6月は株主総会のシーズンです。6月6日の日本経済新聞の記事によれば、同月に株主総会を開く企業で、物言う株主とも言われるアクティビストから株主提案を受けたのは50社にのぼるとのことです。これは過去最多で、直近ではトヨタグループによる非公開化で話題になった豊田自動織機<6201.T>や、経営再建中のさなかである日産自動車<7201.T>、またガバナンスが問題視されたフジ・メディア・ホールディングス<4676.T>などが代表的な例といえるでしょう。
提案の内容は資本効率や収益性の改善といったもののほか、企業統治の観点から問題のある親子上場の解消を求める内容が目立っているようです。アクティビストとしては、不動産などの余剰資本を売却し株主還元を強化するほか、上場子会社を公開買い付け(TOB)などにより完全子会社化させることで、保有する株式の値上がり益を得ようとする目的があるのでしょうが、それに伴って企業の稼ぐ力が強まったり、組織体制が強化させることは、株主にとってもメリットのあることです。
そのため、投資家としてはアクティビストによる株式の保有を歓迎する動きも出ているようです。例えば、5月3日にはエムスリー<2413.T>株が大幅に上昇しました。一時前日比9%高となる2200円超まで買われるなど、市場でも目立った値動きとなりました。きっかけは6月26日開催の定時株主総会の招集通知とともに公開された総会資料で、大株主にアクティビストで知られるオアシスの運営するファンドによる保有が明らかになったためです。
2025年3月末時点でのオアシスの保有割合は1.2%となっており、アクティビストから企業側へ資本効率の改善などについて働きかける動きが期待されたこともあって、買いが入ったと思われます。
エムスリー日足チャート
こうしたアクティビストの株式保有については、大量保有報告書が材料視されることが多いのですが、招集通知では大量保有報告の義務となる5%以下の保有も大株主一覧に掲載されることがあり、より早いタイミングでアクティビストの保有を察知するための情報として、昨今注目度が増しています。
2025年にかぎっても、前述したエムスリーのほか、住友不動産<8830.T>、住友大阪セメント<5232.T>、カヤバ<7242.T>などでアクティビストによる保有が明らかになり、関連株が買われる場面がありました。
住友不動産はアクティビストとして知られるエリオット・インターナショナルの保有が明らかになりました。2025年3月にブルームバーグが報じていた内容ではありましたが、実際に保有が確認されたことで株価は大幅高となりました。
住友不動産日足チャート
住友大阪セメントについては村上ファンドの村上世彰氏の長女である野村絢氏と思われる保有が明らかになっています。大量保有報告書と違って氏名のみしか明らかになっていないため、同姓同名の可能性はもちろんあるのですが、市場はそうは受け止めていないもようです。
住友大阪セメント日足チャート
また、カヤバも同様に野村絢氏の保有から動意付く場面がありました。
カヤバ日足チャート
定時株主総会の招集通知は寄り前の8時に適時開示されるのが一般的です。この時期は多くの投資家が目を皿のようにして開示をチェックし、アクティビストの保有がないか、前回から株主構成に変化はないかを確認しており、そうした内容が確認された銘柄については、前日終値から大きくギャップアップして始まるケースも散見されます。6月の集中期は過ぎてしまいましたが、株主総会自体は1年を通して開催されるため、投資手法の一つとしてチャレンジしてみてはいかがでしょうか。