2023年12月IPOは公開価格割れ続出 買いのチャンスだった?

2023年12月は15社が上場しましたが、新興市場の低迷もあり、そのうち8社の初値が公開価格を下回りました。ただ、例年1月はIPOの空白期間となり、直近上場株に資金が向かいやすい時期となります。


2024年のIPOは2月7日のSOLIZEからスタートとします。約1か月の空白期間となりますので、直近上場株への資金流入を期待したいところです。そのようなタイミングですので、今回は2023年12月IPOの状況を確認しつつ、その中から銘柄をいくつか紹介したいと思います。



現状を確認

以下は、12月IPO(15社)を表にしたもので、特に「公開価格」と「初値」に対する「現値(1月10日時点の終値)」の関係を色づけして見やすくしています。

まとめると、


・公募値も初値も両方上回っている:7社

・公募値は上回っているが、初値は下回っている:2社

・初値は上回っているが、公募値は下回っている:2社

・公募値も初値も両方下回っている:4社


となります。ではこの区分けから1社ずつ注目銘柄をあげていきます。




・公募値も初値も両方上回っている:7社

この7社のうち注目度ナンバー1は、やはりQPS研究所(5595)です。

九州大学発人工衛星ベンチャーであるQPS研究所ですが、12月15日に小型SAR衛星QPS-SAR5号機が無事に軌道投入されたと発表しました。24.5期中に定常運用を開始する見込みであり、収益貢献が期待されます。

上場直後から荒い値動きとなっていましたが、1月4日に上場来高値を更新するなど株価は12月後半から堅調な推移となっています。打ち上げ費用がかさむため今後数年間は赤字が続く見込みですが、成長性の高さに期待してみるのもよいでしょう。



・公募値は上回っているが、初値は下回っている:2社

この2社で注目したのは、ドローンベンチャーのブルーイノベーション(5597)です。赤字での上場とはなりましたが、赤字額は減少傾向となっています。このペースで行けば再来期に赤黒トントンになりそうです。その後の黒字化に期待し、先回りしておくのもよいでしょう。



・初値は上回っているが、公募値は下回っている:2社

この2社で注目したのは、ITアウトソーシング・BPO(業務外部委託)サービスを行うロココ(5868)です。

なぜロココに注目したかというと、同社の主な販売先にSMILE-UP.(旧ジャニーズ事務所)傘下のヤング・コミュニケーションが挙げられていたためです。なお、ライブチケットの配席を管理するイベントサービス事業については前期売り上げのほとんどが旧ジャニーズ関連だったとのことです。


SMILE-UP.は12月8日にタレントのマネージメントなどを行う新しい会社の社名が「STARTO ENTERTAINMENT」に決まったと発表しました。今年の4月から全面稼働する予定となっています。「STARTO ENTERTAINMENT」の今後の活躍に期待して、ロココに投資してみるのも面白いと考えます。



・公募値も初値も両方下回っている:4社

この4社で注目したのはサイバーセキュリティー事業を行うS&J(5599)です。セキュリティー関連は市場の拡大する人気の高い業態といえます。同社の24.3期の営業利益予想は3.56億円(前期比7%増)と小幅な増益となっています。これは、人件費の上昇や上場に関連する一時的な費用などを見込んでいるためです。

ただ、投資家の目線はそろそろ来期(25.3期)に移るはずです。来期に期待して仕込んでおくのも面白いと考えます。



最後に

12月IPOは公開価格割れが続出しましたが、1月10日時点で初値を上回っている銘柄は9社となっています。初値が高騰しすぎなかったことにより、セカンダリーにチャンスが生まれたとも考えられます。

足元は大型株優位の展開が続いていますが、投資家が新興市場に目を向いていない時期は中小型株の仕込み時ともいえます。チャンスを狙って投資してみるのも面白いと思います。


日本株情報部長

河賀 宏明

証券会社、事業会社におけるIR担当・経営情報担当、FPや証券アナリスト講師などを経て2016年に入社。 金融全般に精通。証券アナリスト資格保有。 「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別株を中心としたニュース配信を担当。 メディア掲載&出演歴 株主手帳、日経CNBC「朝エクスプレス」、日経マネー

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