もし誰も私の言っていることが誤りと証明できないのならば、人は思い切り見栄をはるだろう。
最初から何やらシェイクスピアのような言い方をしましたが、X(Twitter)の話です。Twitterでは多くの人が所有した資産額や運用の成功を誇示しています。最初は「果たしてこれは本当なのか」と猜疑心で見ていても、自分が運用に失敗したあとなどは、この人は自分と違って投資の才能があるな、と思ってしまいがち。ただ、果たして誇示は真実なのでしょうか。
Twitterの誇示のなかで見えにくい資産運用
まず前提として断っておくと、本記事ではTwitterで通します。現行のサービス名はX(エックス)ですが、まだ浸透していない点を考慮しました。また資産運用の投稿はTwitterに限らずFacebookやInstagramなどほかのSNSでも行われていますが、字数制限があるTwitterはきわめてキャッチ―な投稿が多いように感じます。そのため本記事ではTwitterで通します。
さて、そのTwitterでは多くの方が成功譚を語っています。誰もが羨むリゾートホテルでモーニングを食べた、希少なブランドバックを購入したといった具合です。成功譚には証明が必要なため、撮影者によって様々な証明が準備されます。ところがTwitterという世界はバランスが取れているもので、その証明が不自然だと、コメントに何かおかしいと茶々が入ります。最後に投稿が真実ではないとわかると、誇示していた人はいつしか姿を消していく傾向があります。確かにシェイクスピアの喜劇にこの物語があっても不自然ではありません。
この誇示のなかには、資産運用の成功も含まれます。実際にTwitterは資産運用の報告が大好きです。〇〇の株を買って急伸した、信用取引が当たった、FXで為替を読み切ったなどの投稿です。不動産の運用報告も多いです。もちろん彼らは実際に相場が動いてから投稿をするため、最低限相場の動きを調べての投稿であることがわかります。そこに間違いはありませんし、情報を受け取る方もファイナンス情報を見れば正誤はすぐに判明します。ただ、本当に彼らが適切なタイミングで売買し収益を得ているのかは誰にもわかりません。Twitterの数々の誇示のなかで、資産運用の投稿は事実認定が難しいためです。
自分が資産運用をしていなければ、また運用が上手くいっていれば「別にTwitterの投稿が真実だろうが嘘だろうがどちらでもいい」という感情になります。問題なのはその逆です。タイミング悪く資産運用が上手くいかなかったときに、Twitterで「投資は連戦連勝で資産1億円突破!」と書かれると、日常生活の自信も毀損してしまいます。Twitterの運用報告というものは、とりわけ自分の投資が上手く言っていない時ほど見ない方がいいものといえます。
NISA新制度により「まがい物」の運用報告が増える?
Twitterはブロック機能やフォロー機能があり、目に入る投稿をコントロールすることができます。2024年からはNISA新制度が開始されます。1人あたりの年間投資金額が現行の120万円から360万円(成長枠とつみたて枠の合計)に拡大します。NISA新制度の開始を機にNISAを始めてみようという方も多いでしょう。ふと評価額が落ちたときに、「みんなは上手くいっているのだろうか」という感情になります。
他人は関係無いとブロックやフォローを「駆使」しても、さまざまな運用報告が入ってくることでしょう。かつ、上手くいっていない運用報告をTwitterに上げる人はいません。現実は運用が上手くいっていなくても、Twitterの門をくぐれば、とたんに好調な相場師に姿を変えます。
対抗策はひとつです。相手と同じ土台にあがらないことです。2024年から自身の運用が上手くいかないときは、TwitterをはじめとしたSNSから離れるようにしましょう。投稿の内容が真実か、つくり話かを考察するにも労力が必要です。
インデックス専門の投資家も評価損の可能性
2023年秋現在、アクティブや個別株の投資家はもとより、インデックス専門の投資家も評価損が発生しています。そんななかでもTwitterでは、連戦連勝の報告が続きます。「これだけ各種インデックスもベンチマーク指標も落ちているのに、なぜこの人は連勝中なんだ?」と考えても、その投稿が真実ではないとすれば答えは出ません。そして、考えれば考えるほど疲労感が増し、心身的な健康が阻害されます。
毎日の値動きや基準価格を追いかけるのはとても労力の必要な行動です。加えて真実かどうかもわからない(ベンチマークを考えれば真実である可能性はとても低い)、Twitterの投稿に自信を無くすプロセスが加わり、心の安寧を毀損しないよう留意しましょう。2024年の運用投稿には、時に無視する心構えが大切です。