帝国データバンクは5月30日、主要食品メーカー195社の価格改定動向調査を発表しました。同調査によると、2025年6月の飲食料品の値上げは1932品目(前年同月比1309品目増、210.1%増)となりました。
値上げ数は前年の約3倍となり、単月の値上げ品目数としては2カ月ぶりに1000品目を超えました。期間としても値上げ品目数が2025年1月以降、6カ月連続で前年同月を上回っており、記録的な値上げラッシュとなった2023年6月以来、2年ぶりの長さということです。
また、値上げ1回あたりの平均値上げ率は14%となっています。
同月の値上げを食品分野別に集計すると、調カレールウなど香辛料のほか、だし製品などを中心とした「調味料」が962品目と最多となりました。次いで、「加工食品」が755品目。即席めんのほか、不作により供給量が大幅に減少しているのり製品、コメ高騰を背景としたパックごはんの値上げが目立っています。「乳製品」は106品目となり、乳価改定の影響を受けて加工乳やヨーグルトなど発酵乳、クリームなどの製品が中心に値上げされました。
値上げの品目数についての推移(帝国データバンク公表データをもとにDZHFR作成)
2025年通年で見た場合、現在までに公表されている10月分までの集計では、累計1万6224品目に上っています。2023年通年の実績(1万2520品目)をこの時点ですでに3割ほど超過している水準となります。一方で1回当たり平均値上げ率は15%と、前年(17%)をやや下回る水準となっています。
2024年は値上げ疲れなどが指摘され、企業側もできるだけ値上げを抑えようとしていました。そのため、値上げ数については控えめな数となりましたが、今年は企業が再び値上げを実施していることで、小幅な値上げの数も増えていることが1回当たりの値上げ率減少につながっているものと思われます。
食品分野別では、カレールウなどの香辛料製品やだし製品を中心とした「調味料」(5446品目)が最も多く、冷凍食品やパックごはん、のりなどの「加工食品」(3813品目)が続きました。また、「酒類・飲料」(3485品目)は、清涼飲料水に加え、原料米の価格上昇で清酒製品が約2年ぶりに値上げとなり、2023年以来2年ぶりに3000品目を超えています。コメの価格上昇はこんなところにも影響を及ぼしているんですね。
値上げの要因については、原材料高によるものが全体の98.0%を占め、前月(97.9%)からさらに拡大しています。また、人手不足に伴う昇給・賃上げによるコスト増を背景とした人件費は53.6%となり、要因別の集計を開始した2023年以降で最高となりました。
人件費で言えば、厚生労働省が6月5日に発表した4月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)では、名目賃金から物価変動の影響を除いた実質賃金が前年同月比1.8%減となりました。名目賃金を示す1人あたりの現金給与総額は30万2453円と2.3%増加しており、前述した人件費増とも一致しますが、それ以上に消費者物価指数の上昇が4.1%を名目賃金の伸びを上回り、実質賃金の低下につながっています。
人件費の伸びが食品の値上げの要因となり、それが消費者物価指数を押し上げて実質賃金が目減りしてしまうとなると家計としては非常に苦しいところです。
値上げの要因の話に戻りますと、そのほか、6月以降の値上げを中心に電気・ガスなど「エネルギーコスト(光熱費)」由来の値上げで上昇が続き、年間で66.7%を占めています。
同調査によれば、2年ぶりに年間2万品目を超える可能性が高いと予想されています。近時はコメ品薄の影響による食品の値上げが目立っており、原料米の価格高騰に由来する値上げは、、2025年6月実施分のうち概算で100品目(全体の約6%)を超えました。そのほかの作物についても、世界的な天候不順による供給量の不安定化や、円安による輸入コストの上振れといった要因もあり、原材料高による値上がりは当分継続する可能性が高いと指摘しています。
さらなる値上げが続けば消費者による買い控えが強まるとが想定されることから、企業側も内容量の減量による実質的な値上げを行いつつも、価格は維持するなど難しい価格設定の判断を迫られる状況が続くだろうと、帝国データバンクでは分析しています。
原材料高に加えて物流費やエネルギーコストの上昇、賃上げによる労務コストの増加を背景とした物価上昇圧力は、粘着性が高く企業努力で吸収できる範囲も限られています。今後の動向次第で、値上げラッシュの直近ピークとなった2022年(2万5768品目)に並ぶ可能性もあるでしょう。