算が続き苦しい経営が続いていますが、モバイル事業が黒字化すれば状況は一変する可能性があります。
ただし、プラチナバンドを獲得できても楽天モバイルにはいくつか懸念点があるのも事実です。次章で詳しく解説します。
楽天モバイルのプラチナバンド取得後の3つの懸念点
1. 3大キャリアの既存ユーザー数との格差が大きい
楽天モバイルの契約数は、2023年8月末時点で500万回線を突破しましたが、3大キャリアと比べると大きく差をつけられています。一般社団法人・電気通信事業者協会の2023年度事業者別契約数を調べると、以下の割合です。
【2023年6月末時点における3大キャリアの契約数】
・NTTドコモ:加入者数:約8,797万回線
・au:加入者数:約6,509万回線
・ソフトバンク・ワイモバイル:加入者数:約5,180万回線
プラチナバンド取得により加入者は今までより増えると思いますが、3大キャリアとの価格・サービスの優位性を打ち出せないと新規契約数は大きく伸びないかもしれません。
2024年が楽天モバイルにとって勝負の年になるので、今後の発表に期待したいと思います。
2. 周波数帯域が3大キャリアより狭くユーザー数が増えるとつながりにくくなる可能性がある
楽天モバイルにとってプラチナバンド獲得は大きなニュースに違いがありませんが、ほか3大キャリアと比べて周波数帯域が狭いです。つまり、契約者数が増えていくと通信はつながりにくくなる可能性があります。
以下画像はプラチナバンドの割り当てを示しています。
画像引用元:700MHz帯における移動通信システムの普及のための特定基地局の開設に関する指針案について|総務省
NTTドコモ・au・ソフトバンクは10MHz割り当てられているのに対して、今回の楽天モバイルは3MHzしかありません。
実際にプラチナバンドによるサービスが提供されてみないと「通信のつながりやすさ」を判断するのは難しいでしょう。利用者の口コミなどを含めて利便性をみていく必要があります。
3. 1.2兆円規模の社債の償還
楽天グループはモバイル事業の基地局の増設による先行投資により、今後5年間で1.2兆円もの社債の償還義務があります。ただし、ニュースで報道されているように、グループ全体の営業利益は赤字が続いています。
信用リスクは以前より高まり、2022年末におけるS&Pの債券格付けにおいて、楽天は「BB」に下げられました。一般的に「BBB」以上の評価を受けていると経営破綻するリスクが少ないとされています。
画像引用元:債券の「格付け」について教えてください|日本証券業協会
2024年以降は1,000億円以上の設備投資を予定していると三木谷氏は発言しているため、今後も資金繰りに苦労する可能性が高いです。
社債の償還を無事に進められるか、今後の動向を注視していく必要があります。
プラチナバンド取得によって楽天のモバイル事業の巻き返しに期待
ここまでネガティブなニュースを中心に話しましたが、プラチナバンド取得は楽天グループにとって追い風です。
3大キャリアと比べてお手頃な価格で携帯サービスと契約できれば、わたしたち消費者にとってもメリットが大きいでしょう。
プラチナバンド取得後の楽天の動向に注目してみてはいかがでしょうか。以下画像は、過去5年間における株価の推移です。
出典:Trading View