任天堂の株価が好調です。株価は2023年12月29日に株式分割を考慮した水準で2007年に付けた上場来高値7320円を更新。2024年1月10日には7902円まで上昇する場面があり、時価総額は「Wii」が大ヒットとなって以来、およそ16年ぶりに10兆円台にのせました。
任天堂日足チャート
上昇の要因は大きく3つあると市場関係者からは指摘されています。1つは新NISAの開始です。同制度が開始されたことにより、長期で成長が続くと期待する投資家による新規の資金が任天堂株に流れ込んでいるとの見方です。実際、受渡日ベースで新年入りした12月末から上昇に勢いがついているようにもみられることから、一定の買いが入っていることは間違いないと思われます。
2つ目はオイルマネーの流入観測です。2024年1月9日、ゲーム関連銘柄に投資していることで知られるサウジアラビア系のファンドがコーエーテクモHDの株式を買い増していることが伝わり、その他のゲーム関連にも買いが波及しました。
最後に3つ目の理由ですが、2024年にも次世代機の導入あるのではないかという見方が市場参加者の間でコンセンサスになりつつあることです。任天堂が現行ハードである「Nintendo Switch」を市場投入してからおよそ7年。これまでのスケジュールから考えても、次世代機販売のタイミングは近いというのは、多くの市場参加者に共通した見方です。
加えて、いくつかのリーク報道によれば、ゲームメーカーには次世代機用の開発キットが既に提供済みであるとされています。任天堂側はこうした報道を否定していますが、ハードの発売と同時にゲームソフトを発売するのであれば、開発期間を考えれば既に提供されているというリーク記事には説得力もあるため、あまり会社側の否定は投資家には信じられていない面もあるようです。
これらの理由から任天堂株の上昇に弾みがついていると思われますが、実際に「Nintendo Switch」の次世代機が発表された場合、株価の動きがどうなるかには、注意が必要かもしれません。
過去の事例を振り返ってみると、「Nintendo Switch」が発表された2016年10月21日、同社の株価は前日比7%安と大幅に下落して取引を終えました。市場関係者からはSwitchが携帯できる兼ね備えてながらも据え置き機として発売されたことに対する懸念などが聞かれました。
当時は据え置き型ゲームよりも、今でも人気の作品ではありますが、パズドラやモンストなど基本無料でプレイできるスマホ向けゲームアプリなどが隆盛だったこともあり、任天堂の新型ハードはそうした流れをくつがえすほどではない、と判断されてしまったのかもしれません。
また、「Nintendo Switch」の前のハードである「Wii U」が発表された際にも、任天堂の株価は急落しました。2011年6月7日(米国時間)に、米ロサンゼルスで同日開幕したゲーム見本市「E3」で当時の岩田聡社長が同機について発表すると、8日の東京市場で任天堂株は売りが優勢となり、終値で前日比5%の下落となりました。
このときは前ハードである「Wii」があまりにも売れたため、後継機に対するハードルもかなり高くなってしまった点が影響していたと思われます。
このように新型ハードが発売された直後は、むしろ期待で上げていた分、材料出尽くしによる売りとなりやすいことが過去の傾向からはわかります。現時点では新型ハードの詳細がわかっていないわけですから、それすら見ないうちに株価が上がるとか下がるとか言ってもしょうがないという意見もあるでしょう。ただ、こうした動きがある可能性に注意しておくということには意味があると思います。
直近では、単にハードやゲームソフトの製造・販売にとどまらず、保有するIPを活用した取り組みも目立っています。ユニバーサルスタジオジャパンで展開するニンテンドーワールドや、よみうりランドに開設が予定されているポケモンのエンターテイメント施設「ポケパーク カントー」をはじめ、2023年に大ヒットとなった「スーパーマリオブラザーズ・ムービー」に続いて、ハリウッドでの映画化が予定されている「ゼルダの伝説」などにも期待が集まっています。次世代機だけでなく、これらの動向にも注目していきたいですね。