あの株はいまいくら?

第61回 企業向け社会人教育事業を展開するリスキル(291A) 「biz研修」の成長に注目

「あの株はいまいくら?」では、話題になった銘柄の現状を確認します。今回はリスキル(291A)をみていきます。


同社が提供する研修サービスは、ビジネススキル全般の研修である「biz研修」とIT未経験者向けのエンジニア・DX研修である「tech研修」の2種類で構成されています。なお、2024年3月期の売上高構成比は、biz研修40.6%、tech研修59.4%となっています。


提供方法は講師派遣やオンラインにより一社のみで実施する研修である「一社研修」、複数企業が集まる日程が決まった参加型講座である「公開講座」、一名から手軽に即日導入できるeラーニング講座である「動画講座」の3つの形式が用意されています。


同社の上場については、国策関連にもなっているリスキリング(学び直し)関連であり、業績も拡大していることから、堅調な初値形成になると予想されていました。では、リスキルの上場からの株価の動きをみていきます。



リスキルの株価推移(上場から2025年5月30日まで)

2024年12月17日に東証グロースに上場した同社の初値は4840円と公開価格3730円を大きく上回りました。初値形成後も堅調な展開となり、5450円まで上値を伸ばしましたが、その後は売りに押され上場初日の終値は4540円と5000円の大台乗せとはいきませんでした。なお、この上場初日に付けた5450円が現時点(2025年6月4日時点)の上場来高値となっています。


このように初値天井とはなりませんでしたが、上場初日の高値が上場来高値になっていますので、ここから株価は上値を切り下げていきます。上場2日目は売りに押され終値は3890円と4000円の大台も割れてしまいます。さらに上場5日目には終値で公開価格を下回ってしまいました。


その後も下値を切り下げ、1月半ばには3500円を割り込む展開に。しかし、ここまで下げ続けてきたので、割安感から買いが続き、1月後半には終値4000円を上回る場面もみられました。このまま上昇が続くかと思われましたが、1月28日に急落、2月に入りさらに売りに押され、2月12日には安値3090円まで下落し、3000円の大台割れも視野に入ってきました。


このような状況で上場後初の決算発表を迎えます。同社は2025年2月12日に25.3期3Q累計(4-12月)の決算を発表。営業利益は6億7400万円となり、25.3期通期の営業利益予想6億6700万円を3Q時点で超過しました。


この決算を受けて翌13日に株価は急騰。その後も堅調な株価推移が続き2月21日には高値で4390円まで上昇しました。しかし勢いはここまで。その後はまた下値を切り下げる展開となり、4月7日に2550円まで下落します。この2550円が現時点(2025年6月4日時点)の上場来安値となっています。


2000円台までの下げはさすがに行き過ぎとの見方から、その後は買いが入りすぐに3000円の大台を回復します。その後も緩やかに下値を切り上げ3000円台半ばまで戻したところで、25.3期通期の決算発表を迎えます。


同社は2025年5月14日に25.3期通期の決算を発表。営業利益は6億8300万円となりました。3Q時点で営業利益は6億7400万円でしたので、4Qは利益が伸びていません。なお、26.3期の営業利益予想は7億1600万円(前期比4.9%増)としています。


この決算を受けて翌15日に株価は大幅安。25.3期の利益の上振れ期待が高かったことに加え、26.3期の利益の伸びが物足りないと受け止められたことも要因と考えられます。ただ、決算発表翌日は売られたものの、さらに売り込まれるということはなく、3000円台前半での株価推移が続いています。



【リスキルの日足チャート(上場から2025年5月30日まで)】



今後について

同社は今後の成長について、ビジネススキル全般の研修である「biz研修」を成長ドライバーとし、IT未経験者向けのエンジニア・DX研修である「tech研修」については、堅調な推移を想定しています。


成長ドライバーとなる「biz研修」の売上高は、23.3期は4億2800万円、24.3期は6億0100万円、25.3期は9億5300万円、そして26.3期は12億2300万円(計画)となっています。


また、同社では26.3期は実験的費用も含め広告費・販売促進費予算を大きく増加すること、シンガポールへの進出費用がかかることの2点から売上高の伸びに対して、各利益の伸びは限定的になる見込みとしています。売上高が伸びるものの、利益がいまひとつとなる可能性がありますので、注意が必要です。


まとめると、26.3期は「biz研修」の売上高が計画通り伸びているかが重要です。そして、「biz研修の26.3期の売上高が順調伸びているものの、全体の利益がいまひとつで、株価が下落している」という局面があれば、そこが買いのチャンスになると思います。



この連載の一覧
第61回 企業向け社会人教育事業を展開するリスキル(291A) 「biz研修」の成長に注目
第60回 不正アクセス検知サービス提供のカウリス(153A) 25.12期は減益見込む 期待先行に注意
第59回 2025年2月IPOの技術承継機構(319A) 1Qは減益着地も株価は上昇
第58回 2025年2月IPOのフライヤー(323A) 株価は上場来安値から切り返し
第57回 2025年2月IPOのブッキングリゾート(324A) 利益成長による株価上昇に期待
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日本株情報部長

河賀 宏明

証券会社、事業会社におけるIR担当・経営情報担当、FPや証券アナリスト講師などを経て2016年に入社。 金融全般に精通。証券アナリスト資格保有。 「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別株を中心としたニュース配信を担当。 メディア掲載&出演歴 株主手帳、日経CNBC「朝エクスプレス」、日経マネー

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